1-14 閑話
「君は本当に彼なのかい。何か手違いでもあったんじゃないかとすら思ったよ」
またこの頭の中に響いてくる声か。
そうか、また俺は――。
「変に期待しすぎてたのかなあ。ボクの事が気に入らないみたいだけど、君はこれで終わりで良いのかい」
この空間って、実は一番過ごし易いんじゃないかなー。でもここって、地獄とかに行く手前の待合室なのかなー。
「君は地獄には行かないし、ここは待合室じゃないよ。そもそも死んですらいないよ、ボクが無理やり呼び寄せたのさ」
でもやっぱりこの雑音は無いよなー。駅近くのボロアパートの方が落ち着けるんじゃないか。
「韜晦の度合いが酷くなってる気がするけど、頭の中に響いているだろう。無視し続けるのはお勧めしないよ」
なら早く――。
「まあ、それでいいよ。君に話しをするように嫌味を言われてね」
神様とやらに嫌味を言うとは、その人とは――。
「うーん、少しだけ星やボクの事を、知っておいてもらいたいんだよ」
要点のみを簡潔に願います。
「あの星は、かなり長く生きている天体なんだよ。でも文明が栄えていかない」
それは地球と――。
「人類はある程度までは増えたけど、争いが激しくなりお互いをつぶしあってばかり」
見た限りは、戦争やってる――。
「君が言いたいのは、国家間レベルでの戦争かな。最近は民族どうしの紛争もニュースになってるだろう、そちらをイメージしてくれよ」
日本の歴史を――。
「まあそうだよね。けど君にとっては他人でしかない、興味も沸かない話だろう」
それを聞くまでもなく――。
「分かっているよ、言動が一致しないって。それについても、しつこく嫌味を言われたよ」
話しが逸れ――。
「君には、あの星で生きていく為の力として、加護みたいなものを贈っていたんだ。何となく、気がついていただろう」
感謝しろと――。
「それは『じょうぶなからだ』と、『まほうつかい』という加護」
ネーミングに――。
「その加護により、君は死ななかった」
体が――。
「この後、あの星での生活がまた始まるよ」
もうそれは――。
「星の争いは終わらない。君は逃れられないはずだ、また死んでしまうような気がするよ」
加護が――。
「ただ、それは君の希望を聞いてからにしようと思うんだよ」
別に――。
「君はそれで本当に満足かい?ここは星とは時間軸や時間経過の仕方も違う、たっぷり考えていいよ」
決めた。
リースへの恩義が果たせていない、できれば村に戻りたい。でも、死なずに生き返るのは、もうこれで――。
「そうかい、じゃあ『じょうぶなからだ』は消しておくよ。ただ、これで以前のようには動けなくなるよ」
「『まほうつかい』は、マナの無い地球から来た君には必要なんだ、そのままにしておくよ」
ああ、――。
「もう会わないだろうから、最後に目的を果たさせてもらうよ」
まるで、今までのが――。
「堅太郎君。転生を押し付けて、ゴメンよ」
「なんですかさっきの独白は。あれで会話してるつもりだとしたら怖いです」
「彼には2度目の死を迎えさせてしまった様なものだ。君の言うとおりさ、ボクは完全に思い上がっていたよ」
「自分のことは慰めてもらいたいんですか。丁重にお断りします」
「彼に与えたのはチャンスなどではなかった。ボクは無粋と断じたけれど、最初から強力な加護を与え覇者となってもらう道もあったのに」
「そういった行為に、嫌悪を抱かれるのは存じていますが」
「嫌いだね。そういうのは物語の中でだけで十分だよ」
「ですから、それは全て物語の――」
「それ以上は言わないでくれ」
「開放された加護を、説明せずに星へ帰してよろしかったのですか。悪用されようと構いませんが、周りへの影響が強すぎる可能性が高いのではないですか」
「あれは最後の足搔きだよ。もう一度くらいは夢物語を期待してもいいじゃないか。可能性は限りなくゼロに近くとも」
「確率はゼロですよ。まさか小数点以下は切り捨てられているから実際には~。何て事は、おっしゃりませんよね」
「言わないよ。あの星の状況はきちんと把握出来ている。ただ――」
「そうですね、――」
「そう彼はボクにとってのイレギュラー。しかもこれで2回目だ。星のイレギュラーとなるよう願うよ」
「勝手すぎる言い分ですこと。でも結果がどうあれ、これで最後となりますね」
「ああ」