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3-7 休息したいな

 「俺はちょっくら用事がある、明日の昼くらいには戻れると思うぜ」


 宿に着いたと思ったらジードは出て行ってしまった。



 アルスさんとの話しは突然の来訪者により中断されたうえに、何やら大声でまくし立てられ追い出された。

 おそらくは偉い立場であろうアルスさんが口を噤んで従っていたところを見るに、さらに上の立場のお偉方だったのだろう。


 「――ちょっと聞きたいことがあるんだけど――」


 どうしておじ様たちはああも高圧的な態度がとれるのだろう。軍隊ともなれば立場が上であれば一言命令するだけでいいのでは無いのか。

 大声を張り上げて威嚇でもしているかのような様は、子犬が一生懸命大きな人間に対して怯えながらも吠えている様で微笑ましくあり、かつての上司を思い出してしまっていた。


 「ねえってば!」


 体を揺らされて我に帰ると、こちらを見つめる獣がいた。コワイ。



 「ごめんよ、ちょっと考え事してたんだよ。それで聞きたいことって?」


 「何よちゃんと聞こえてるじゃないの、返事くらいしなさいよね。まずはこっちへ来て座りなさいよ」


 そう言ってベットをポンポンと叩くリースさんの格好は薄手の寝巻きである。

 浴衣のようにも見えるが横の部分は縫い合わせがされておらず、隙間から肌がちらりと覗き見えている。


 気がついてはいたけど、二人で宿にお泊りな状態であることを意識してしまい体が固まる。

 ベットに座るなど出来る訳も無く、リースを正面に見ないように少し横を向きその場に正座した。


 「まあそこでもいいけども。ちょっと聞いておきたい事があるわよ」


 ベットを降りて正面にリースが座りこむ。どうして近くに座りますかね。



 「ねえケント、あなた確か文字が読めなかったわよね」


 「そうだね。不便は感じているから少し覚えたいかな」


 「教えてあげたかったけど色々あったからね…ってそうじゃないわよ。古代文字が読めるってどういう事か説明してちょうだい!」


 「う~ん、古代文字が何なのかは分からないんだけど、故郷で使っていた文字とそっくりだったから読めたんだよ」


 「その言い方だと、まるで古代文字を読める人が沢山いるように聞こえるわよ。つくならもうちょっとマシな嘘をつきなさいよね」


 

 リースと文字をお互いの手の平に書きあったけど、こちらの文字は数がかなり少ない。仮名や漢字が無さそうだな、英語に近いのだとすると単語を覚えるのが大変そうかな。


 「という訳で、古代文字が読めるなんてことは今後言っちゃダメなんだからね。本当か嘘かとかは置いておいて」


 なにやら古代文字の説明を一生懸命してくれていたのだけど、途中も手を握られながら文字を繰り返し書かれていたせいで内容は頭に入っていない。


 「分かったよ。悪目立ちなんてしたくないからね、気をつけるよ。話しはそれで終わりだね」


 「そうね、この話しはもういいわよ」


 あれ、手を握る強さに力がこもった気がしますが。


 「ケントを訪ねに馬車に行ったら、女の子が泣きはらしていたのだけれど何があったのか説明してくれるわよね」



 リースさんはまだまだ開放してくれなそうである。

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