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1-1:異世界転生させられました

 この危機的状況はひどいと思うんだがどうしたものか。


 神様みたいなものと自己紹介していたが、あいつは気が利かなすぎる。

 異世界とやらに転生するのであれば、せめて最初くらいは安全な場所にするのが当たり前なのではないだろうか。


 四方は、武器を手に持ち血走った目をした異型の生物に囲まれている。正面の奴は人間の亡骸と思われる物に、剣を刺しては抜く動作を繰り返している。

 こちらは武器も無いし、膝が震えて身体が固まり歩く事すら出来そうに無い。

 今は物陰に隠れている状況ではあるが、いつ見つかるとも知れない。せめて脇でうずくまっている子供だけでも逃がしたいのだが。

 次あいつに会ったら文句言ってやろうと、さっきまでの会話を思い出していた。



 あの日30歳を迎えた俺は、3年続けたニートを脱却すべくハロワとやらに向かっていた。

 バスに乗るまでは勢いで誤魔化せていたが、座席に座って冷静になり気がついたのだが、動悸が激しくなっていた。

 勢いで家を出て来たが、何も準備していないことに気が付く。


 ハロワに着いて、その後はどうすればいいのだろう?

 職員の方と面談するのかな?

 希望の職種は何でしょう?とか聞かれても何も考えていないんだが。

 そもそも、履歴書は準備しておかないといけないんだろうか?


 目の前が真っ白になった俺は、バスを降りようと立ち上がる。降車ボタンを押そうとするが、手が震えてうまく押せない。

 今どの辺りなのか分からないが、そんな事は問題では無い。財布を取り出し小銭を準備しようとした時、バスに衝撃が走り意識が途絶えた。



「やあ。残念ながら、死んじゃったね!」


 えらくはっきりとした声が聞こえ、意識が戻ったことを自覚した。バスの中に居たはずだけど、ここはどこだろう?視界は(もや)がかかったようによく見えないでいる。周りを見渡そうと頭を動かそうとして、動かす頭が無い事に気が付いた。


「体はもう無いんだよ。見えていると錯覚しているだろうけど、目も無いよ!」


 死んじゃったのか、そういえば声も出せないな。体は無くていいけど、ここはネットに繋がらないのかな?

 パソコン画面とかを電脳機器みたいに表示できないのかな?仮想空間でキーボード入力とかしてみたかったんだよねえ。


「死は受け入れたのに、執着するところがおかしいよ君!」


 ……このノイズ消えてくれないかな。


「やっと反応したと思ったら酷い言い草だね……」


 誰?何か用?色々試したいから静かにしてくれないかな?


「バスの中では狼狽えていたのに、もう冷静なんだね!」


 質問には答えずに嫌味を言うとはいい性根(しょうね)だこと、親の顔が見たいよ。


「えらく年寄りくさい物言いが気になるけど、生憎と親と呼べる存在はいないんだ。ボクは君らの世界で言う神様みたいなものだからね!」


 あっはい。


「あれれ、さっきまでの勢いはどうしたのかな?もう言葉遣いには何も言わないであげるからもっと気軽に!」


 あ、いえ。勧誘とかそういうのは間に合ってますので、失礼させてもらっていいですかね?


「勧誘?新興宗教の教祖か何かとでも思ったのかい?ちょっとがっかりだよ。最近の地球人なら適正が高いと踏んでたんだけどねえ」


 適正?何が言いたいんだこいつは、この不毛なやり取りを終わらせるのはどうすればいいんだ?

 勧誘の電話なら通話を切って終了なのに。


「結構面倒くさがりなんだね、人生は無駄だと思える事をするのも大事なんだよ?」


 聞きたくもないのに、頭の中に響く説教から逃げること出来ないとか地獄みたいだよ。ああ、死んだのだからこれから地獄かどこかに行くのかな?


「悲観的になっているようだけど、君には悪い話しでは無いと思うんだよね。ちょっとボクの作った星に転生して欲しいんだよね!」


 転生ねえ。もう一度生まれ変わったとして、良い事なんてなさそうだからやっぱりいいです。


「勘違いしているかもだけど、君に拒否権は存在しないよ、それに準備もそろそろ完了する頃だしね!」


 いやいやちょっと待とうよ!

 仮にも神様みたいなものなんじゃなかったの?

 作った星ってどこなの?

 暑い所は嫌だよ?寒い所はもっと嫌だからね?

 平凡な人に生まれて、またニートになるだけじゃないの?そもそも人になれるの?おーい!


「面白い星だから、きっと気に入ると思うな!ああ、贈り物もしておいたから、生活には困らないはずだよ!」


 


「殆ど情報を与えないとは、ずい分と意地悪ですね。久しぶりの被験者なのですから、もっと温情を与えてあげてもよろしかったんじゃないですか?」


「なんだい会話を聞いていたのか。あの星に行くんだしいいじゃないか。なんでも、事前に転生後の容姿や能力を選択させたりする無粋な輩もいるらしいが、人生とはそういうものじゃあ無いだろう、ゲームじゃあるまいし!」


「最近地球の物語を蒐集されていたのは存じていますが、私が言いたいのはそういう事では無くてですね」


「大丈夫だよ彼は」


「えっと……」


「彼はやり直そうと踏み出したんだ。だからこそ彼に決めたのだから」


「あーはいはい、もうそれでいいです」


「それにあの星はだね、彼らの言うところの異世界転生のテンプレとはちょっと違ってだね!」


「其のお話しは、何度も伺いましたのでもう結構です。失礼致します」


「あ、逃げやがったね!」

読んでいただきありがとうございます。


少し読みやすく修正したつもりです。


感想などいただけますと、大変ありがたいです。

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