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フォ―ス

あの黒髪美少女が俺の妹のリーゼとして転生したと判ってから半年後、俺は鍛冶屋の弟子になった。

この世界にも『冒険ギルド』などという魔物を狩ったりして生計をなす組合的な存在もありハンター的な職業もあったけど、俺は鍛冶屋になった。

理由は4つある。


1つ目は、この世界の常識観点から『ストークス家』の財産は姉のメリッサが継ぎ畑を守るため婿を取り相続するからである。

当然、俺は成長すれば家を出る事になるから。


2つ目は、この世界でも『学校』というものが存在するが授業時間は昼までで男の子なら昼からは修行的な労働に出るのが一般的だから。

ちなみに『学校』というものは貴族でもない限りは12歳で終了し一般的な庶民なら余程の成績優秀者でない限り進学する事は稀である、要は小学校を卒業すると即大学4年間って感じだ。


3つ目は俺の前の世界でのネトゲ(オンラインゲーム)が関係する。

俺はネトゲでは自分の作成した装備しか身に付けなかった。

自分の銘が入っている装備しか身に付けない謂わば『徹底主義者』なのだ!

でも、ネトゲとはアルゴリズムが支配する世界であり『運』が良ければ高スペック装備が出来るというところに不満があった、拘りを見せられない『偶然の産物」と云う事に不満があったのだ!

常日頃から自分の納得のいくものを!と考えていたところに死んで転生した。

そして偶然に母のヘレンが言った言葉が俺のハートを捉えた!


「今日買ってきた包丁最高だわ!」


包丁の銘を見ると『ベニカゼ』と彫ってある、俺も試しに骨付き肉を切ってみたが骨の存在を感じさせないくらいの切れ味!さっくりって感じだ!


早速、アルに同行して貰いベニカゼの工房を訪ねて雇って貰えるように頼むが断られた、弟子は取らない主義らしい。

だが、アルが懇切丁寧に何日も訪ねて願い出ると折れたのか弟子として雇って貰えた、アルに感謝したい。


俺の師匠となったベニカゼはカルム王国から遥か東の国の神聖ヤマト皇国の出身で75歳位の老年の人だ。

見た感じも白髪と顔の皺と腕に多数ある火傷や傷跡などから厳しい人かと思ったけど実際は優しい人だった。

丁寧に根気よく教えてくれたし解らない事があると何時間でも説明してくれた。

ただ不満はアルと同じ酒飲みで仕事途中でも『酒を買って来い!』がよくあった。


そして剣や槍の製作依頼があっても必ず拒絶した。


一度だけ俺も師匠に聞いた事がある。

あれほどの切れ味を誇る包丁を作れるのなら良い素材を使って剣や槍などをどうして作らないのかと。


「人を生かす刃物を作りたい、それに人を殺める剣はもういい・・・・」


何故か俺はしみじみと酒を飲みながらの師匠の言葉に感動した!


4つ目は、・・・・・・死にたくないし戦いというものが恐ろしかったから。

考えてみれば魔物と戦うにしても人と戦うにしても運が悪ければ死んだりする。

死ななくても大怪我をしたりする。

俺は元は戦いに不向きな『キモオタ』だ。

ゲームでは最強になれても、それは俺自身ではなく俺のゲームキャラであって死んでも復活出来るし俺自身へのダメージは無い。

ここは異世界であっても現実世界。

死ねば全てが終わる。


畑仕事を手伝っていた時にアルに『この世界は魔法とかってないの?』と一度だけ聞いた事がある。

アルは怪訝な顔をしながら言った。


「人間が使える訳ねえだろ?アベル・・・・熱でもあるのか?魔物にでもなりたいのか?」


どうやら人間にそういったスペックは無そうだ、しかしアルが言った。


「もしかしたら俺の子だから『フォース』は纏えるかもな!」


そう言うとアルは足元の草を千切ってジッと見つめると3Mくらい離れた木に投げた。

すると草が木に刺さった!


「父ちゃん、すげええ!」


「これは大きい小さいはあるけど持って生まれた才能があれば使えるんだ!」


「才能って?」


アルが言うには一種の呼吸法みたいなものでとフォースと呼ばれる自分の生体エネルギーを目標とする物質に送り込み硬質化させる事らしい。

前の世界の週刊雑誌で連載されてた『魁〇塾』に出て来る、あれか!


「俺も使えるようになるかな?」


「うーん切っ掛けがあればなあ!」


アルの切っ掛けは20年前のヘレンと結婚する前。

結婚する前のアルはカルム王国の王都カルミニの城で武器倉庫整備係をしていたらしい。

ある日、城で武術大会があり多くの騎士たちが参加したが、余興で手投げナイフ大会があったらしく優勝賞品が葡萄酒樽一本と金貨10枚、ルールは10本投げてより当てた方の勝ち。

誰でも参加資格があったので葡萄酒に釣られたアルも出てみたところ、運良く決勝まで残ったそうだ。

だが決勝の相手はよりによってカルム王国でも武門の誉れ高いヴェルデ―ル家の当主であるヒラリーだった。


相手が悪すぎる、葡萄酒は諦めよう・・・・アルは思った。


だがヒラリーは、そんなアルの心情を読み取ったのか、


「私は負けるのが嫌いだ、だが手を抜かれて勝つのはもっと嫌いだ!手を抜いてるそぶりがあったら即刻両腕が飛ぶと思え!」


ヒラリーは貴族だけあり見た目は美しく聡明に見えるが、そういう人の言葉にアルは恐怖した。

しかもヒラリーの目は血走り、この勝負を余興だとは思っていない事がありありと判った。


先行はヒラリー、10本中10本が当たった。


「手を抜くと判っているだろうな、少なくとも9本は当てろ!」


まず無理だ・・・・・どちらにせよ両腕を叩き斬る気でいる・・・・・俺の人生は終わった。

アルの呼吸は荒くなり空気を吸っても吸っても過呼吸状態に・・・・・


審判を務める貴族から開始の笛が鳴らされた。


どうにでもなれ!ナイフをジッと眺めて、ある意味自虐的に投げた!


するとナイフは刃の部分に青白い光を帯びながら的を突き抜け固定していた台までブチ折った!


観客たちも審判の貴族も対戦相手のヒラリーも投げたアルも何が起こったのか分らなかった。

しかし、やはり武門の誉れ高いヴェルデ―ル家の当主であるヒラリーが最初に言葉を発した!


「貴様、フォースが使えたのかああ!」


ダメだ、死んだ・・・・・・・


「的を潰すような威力を出されは私の負けだな!まさに一撃必殺!お見事!」


アルはヒラリーに勝ちを認められて優勝となった、目的の葡萄酒も手に入れた。


しかし同時にヒラリーからヴェルデ―ル家の騎士として仕えないかと誘いも受ける事になってしまった。

懸命にヒラリーに土下座に近い事までやって許して貰い、逃げるように城勤めを辞めてコープ村に来てヘレンと結婚したらしい、持参金は優勝賞金の金貨10枚。


「どうして騎士にならなかったの?」


「戦争に駆り出されて戦うの嫌じゃないか、怖いし」


「そうだね!」


「でも俺の場合は、こんな感じだったけど人によって様々らしい、それに許容量もあるみたいで俺の場合なら一日3回くらいまでだな!」


「そうなの!」


「だから持って生まれたものだろうけど使えるようになるとは限らないし使えるようになったら修練も必要になるからな!」


「父ちゃんは修練はやらなかったの?」


「俺には今の生活では必要ないからなあ!」


「そうだよね」


ただの禿げた親父かと思っていたが、アルにも色々と紆余曲折があったようだ。

しかし・・・・・もしアルが騎士になっていたら俺の理想とおりだったわけで・・・・・

でもアルの言うとおり戦いに駆り出される場合もある訳で・・・・・

それにアルとヘレンが結婚したから俺は転生して存在する訳で・・・・・・


でも、俺は転生した世界で平和に生活し満足しているから良しとした方が良さそうだ!

あの黒髪の美少女が俺の妹として転生して来たのだから!


「そういやアベル、お前には教えてなかったけどメリッサは俺なんかよりフォ―ス使えるからな!」


「え!姉ちゃん、使えるの?」


「ああ、家族の前では使わないようにしてるだけで生まれて暫らくしたらメリッサは使えたんだ!」


「すげええ!姉ちゃん!」


「これ内緒だぞ!分っちまうと厄介だからな!」


ちょっとフォ―スについて調べてみよう!

しかし・・・・・普通なら転生者の俺が使えるような設定じゃないのか?

現実は甘くないって事か!













誤字脱字・アドバイス等があれば助かります。 よろしくお願いします。

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