表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/219

俺の妹で良かったよ

俺の髪の色は燃える様な赤毛、父のアル・ストークスは現在は禿だが元は赤毛だったらしい、母のヘレン・ストークスは赤毛、そして姉のメリッサ・ストークスも燃える様な赤毛だった。


しかし・・・・・・生まれてきた妹は黒毛、赤ん坊にして既に艶のある立派な黒髪だった。


「母ちゃん・・・・・・まさか浮気なんてしてねえよな・・・・・・」


「してるわけないだろ!何かい?父ちゃんは私を疑ってるのかい?」


「いやいやまさか!思ってる訳ねえだろ!でもなんで、この子黒なんだ?」


「アンタか私の御先祖様に黒髪の人がいたのかねえー」


「・・・・・そうか先祖返りかも知れんなあ」


俺の4つ下で生まれてきた妹は最初から不思議な子供だった。

姉のメリッサに似ていると言えば似ているように思うけど、どことなく前の世界で言う『和風』な顔立ちにも見えた。

それに授乳の時はヘレンが抱いても大人しくするが、それ以外は家族が抱けば泣きわめき俺が抱けば笑顔を浮かべる不思議な妹だった。

アルは凹み、ヘレンは困り顔、メリッサはプクっと可愛らしい頬を膨らませていた。

そういう事から俺が大抵の事は面倒を見る事になった、妹の面倒を見る事自体は前の世界でも経験済だったから特別困る事は無かったが、正直に言うと俺は妹にビビッていた!というか何となくだが妹の正体が分かった。


こいつ俺を殺そうとした黒髪の女の子だ・・・・・・


直感としか説明できないが確信的にそう思った。


あの子も俺と同じ時に死んだ。

俺が転生が出来て黒髪の女の子が出来ないはずもない。

同じように転生して、また俺を殺そうとするのか?

だが、もしかしたら偶々黒髪で偶々俺を本能的に気に入っただけなのかもしれない!全くあの子とは関係ないのかも・・・・・・

やりきれない想いと恐怖を抱えたまま2年の歳月が流れた。

この頃は俺は6歳になりメリッサは10歳、リーゼ・ストークスと名付けられた黒髪の妹は2歳になり、もう歩く事も話す事も出来たが、相変わらず俺にベッタリとして少し離れれば俺を捜す、そんな可愛い妹になっていて俺を萌えさせた。

勿論、家族にも可愛く笑顔で接するから可愛がられていたのだが、俺は特別みたいな感じだった。


「兄たん!兄たん!」


そう呼ばれれば俺は走って駆けつけリーゼを抱きあげた!

可愛くて仕方なく俺は黒髪の女の子の事などいつしか忘れていたが、ある日、俺の恐怖を再燃させることになった。


アルは農民である。

小作とかではなく立派に1人で畑を耕し生計を立てているが、畑の所有者は母のヘレンである。

この世界は『女尊男卑』の世界だった、だから婿が婚家に入り家族を養うのが常識の世界で

前の世界なら古い考えだが『男は外に出て働くから偉い!』だが、この世界では『女が家庭を守り子供を産むから偉い!』なのである。

この他にも、この世界に来て6年も経つと色々分って来たが一番驚いたのが、この世界には身分制度もあるが一番の下位とされる『コソベ』と呼ばれる存在だった。

奴隷と呼ばれる存在もいたが、この世界では前の世界ような悲壮感ある存在ではなく能力さえあれば這い上がれる事を約束された存在であり俺が住むコープ村を支配するカルム王国の貴族には過去に奴隷から這い上がり伯爵になった人もいたらしい。


勿論、これはカルム王国だけの話ではなく全ての国で多少の違いはあれど約束された制度に似た常識であり

要は『やる気と能力重視』の世界なのだが、ここで登場するのが『コソベ』である。

彼らは村や町の片隅で謂わば前の世界の『ホームレス』的な存在で『やる気の無い者』を総称して呼ばれる者達で軽蔑され忌み嫌われていた。


俺も一度だけヘレンに連れられて町に行った時に『コソベ』を見た事がある。

その時にヘレンから言われた事があった。


「あれをごらんアベル!あそこにいるのが『コソベ』だよ!ああいうのになったら駄目だよ!」


普段は優しく笑顔の絶えないヘレンでさえも軽蔑する存在らしい。


アンタの息子は前の世界では、その『コソベ』よりも酷い存在だったんだぜ!と言いそうになったが止めた・・・・・

今の俺は、もう失敗しないと誓ったのだから。


そんな色々と分って来たある日、アルを昼飯の用意が出来たと畑まで呼びに行った。

リーゼが愚図るので一緒に連れて行くが途中でリーゼが俺に言ってきた。


「兄たん、昨日ね、怖い夢見たの!」


「どんな夢を見たの?リーゼ」


「あのね、誰かを追い掛けてたらね四角い大きな怪獣に食べられるの!」


「四角い怪獣?」


「うん、ピッカピカって光ってビビーって鳴く四角い怪獣に、その人と一緒に食べられちゃうの!」


「・・・・・その誰かってどんな感じだった・・・・・?」


「うーん・・・・・凄いデブさん!」


「・・・・・・」


俺の妹は間違いなく、前の世界で俺を殺そうとした黒髪の女の子だ!

リーゼが生まれた時に感じた確信は間違いなかった!

コイツは俺を殺そうと、この世界まで追い掛けてきたのか?

リーゼが俺を見てニコッとし俺が恐怖にかられた瞬間、またリーゼが言った。


「でもリーゼ、いつも夢の中では泣いていたのに怪獣に食べられた時に笑ってたの?」


「・・・・・笑ってる?」


「うん、凄く安心してるの!それでね!」


「・・・・・・それで?」


「うん、デブさんに謝ってるの、ごめんなさいって!」


それからリーゼに色々と聞いてみるが具体的には俺程には転生してきた記憶は残っておらず、本当の意味で『生まれ変わった』が近いようで夢というのも『観た!』って程度のようだ。

もう少し大きくなれば、そういった夢も見なくなるかもしれない、ネットでも見た事がある『転生輪廻』の体験談と同じなのかもしれない・・・・・・

それに、いつも泣いていたって事は、あの黒髪の女の子は俺とは違った意味での辛い生活を送っていたのかもしれない・・・・・・そう何故か思えた。

もしかしたら、神様って奴がいて何らかの理由で黒髪の女の子を俺の妹にして預けたのかも?

そして、家族には内緒の2人だけの秘密と言う事で指切りげんまんをする。


「兄たん、リーゼね、兄たんの妹で良かった!」


俺に抱き付いて来てそう言った。


「そうだな、リーゼが俺の妹で良かったよ!」


そう俺も素直に言えた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ