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3-3 帝都へ向かいます

 今は帝都へ向かう馬車の中。リースやジードは、周りを警戒しつつ歩いている。


「――れたあの日、あの子と楽しく川で遊んでいたというのに、兄が母様と一緒に現れてこう言うのです――」


 前に目を向ければ、馬車を操る御者が見えるが、今はしきりに右手側に座る商会の男から話しかけられている。


「――という訳で、あの兄が小言のように何かを呟くたびに幼かった私は心を痛めて――」


 彼が何も言わなければ、自分も他の二人と同じく外を歩いていたのだろうが、今の状況は歩いていた方が気が楽だったのではとすら思えてくる。


『魔道士様なのですか!であれば是非馬車の方へどうぞ。今回はついています!同行していただけるのであれば、報酬の方も――』


 街で帝都行きの商隊キャラバンを見つけ、同行させて欲しいと交渉していたところ、魔法が使えると話したらこの反応だったのだ。


「――しかしながら彼女は現れなかったのです。きっと兄から何か言われ、思いとどまったのでしょう。あの時私は誓ったのです――」


 いや、途中で足が痛くなり息も上がり、山道を歩けなくなっていた可能性が高い。ここは多少は感謝してもいいのかもしれない。



 実は馬車にはもう一人乗っている。そう、本物の魔道士様がいるのだ。かなり大き目のフードを被っており、顔をのぞかせる事がまだ無い。


 魔法、特に回復魔法について少しでも情報が欲しいところなのだが、商会の彼が離してくれない。

 話の隙に一度声をかけたのだが、返事はもらえなかった。もうちょっと積極的に行くべきだろうか、どうしたもんだか。



 順調に進んでいる商隊だったが、いつまでもというわけにはいかなかった。ローズさんが帝都行きは危険だと、しつこく言っていたくらいなのだから。


 どうやらモンスターと遭遇したらしい、狭い山林を登っているため、迎撃するしかない。

 馬車数台になる商隊のため、警備もかなりの人数がいる。前線に立つ必要は無いだろうから、馬車の上によじ登ってみた。


 木々が少し密集しているところから、力士のようにまんまる太った緑色のモンスターが、群れで襲ってきているようだ。

 こちらには、ジードと同じく弓を扱う物が多く、弓矢がかなりの数飛んでいった。弓矢はいくつか命中し、倒れはしないが進行はかなりゆっくりになった。

 構わず突っ込んできた数体は、囲まれ迎撃されている。魔法を使う出番は無さそうである。



「あの数のオークなら問題無さそうですね。いえね、前回の帝都への物資輸送の際には、警備の数がどうしても集まらないまま出発してしまいまして。襲撃に対処できず、大変な損害が出てしまったのですよ」


「帝都行きはかなり危険だと聞いております」


「そうなんですよ。だからこその今回のこの警備の規模なんですが、そこへ魔道士様がまさかお二人も同行いただけるとなると――」


 モンスターの襲撃は無くとも、気が休まることは無さそうである。




 帝都へ向け出発して3日目、険しかった山道が少しゆるやかになり、もうすぐ山頂といったところだ。

 日に数回のモンスターとの遭遇があるものの、大した被害も無く進んで来ていた。


 連日のように喋り続けていた商会の男により、意図せず妨害されているが、魔道士様とお話したい。今日は何の話を聞かされるのであろうか。


「……来ました」


 よく聞き取れないな、と思ったが男の発した声では無さそうだ。


「ハーピーが来たぞー、戦闘準備だー」


 どこからか声がかかり、馬車から外を見るが敵は見当たらない。ジード達を見ると、上に向かって弓矢を構えているようだ。


 馬車の中から眺めていたが、上空の方は良く見えない、屋根によじ登ると先客がいた。

 長く艶のある青い髪の毛が風になびいている、おとなしい印象のする猫目のが印象的な女の子だ。いつもはフードを被っていたので分からなかったが、魔道士様は若いんだな、リースと一緒くらい?ちょっと幼いかなとも思えた。


 こちらへは目もくれない、上空の敵を見ていた。空には青い色した羽で飛び回るハーピーがいた。数はそれほど多くないが、空を飛ぶ敵は始めてである。


 こちらも弓矢で反撃しているが、山頂に近く風が強い。弓矢は風に流されてしまっている。

 ハーピーの方は弓矢を何度か見て、射程距離をつかんでしまったのかもしれない、上空を高く飛んだと思うと急降下して足の爪で攻撃してきている。

 炎の魔法を当てるにしては、ハーピーの素早さが勝ちすぎてどうにもできそうにないな。



「……ああ、初めての遠出で、初対面の方々にこんなに囲まれただけでも……。でもここを抜けて、あと少し我慢すればきっと……」


 風でよく聞き取れないが、魔道士様がなにやら呟きながら立ち上がった。

 もぞもぞと古めかしい本を取り出して、右手を天高く掲げている。風を受けて踏ん張ろうとしている姿はか弱いのに、その体には光り輝くオーラが感じられる気がした。


「……の導きたる御心を……」


 これはひょっとすると、魔法の呪文を詠唱しているのだろうか。彼女が周りから、何かを吸い集めているように見える。


「……せし、今その契約に従い……降り注ぎなさい!ライトニングボルト!」


 周囲が暗くなり音が消えたと思ったら、空から爆音と共に光が落ちてきた。

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