2-3 話しを聞いてみます
「という事で、ゴブリンのねぐらについては目星がついてるわ。ケントが復帰できたら、作戦に移れるよう準備してたのよ」
あれ、戦力に入れられてるよねこれ。うーむ、まずい。
「あー、リースさん。ちょっとお話ししたいことがありまして」
「そうね、言ってみなさい」
真顔でこちらを向くのをやめてください……。
「あーいえ。まだ可能性があります程度の事なんだけどね。ちょっと以前の様に戦ったりは、出来無いかもしれないって話しをですね」
「え……。やっぱり私を庇った時の怪我が……」
「いやいやいや!怪我はねさっきも言ったけど大丈夫さ。心配しなくていいよ。でもゴブリンを鉈で仕留めるのは無理そうでね」
「うん……」
「魔術道具で戦ってただろ、あっちは多分いけるはずなんだ。でも、木の皮はもう無いし。魔法が使えないかと試したけど、よくわからなかったままで」
「魔法が使えないのは仕方ないよ。全部聞いた話なんだけど、何年も師に就いて指導を受ける必要があるし、魔道書や触媒無しに発動なんて出来ないはずだよ」
「ウィルムは魔法詳しいのか?」
「いや、それ以上のことは分からないよ。でも一度だけ冒険者が魔法を使っているのを見たことがあるんだ。あれは凄かったなあ」
「おお、どんな風だったか教えてくれよ」
「ボクが冒険者に会ったのはだね――」
「魔法の事だけでいいからさ」
「ずい分とせっかちだね、ちゃんと話すってば。あの人は触媒として、魔法石を握ってたと思うんだけど」
「ほうほう、魔法石ね」
「ねえ、ケント――」
「リースちょっと待ってね、今大事な話しをウィルムから――」
リースがぐっと腕を引っ張ってくる。
「魔法石なら、家にあるわよ」
「あった、これよ。母様は魔法石と言っていたわ」
深い赤色の宝石が埋め込まれている。特別に輝きが強いわけではない、でも心が惹かれる、目が離せない。
「これが魔法石。ネックレスみたいに見えるけど?」
「母様は魔法使いでは無いから、贈り物を身に付けるためにネックレスにしたんじゃないかしら」
「え、それってとっても大事な物ってことじゃないかい」
「そうね、大事な形見でもあるわ。でもねケント、大事な形見だからこそ使って欲しい。それでゴブリンを1体でも多く倒せるのであれば、ケントに使って欲しいわ」
リースが魔法石を手にうったえかけてくる。大切な形見と言っている、人に渡してしまうなんてしたくないだろうに。
「そうか、リースがそう言ってくれるなら、ありがたく使わせてもらうよ。まずは1から練習だけど、頑張ってみるよ」
もう振り返る事など出来無い。魔法を使えるようになってみせないとな。
「ええ、ゴブリンどもを倒しましょうね!」