2-10 伝える事があります
カン、カン、カン、カン、カン――
見張り台の鐘が鳴り止まない。
この合図は『全員 避難』となっている。村長宅へ向かう。
家に付いたところで鐘が鳴り止んだ。離れたところから集合したが、後ろからはまだ村人が歩いてきている。
抜き打ちで避難訓練の様なのもやってみたが、なかなか避難完了までの時間は短くなっていない。
リースが集まった村人に声をかけ、誘導している。先に家に入っておこう。
「おーい、また柵も罠も同んなじところを、壊されちまったぜー」
ブライが声をかけてきた。
「そういう報告は、俺にじゃないって何度も言ってるだろう。それで、罠にはかかってなかったのか」
「だって、あいつら話しかけても聞かねーもん。あ、音鳴りの罠は踏みつけられてたけど、エサの方は残ってたよ」
罠にかからない程度の知識はあるし、ナワバリ意識も強いと。警備隊の報告によっては、そろそろだよなあ。
警備隊からも報告が集まり、情報が揃った。
南側の小川付近にて、休憩しようとした警備隊がゴブリンと遭遇。
小川付近での遭遇は想定していなかったため、即時後退し様子をみた。数体が牽制してきたが、退散し被害は無しとの事だった。
「ジード、そろそろやばいんじゃないかなあ?リースが突撃しかねないんで、協力してほしいところなんだけど」
「何よ、私をエサにして話しを進めないでよ。ジードもどうせ反対するんでしょう」
「いや、そろそろ反撃といこうぜ。昨日偵察してみたが、また数が増えてるみてーだった。叩いておかないとまずいぜあれは」
「ほらね、やっぱり反対なのよ。少しは意見を聞いて欲しいものね」
「リース、ジードが反撃しようって言ってるぞ」
「えっ?」
何とも締まらないが、ゴブリンどもへの反撃実行が決まったのである。
リースは『突撃ね!突撃するわよ!』と、鼻息を荒くしたが、そんなことは絶対にしない。どうやって落ち着かせたものか。
作戦はなるべく少数で行う。それ以外の村人には街へ避難など勧めたのだが、聞く耳を持たなかった。
干物やら燻製とか溜め込んだ保存食をかき集め、予備の簡易柵を村じゅうへ配備し始めてしまった。
あれこれの罠を仕掛けに行こうなどと、農機具を握り締め出て行った村人もいる。
これは何が何でも作戦を成功させて、村にはゴブリンを1体も入れないようにしないとな。
まずは軽く偵察しつつ、ちょっかいをかけにいきますかね。
「ケント、何してるの。あなた戦えないんでしょ、お留守番よ」
いつもの如く首を掴まれる。猫のように噛まれないだけマシなのかな。
「あれ?言ってなかったっけ?」
「なによ、そんなに突撃したかったのね」
「え、違うってば。魔法、使えるようになったよ」