2-7 ちょっと考えてみませんか
「今話した事をやっていけば、明日から伐採作業をみんなしてくれるね?」
「当然よ、私が警備巡回するわ!」
「リース、ちょっと違うよ。君は剣を持てない、鋸や木斧を持ち伐採作業をするんだ」
「わたしはケントと違って、鋸や木斧じゃ多分戦えないわよ?」
「うん、話しが進まないから、ちょっと聞いててね」
小首をかしげるリースが可愛らしい。
「他の人もだよ、明日から役の仕事はしなくていい。鋸や木斧を手に持って伐採するんだ、やってくれるね?」
「わしゃー、もう腰が痛とーてして」
大きな声では言わないが、皆不満を漏らしている。
じいさんは確かに無理そうだよな、じゃあ――。
「ウィルムもだよ、警備はしなくていい。伐採をやるんだ」
「それじゃあ警備隊はどうするんだい。そこらへんを話してくれないと――」
「ウィルムはもう役の仕事はしなくていいんだよ。そこを考えるのは別の者さ」
「役決めを全てやり直すとでもいうのかい?しかも、ここにいる者を除いて?そんな――」
「くっくっく……。ケントや、思惑は分かるがちと話の誘導を間違えたようじゃな。ひっひっひ」
お婆が堪えるように笑い出した。
そうだね、ウィルムに話しをふったのが間違いだったかな。
「そうみたいだね。でも、ウィルムの発言は嬉しかったよ」
ウィルムは何を言ってるんだって顔だけど、今はまだそれで十分かな。
「お婆は気が付いてくれたけど、わざと検討してない事があるんだよ。それは伐採の中止、もしくは規模縮小についてだよ」
「あら、そういえばそうね。じゃあ何でさっきは、伐採を私がやるなんて話しをしたの?」
「それは、各々で気が付いてくれれると嬉しいかな。話しを戻すけど、伐採は当面中止して、人手を少し見張り台に回そう」
「なによその消極的な案は、もっとゴブリンに対抗出来るように考えるべきよ」
「俺もそう思うよ。だから提案するのは、ジードの対抗策その第二段階の前倒しだよ」
ジードにはギロリと睨まれたが、計画については話しを始めてくれた。
いや、前もって伝えてなかったのは悪いけど、タイミングが無かったんだよ。ぺこぺこと頭だけは下げておく。
第二段階でやることはいたってシンプルだ。
1、警備隊の増員・強化
2、移動できる簡易柵の作成と、罠の設置
「警備隊の増員は、幅を広げて募集しようと思う。そしてジード教官の指導を受けてもらいたい」
隊員は常に募集しているらしいが、全然集まらないとのこと。ちと不安が残る。
「伐採の中止により手が空いた人は、柵の作成と罠の設置だね。どっちも今まで使っていただろうけど、ジードがいるんだ教えてもらっておこうじゃないか」
意外とみな賛同してくれたのは嬉しいんだけど、そのまま詳細な打ち合わせが始めようとされた。
急な変更で影響範囲も広い、今日は全ての作業をやめて休息日とし、家の仕事なりをするようにお願いし解散した。
さて、警備隊の増員については動いてみますかね。
「おい、にいちゃん。けいびたいをあつめるんだよな」
ウィルムやリースに話しを聞こうとしたら、後ろから声をかけられる。
鼻を垂らす小僧が見上げていた、見覚えがある。ああそうか、決闘をのぞき見して捕まっていた子供か。
さっきの話しも、こっそり聞いてたってことか。
「そうだぞ、けどちょっとお前には警備隊は早そうだなあ。にいちゃんたちに任せておいてくれよ」
「なにいってんだい。とうちゃんはやられちまったし、レイラだって悪いヤツラにつれてかれたじゃねーかよ!」
スネを蹴飛ばして逃げて行きやがった。今は体が普通になってるんだ、かなり痛い。な、涙が出てくる。
くそう、悪ガキめ。あとで絶対仕返しをだな――。
今度は頭を鷲巣かみにされる、いててて。誰だよ全く。
「よお。ちょっと話しをしようじゃねーか」
あ、ジードさん。怒ってらっしゃいます?