2-6 低減措置を検討してみます
村長の家に着くと数名が横になっていた。そばではレイラが薬草を準備している。
えらく手際が良く見えるな。ひょっとして、前に目を覚ましたとき一緒にいたのは、看病してくれてたって事だったのかもしれない。
「ケントはこっちよ」
人が揃ったのかリースに引っ張られる。
呼んでくれれば、おとなしく付いていくんだけどなー。
「やつらやっぱり仕掛けてきたわ。こちらから先手をうちたかったのに」
リースはかなり興奮しているようで、拳を握り立ち上がる。
前置きやら説明が足らないのは、いつものリースの悪い癖だ。
どうやら要約すると、伐採作業していた者がゴブリンに襲われ怪我をしたと。鋸や木斧を振り回しているうちに、帰ってはいったようだけど。
「じゃが、あいつらも数体だったようじゃし、こっちの怪我も軽いもんじゃ。警備隊の調整なりで対応してみんかえ」
お婆はこういうのには保守的なんだな、堅実でいいとは思うんだけども。
「何甘いこと言ってるのよ、程度の問題じゃないわ。仕掛けられた以上そのままにすると、またやってくるに決まってるじゃないの」
ゴブリンにどの程度の知性があるか知らないけど、ねぐらが近くで見つかったんだ。縄張り意識が強かった場合は十分に考えられるよなあ。
「一応言っておくが、ゴブリンのねぐらに手を出すなんて考えはやめとくべくだぜ。聞いた話の規模的に、ねぐらにはゴブリンキングがいる可能性がたけーぜ」
ゴブリンキングの名が出て、リースも押し黙ってしまった。さーて、どうしますかね。
「ちょっと確認しておきたい事があるんだけど」
「なによ、ケントも反対だっての」
お、まだまだ元気はあるようだ。
「違うってば。ゴブリンが襲ってきた場所は、伐採作業が無かった頃は、村の人が出歩いていた範囲なのかなって」
「なんでそんな事を聞いてるの。場所は伐採が遅れていた西側よ、何も無かった山の部分だから、誰も近寄りもしなかったはずよ」
「むう、つまり奴らのナワバリに手を出した可能性があるって言いてーのか。すまねえ、下調べも何も――」
「ジード、そういう話しをしたいんじゃないんだ。ちょっとリスクアセスメントについて話し合ってみないか」
「あんだって?」
「想像してみてくれ、明日自分が伐採作業に行くとして、どういう事が不安だなーとか、怖いなーと感じるかを話して欲しい」
「まあ、それくらいなら」
「そしてその不安を、何をすれば不安が和らぐかを、皆で考えてみようって事さ」
「なんだ大したことじゃないじゃないか。さっきまでと何が違うってのさ」
「そう、そんなに難しい話しじゃあない。進行役はさせてもらうね」
ここにはホワイトボードも紙もペンも無い、手順を変えて1項目ごとに話してみよう。
「――となると警備隊の常駐は、他が手薄になってしまう。新たな問題を――」
「そうだねだから連絡体制よりも、監視員を配置して、警備隊と連携する方が対策としては現実的かなあ。見張り台はもうちょっと――」
いつもの事だけど、発言すらしない者が多い。ある程度誘導するようになってしまたが、仕方ないだろう。
「さあ、これで話しは終わりかしら。早くご飯を食べたいわ」
「あー、ごめん。本題はこれからなんだよ」
リースの悲しい顔が目に痛い。
「今話した事をやっていけば、明日から伐採作業をみんなしてくれるね?」