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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第3部 テアラリ島3部族武闘祭編
37/219

誇りを守る為に

「おい小僧!ちょっと話をせんか!」


俺は初めて会った、レイシアのパートナーの張馬林に試合中対峙していた際に声を掛けられた。

張馬林はミハエルの情報では老齢の傭兵だと聞いていたが、老齢どころかヨボヨボの小さな禿爺さんだった。


「爺ちゃん、俺の油断を誘ってんのか?」


「いやはや最近の若いのは疑り深いな!無駄な事は辞めようと言っておるんだ!」


「爺ちゃん無駄って何だ?」


「小僧の相棒の嬢ちゃん、人は殴れんのだろ?じゃあ、この勝負無駄ではないか!」


「殴れるから、ああやってラウラは構えて睨んでるんだろうが!老眼か?爺ちゃん?」


「ホントだな、ありゃ人を殴れる目だ!小娘の話とは随分違うではないか!まあどっちが勝っても儂は良いんだがな!」


どっちが勝っても儂は良いんだがな!・・・・・って。

この時、俺はミハエルから聞き流した話を想い出した、金で雇われている訳じゃないと・・・・・

すっとぼけて張馬林に聞いてみる事にした!


「俺と同じで金で雇われたのじゃないのか?まあ俺が言うのもなんだけど、俺を倒さないと金にはならないだろ?」


「そんな物より、もっと面白いものを貰えるから小娘の相棒を引き受けたんだ!」


「面白いものって何?」


「小娘の『誇り』だ!」


それから俺は張馬林と杭の近くまで行き聞いてみる事にした。

それは吐き気のするエロゲーみたいな内容を嬉しそうに張は話してきた。

しかし、元傭兵と聞いていたが考え無しに喋っているところをみると頭はミハエルほど良くはないみたいだ!


「小僧は、この国の奴らが、やたらと『誇り』と言いたがるのを知っておるか?」


「ああ、知ってるけど」


「小娘がエルハラン帝国にいた儂を訪ねて来た時に最初は金で話を着けに来たんじゃが面白くないので、お前の『誇り』をくれと言うたんだ!」


「ほほう、それで?」


「『誇り』を、どうすれば良いのか?と聞いてきたから答えてやったんだ!」


「爺ちゃんは何て言ったの?」


「お前の身体をくれって言ったんだ!」


「身体?レイシアの身体って事かい?」


「そうだ!面白くないか!『誇り』だの偉そうに語る奴を屈辱を与えて嬲るのは!」


「いいやいや、それ冗談でしょう?」


「冗談なものか!余程この武闘祭で勝ちたかったのだろうな、悩みおったが承諾しおったわ!」


「へえ・・・・・」


「儂は散々戦場で玩具オンナを壊してきたが、小娘は聞けば族長の娘だと言うではないか!あんな玩具はそうはないぞ!身体は小さいが胸はデカいからな嬲りがいがあるぞ!あの歳では男はまだ知らんだろ!」


聞いていて、こんなスケベな爺もいるのかと思ったが、もうちょっと突っ込んだ話を聞いてみた。

俺が金で動いているだけの男だと見ているのだから、このままの調子で簡単に喋るだろう!


「で、どんな条件を出されたの?」


「ゲイシー・ロドリゲスを倒してくれって頼まれた!」


「ゲイシー・ロドリゲスを!」


そうかレイシアは端からリラとゲイシーに狙いをつけていたのか!

この武闘祭のルール上、テアナ族同士の戦いになるからリラとゲイシーが勝ち上がると読んで、自分はラウラが人を殴れないから勝ち上がると読んでいたのか!


でも、ここでレイシアがラウラに負けたらどうなるんだ?

この爺は、どうするつもりだったんだ?


「でも爺ちゃん!ここでレイシアが負けたらゲイシー・ロドリゲスと戦えないじゃないか?」


「そんなのはどうでも良いわい!初めに勝っても負けても『誇り』は寄越せと言ってあるわい!なんせ小娘は自分の『誇り』を賭けたのだからな!断れんだろ!」


「じゃあレイシアが勝ち上がってゲイシー・ロドリゲスと戦う事になったら、どうしてたの?」


「即、降伏するわい!昨日観たが、あんな頭の狂った化け物と戦えるか!」


この爺・・・・・端から、さっさと降伏して自分は契約を盾にしてレイシアの身体を楽しもうと考えてやがったのか!

なんて姑息な爺だ!最初に『誇り』を契約させてレイシアを逃げられないようにしてテアラリ島3部族にとって『誇り』が如何に大事しているかを逆手に取った訳か!

しかし・・・・・悪知恵だけは働くのか・・・・・


「なあ爺ちゃん!それ冗談で言ってるんだろ?レイシアを嬲るとかさ!」


「いや本気だ!なんだ?もしかして小僧は金で雇われておらんかったのか?奴隷剣闘士の上がりと聞いておったが!?」


ちょっと張馬林が俺の事を疑い出してきたな、そろそろだな!


「一応聞いておくけど、その契約を解消する気はないかい?」


「・・・・・小僧、もしや儂の楽しみの奪おうとでも考えておるのか?死にたいのか?」


よし!この目はマジでやる気だな!じゃあもう良いや!聞く事は聞いたから!


「当たり前だろうが!お前みたいなエロ爺にレイシアが嬲られんの黙ってられるか!それにな、この島の部族の『誇り』はエロ爺が蹂躙出来る程安くはないんだよ!」


「約束したのは小娘の方だ、小僧にどうの言われる筋合いはないわ!」


「確かにそうだな、でもな1つだけ爺の意思に関係なく契約を解消する事が出来る条件があるってのを知ってるか?」


「なんだ、それは?」


「俺に爺がここでぶち殺される事だ!」


「なんだと小僧!儂と殺り合うつもりか、ぶっ殺すぞ!」


「やってみろよ!スケベ爺が!」


だが、ここで考えた!最悪のパターンを!

レイシアがラウラに負けた時だ!

俺と張馬林が戦っている間にレイシアにギブアップ宣言でもされたら水の泡だ!


「おい爺、取り敢えず2人の試合が終わってから殺してやる!」


「ほう、小娘が降伏した場合を考えおったか!」


クソ、読まれたか・・・・・・・だったら次の手だ!


「別に良いけどな!ここでレイシアとの契約の内容をデカい声で叫んでやろうか?ここにはテリク族の人間も多くいるぞ!俺が叫べば、爺、テリク族いやテアラリ島3部族の全員を敵にまわすぞ!

爺に選択の余地はないんだよ!あるとすればたった1つ!ここで俺を殺して口封じする事だ!」


「クソが・・・・小僧!お前死んだぞ、苦痛の中で殺してやる!儂には若者を育てる義侠心は無いからな!」


「気が合うなクソ爺!俺も敬老精神なんて持ち合わせてはいないんだよ!」


それから張馬林と2人並んでラウラとレイシアの戦いを見守った、その間に張馬林が何か仕掛けるかもしれないと警戒したがしてこなかった、張馬林も俺を警戒しているのだろう!


そしてラウラの一撃が決まり2人の勝負は決した。


「ラウラ、まだ絶対にレイシアに降伏宣言させるな!レイシアも絶対に降伏宣言をするな!降伏するなら俺がこの爺をぶち殺した後だ!分ったな!」


と俺が叫んだ時、突然、張馬林が笑い出した!


俺がラウラが頷きを確認した時だった。


「小童!死ねやああああ!」


俺に上段廻し蹴りを放ってきた!


これは流石にモーションが大きく、躱してから一旦後方に飛び退いて態勢を整えた。

しかし、張馬林が自分の肘に装備した防具に手を掛けると引きちぎり、その他の防具も外してしまった!

おまけに自分の模造武器まで投げ捨ててしまい、しかも上半身裸になった!


「小僧、お前は素手で嬲り殺してやるぞ!どこから抉り出された!」


そう言うと両手を左右に広げ、左足の膝を直角に曲げ右足の片足立ちになった!


「我が蛇虎波流拳でぶち殺してやる!」


「そんな御遊戯みたいなので勝負になると思ってんのか?」


「ならば見せてくれるわ!アチョ―!」


そう叫ぶと膝を曲げていた右足で猛然と砂浜を蹴り一気に間合いを詰めて来た!

両腕広げたまま交互に体幹を捻じり、その動きで殴って来た!


俺は二刀剣の両方で受けたが、その時急に屈んだ張馬林が俺の腹に向けて頭突きを放ってきた、しかも自分の頭にフォ―スを込めて!

咄嗟に二刀剣をクロスさせ防御に出たが、張馬林の頭突きに呆気なく前になった右の剣が折れた!


「これこそ蛇虎波流拳奥義虎牙殺鉄頭!」


「おい!ただのエロ爺かと思ったが頭に直接フォ―スなんて込められるのか!やるなあ!」


「ふ、驚いたか!貴様らでいうフォ―ス、我らでいう錬氣。我らの蛇虎波流拳は身体に錬氣を帯びる事に、その真髄がある!」


なるほど!フォ―スって、そんな使い方も出来るのか!こんなエロ爺でまさかの勉強になった!

この爺、馬鹿だから煽てて、もっとフォ―スについて喋らせるか!


「そりゃ凄いなあ!いや大したものだ!」


「ふ、煽てても小僧が死ぬことには変わりはないぞ!」


流石にダメだったか・・・・・じゃあ、もういいや!殺すか!


「じゃあ最後に聞いておくけど、土葬が良いか火葬が良いか、どっちだ?爺だから火葬の方が燃えやすいから係の人も助かると思うから、そう言ってたと伝えてやるよ!」


「生意気な!小僧死ね!」


また、蛇虎波流拳奥義虎・・・・・なんとかっていうのを仕掛けて来た!


同じパターンで攻めて来たけど俺は右腕剣1本で捌きつつ、左手で腰に装備したスティレット(短剣)の模造武器を引き抜き張馬林が俺の顔を狙った頭突きに合わせてフォ―スを込めて突き刺してやった!


当然ながらスティレットは短剣ではあるが針状の先端は点であり頭突きは謂わば面である。

いくらフォ―スを頭に纏ったからといっても、こちらも同じフォ―スを込めている。

条件が同じで点と面なら点の方に圧が掛かり一点集中となり勝つのは道理である!


「ぐわあああああ!」


流石に鍛えていたのか殺せはしなかったが張馬林が叫び声を上げる中で俺はそのままスティレットで頭から顎まで引き裂いてやった!

そして右手の剣にフォ―スを込めて張馬林の左膝を砕いてやった!


「ぎゃあああああああああああ!」


「おい爺、レイシアがお前を誘ったのは傭兵の実績か何かなんだろうけど実は大した傭兵じゃなかっただろう?」


「た、助けてくれ!」


「恐らくは自分が勝てそうな相手か弱った相手を見つけては殺して楽しんでたクチだな!それを自分が如何にも強い風に上手く見せていたんだろう!悪知恵だけで生き残ってましたってか!」


「命だけは・・・・・・」


「本物の傭兵ならミハエル・イワンホフのように例え勝てる保障の無い相手でも受けた仕事は全うしようとするよな!!ゲイシーの話を聞いた時におかしいと思ったんだよ!」


「助けてくれ・・・・・」


「ダメだよ、爺はテアラリ島3部族の『誇り』を傷付けたんだよ!

それに傭兵だろ?目の前にいる相手が元奴隷剣闘士でマンティスと呼ばれた殺人鬼だって見抜けなかったから!俺言ったよね?敬老精神は無いって!それに散々戦場で玩具オンナを壊してきたんだろう!今度は爺の番だ!」


俺は直ぐに剣を叫ぶ張馬林の口の中にぶち込んでやった!降伏宣言をさせない為だ!

そしてスティレットにフォ―スを込めた!そして右腕・左腕・左大腿部に刺して行動の自由を奪ってやった。


笑いそうになった!前にもこんな状況になったな!スティレットをくれたスチュワード・ハミルトンの時だ!だが、あの時と違い今は止めるヤツはいない!


「さよなら!もう十分に生きただろ!生涯でやった罪の重さを考えながら地獄で詫びろ!爺ちゃん!」


「ぐががが・・・・だ、づ、げ・・・・・で」


俺はフォ―スを込めたスティレットを張馬林の首に突き刺し2、3度抉ってやった。

張馬林の首から大量の血が噴き出し俺の顔を熱を伴い赤く染めた。

そして張馬林は俺が抉った回数と同じ数だけ手足を最後にバタつかせて死んだ。


どうせ、この爺を生かしておいたところで、いずれレイシアに必ず災いを持って来る!

恐らく、恨まれた俺にも何かの方法を使って陥れようとするだろう。

だから俺には罪悪感は無かった、俺からすれば当然の自衛策なのだから。

それにテアラリ島3部族武闘祭は基本的に殺してはダメだけど、男は女ほど守られないのだ!

そんなところに己の欲で出場した爺が悪いのであって俺には非がないのだから。


そんな俺の後ろから、声が聞こえた!


「ギブアップします!」


レイシアの降伏宣言だった!


これによりラウラと俺の決勝進出が決定した!


それから木と蔓で作ったストレッチャーみたいなので運ばれる2人を見て、ちょっと後悔した。


早く張馬林を殺せば良かったと。



※     ※     ※



そして今、俺の胸の中ではレイシアが泣いていた。


試合の後、レイシアは自分からテリク族族長であり母のエリゾネに張馬林との契約内容を話した。

聞いたエリゾネは激怒しレイシアを処刑しようとしたが姉のケイトがなんとか、その場を取り成し、テラン族族長宅に連れて来たのだ!

テアナ族ではカミラの件もあり預かって貰えないからだ。

レイシアの処分はエリゾネとケイトが協議しテアラリ島3部族武闘祭後に裁定するらしい。


そしてホリーはケイトからレイシアを預かったがカミラと同じように監禁や見張りも着けずに自由行動を許したのだ。

出された御飯も食べずにレイシアは族長宅の浜辺に出て泣いていた。

何故かラウラから頼まれて俺がレイシアを慰めに来たのだった。

自分は口下手だからアベル頼むと言われて・・・・・・まただ、カミラの時と同じだ。


俺はカミラの時と同じように隣りに座り黙っていた時にレイシアが話してきた。


「アベルさんには助けられましたね・・・・・」


「俺もレイシアにはミノタウロスの時に助けられたからね」


「ずっと自分の身体の小さい事が嫌で悩んでました。出来た姉とも比べられて嫌で嫌で耐えられませんでした。私を気遣ってくれる姉を恨んで、かと言ってカミラのように姉に挑み掛かる勇気もない!それでいて認められたいから他者の前ではリーダーシップを執ろうとする!強がろうとする!一体私は何がしたいんですかね・・・・・・・」


「それって人間なら当たり前の事だよ!劣等感があって、そして妬む。誰だってある事だよ!何もない人の方がおかしいよ!」


「でも、挙句の果てが『誇り』を売ったんですよ!あんな男に!」


「でも、それってさ『誇り』を売ってでも這い上がろうとした結果じゃないの?他者に認められるってさ要因な事じゃないと思うよ!なりふり構わず這い上がろうとした人が卑下される事は無いよ!」


「『誇り』を売ったのに?」


「俺は思うけど『誇り』ってさ部族がっていう統一のものじゃないと思うんだ!自分自身が定めた自分だけの信念を指すと思う!正直、今回のレイシアは褒められたものではないと思うけど、それでも自分が定めた信念の為の行動を起こした結果じゃないかな!」


レイシアは、まだよく分らないという顔をしていたけど、カミラと同じように何かは悟ってくれたようだ。


「まだ、よく分らないけど、アベルさんありがとう・・・・・ついでにですが今だけちょっと泣かして貰えませんか?少しの間で良いですから・・・・・」


そして俺の胸の中でレイシアは泣き出した。


その『誇り』がどういうものなのか俺にも分らない。

きっと間違ったものではないのだろうと思う。

良い方に傾けば悪い方にも傾くもののようだ。



だが・・・・・・この島に来てから2つ分かった事がある。


1つは女の子は泣く時は砂浜という事。


もう1つはテアラリ島に来てから俺はリア充全開だという事だ!



アドバイスや誤字脱字等がありましたら御指摘よろしくお願いします。

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