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守ってあげたい

背は小さく姿形は並程度、かといってカリスマ性なんてものは無い。

エスポワール帝国の女帝やグレーデン王国の女王のような天才でもない、イスハラン帝国女帝のように義理に厚く厳格でもない、イグナイト帝国新女帝のような武勇もない。

ましてや『ヴェルデールの四姉妹』又は『デンブル騎士団』のような他国に誇れる部下もいない。

イグナイト帝国が誇った『無敵艦隊』のような強力な軍隊もない。


エスハラン帝国女帝ファティマとは、そんな感じの人である。

だが何故か国民からは慕われている。

隣国の大国イスハラン帝国や少し離れたムフマンド王国の四大貴族達からも、それなりには敬意を払われている。

しかし当の本人は敬意を払うに値しないような人物であり一日中ボーっとし何かをすればドジばかり、基本的にはのんびり屋である。


こんな話がある。

彼女の国と外交同盟を結ぶのはイスハラン帝国とテアラリ島3国であるが、そのテアラリ島3国の一つテリク族現族長ケイト・テリクがまだ族長を継ぐ前の出来事である。


その頃のエスハラン帝国はイスハラン帝国との再同盟交渉で頭の痛い問題を抱えていた。

原因は国境のど真ん中、どちらの領内とも判断しがたく別に戦略的価値も無い小さな池である。

この池の付近にグールと呼ばれる食屍鬼の群れが住み着いていたのだが、これが問題になっていたのだ。

食屍鬼だから生きている人間には特に悪さを行うわけではないが、池からそう遠くない場所にエスハラン帝国にもイスハラン帝国にも墓地があったから厄介となっていた。


「グール達はエスハラン帝国の方で対処して下さいよ!」


「いやいや、あの池はイスハラン帝国の領土内でしょう。

そちらがやるべきです!」


「いやいやグールが漁った死体はエルハラン帝国の方が百体超えてるでしょう。

ウチは、まだ九十四体ですから!」


「いやいや出没回数はウチは二十二回、イスハラン帝国では二十五回でしょう。

という事は、そちらがグール達の縄張りって事ですよ!」


くだらない責任の擦りつけ合いが始まった。

どこかの世界の日本、例えば県境にある河川なんかで身元不明の水死体が発見された場合、互いの県警のどちらが受け持つかで揉めたりする。

僅か1Mでも相手側だったと睨んだなら怒涛の如く責任を押し付ける。

嫌なのだ、要は面倒くさいのだ!

そこには仏となった水死体に憐れみは一切存在しない。


これと同じような事が再同盟交渉という重要事に発生していたのだった。

小さな問題である。

しかし、同盟とは互いに対等を表すが、見方を変えれば妥協もしないという関係でもある。

ましてエルハラン帝国には退くに退けない事情もあった。

この時より半年前にファティマが帝位継承をされたばかりであったから余計であった。

小さな事であっても新女帝の権威が軽んじられてはならない。

なんとしても新女帝ファティマ様の権威を守らねば、絶対に妥協するか!

そんな感じに意気込んでいたから余計であった。

権威に拘った理由としてファティマは帝族ではない傍流家系だったから仕方なかったのである。

年老いた前女帝には子が無く養女を3人貰っていたが、これが最悪だった。


1人は男にしか興味を示さない淫乱体質。

1人は金にしか興味を示さない守銭奴体質。

1人は対人恐怖症気味の引きこもり体質。


どいつもこいつも端にも棒にもかからない奴らばかりだった。

困り果てた前女帝だったが、偶々ご機嫌伺いにやって来た従姉妹が連れていた孫娘ファティマを一目見て養女とし、やがて女帝にしたのだった。

優しい性格だったのだ。

足の悪い従姉妹に健気に付き添い、笑顔を絶やさないファティマ。


『この娘の才幹は分からないが、あの3人に比べたら遥かにマシだ!

しかし女帝は優しいだけでは務まらない、そこが心配だが。

何より傍流家系の出身、家臣や貴族共に侮れないか心配だ。』


そんな前女帝の心配は的中もしたが帰趨に終わった。

帝位を継ぎ女帝になったファティマだったが全く才幹が無かった。

当然ながらカリスマ性なんて厳かなものも無い。

政治的にも軍事的にも混乱をきたす結果となった。

3人よりはマシ、それだけで選ばれた女帝である、当然ながら起こるべくして起こった結果。

このままではクーデターが起こるかもしれない⁉︎

そう思った前女帝だったが、不思議にも国自体は平穏である。

やがて政治的混乱や軍事的混乱も緩やかながら解消されていった。

貴族達のクーデターなんて起こる気配も無い。

出過ぎた真似だと思いつつ視察に出てみて事実を知った。


「守るぞ、女帝ファティマ様を助けるぞ!」


そう口々に号令しながら兵士達がギラつく目で訓練に励んでいた。


「これは終らせた、次の案件だ。

直ぐに解決しろ、ファティマ様を泣かせるな!」


城の役人達が険しい顔をして必死に議論を繰り返していた。


「おい貴公の領内の河川に少数でも良いから治水に従事出来ないか?

あそこを緩やかに出来れば帝都の治水事業も楽になるはずだ。

私も人は用意するから頼む。」


「もう領民達が勝手に始めている。

私も必要物資の手配を終らせたところだ。

だがファティマ様の為にも早く終わらせたい、人を出せるなら願いたい。」


「お主ら私を除け者にするな。

ファティマ様の為に私も人を出す!」


こんな感じで貴族達も議論をし全てが『ファティマ様の為!』その一点で動いていた。


こんなに人を魅了するカリスマ性を有していたとは‥‥‥。


感心した前女帝だったが肝心のファティマは一日中ボーっとしているだけである。

見た感じカリスマ性なんて無い、寧ろ的確な判断や指示も出来ずに慌てファティマ自身が混乱していた。


こんなファティマの何が人を惹きつけるのだ⁉


さっぱり分からなかった前女帝であったが、やがて理由が分かった。


目だった。


そのファティマの目は、いつも濡れた感じ、泣きそうな目に見えるのだ。

だから弱々しく見える。

普通に見れば頼りないが、背が小さく少し童女のようにも見え、おまけにドジばかりするから心を『キュっ!』と掴むところがある、皆の『妹』的存在になっていた。

姿形が並程度だが誰にでも愛想も良いから結果、助けてあげたい、守ってあげたい!と思われていたのだ。

美女でもなかったから、どこかの世界のキャバ嬢のように目の前にボトルがあるのに甘え声で『飲み物頼んで良いですか?』みたいな嘘くさくもなかった。

更には傍流家系の出身だから庶民の生活にも精通していた、いや‥‥‥し過ぎていた。

夜な夜な供も連れずに城を抜け出し、街に通っていた。

酒場で飲み歌い、祭りがあれば領民に混じり参加もしていた。


「あ、ファティマ様だ!こっちで一緒に飲みましょう!」


「ファティマ様、一緒に踊りましょうよ!」


などなど領民にも慕われていた。


これも一つのカリスマ性か。

噂に聞くカルム王国(オービスト大砦攻防戦一年後あたり)の若い女王のような英知もない、イスハラン帝国の女帝スフラのような規律ある厳格さもない。

だがファティマならエルハラン帝国を守っていける、この娘に彼女達のようなカリスマ性は無くとも家臣や貴族、領民達が率先して守ってくれるのだから。

そして前女帝は見守るだけとなった。


そんなファティマの為だからイスハラン帝国との再同盟交渉でも必死になっていたのだ。

だが必死さは交渉を難解にさせた。

そういう時にケイト・テリクは来訪したのだった。

来訪目的は女帝即位の祝いを述べる為である。

テアラリ島には『ご機嫌伺い』なんて観念はないが礼儀にはうるさいのだ。

だから次期族長であっても目の前にいる女帝に『厳か』に祝辞を述べた。

しかし、この頃のテアラリ島は後の『共通騎士アベル・ストークス』の誕生前である。

もし彼がいたなら共通騎士の役目から相応しい祝いの品を用意し祝辞内容まで考えたであろうが、まだ存在していない。

よって『厳か』とは、あくまでテアラリ島の流儀である。

本来ならエスハラン帝国との同盟を取り仕切ってくれたグラーノ・ヴェッキオでも居れば良かったが連絡もせずに来訪したのだ、だから自分達の流儀でやったわけである。


「テアラリ島3国が一つ、テリク族族長エリゾネ・テリクが娘ケイト・テリク参上致しました。

新女帝ファティマ様、まずは誠にめでたい。

心よりお祝い申し上げます。」


ここまでは良かった。

だが同時に異様な感覚が城の帝間を占拠していた。

彼女達が持ち込んだ布に覆われた異様な大きさの箱、何やら叫び声も聞こえ異常な獣臭が漂っているのだ。


「つきましては、祝いの品を。

これはテアラリ島でも最も捕獲が困難で巨大で凶暴、戦士達20人に重傷を負わせた恐ろしく強い奴です。だから美味は間違いなしです。」


勇んでケイトお付きの戦士達が布を取ると檻の中でミノタウロスよりもやや大きく暴れ狂う五本角の牛のような魔獣クイノタウロスが現れた。

これがテアラリ島3国を恐れるイグナイト帝国なら良かっただろう。

顔を曳きつかせてでも喜ぶふりはするだろう。

しかし、ここはエルハラン帝国である。


「‥‥‥なんだこれは?」


居並ぶ重臣達の1人が物凄い目付きで聞いたが、その意図に気付かず自慢げにケイトが続けた。


「どうですか、立派なものでしょう!

20人の戦士達に重傷を与えたほどの逸品、私が戦っても苦戦するでしょうね!」


「立派だと‥‥‥テアラリ島3国は、こんな危険な魔獣を女帝ファティマ様に送るつもりか⁉」


「確かに危険ですけど、でも美味で‥‥‥。」


「ふざけるな!

これを女帝ファティマ様に食えと言うのか⁉

テアラリ島3国は我らが女帝ファティマ様を愚弄する気か?」


「ええ⁉いや‥‥‥。」


ケイトが漸く気が付いた。

テアラリ島では強い魔獣を狩り、祝いの品とするのが定番である。

だが、どうやら相手は怒っている、最高の物を送って祝っているつもりでも彼等からすれば最低行為をされたと感じているのだと。

女帝即位の祝いに来たはずが、相手を侮辱してしまったと気が付いた。


「ふざけているのは、そっちだろうが!

テリク族次期族長ケイト・テリク様が遠路はるばる来てやったのだ。

然もクイノタウロスという強豪魔獣まで苦労して狩ってきたのだ。

どこに文句があるんだ!」


お付きの1人が激怒し剣を抜いた、それに続いて他のお付きも剣を抜いた。

抜かれた以上は抜き返す、エルハラン帝国重臣達や衛兵達も剣を抜いた。


まずい事になってしまった‥‥‥。

ここにいる全員を皆殺しにするのも戦争をして踏み潰すのも簡単だ。

しかし同盟を結ぶ相手国に来て、その国の儀礼行為を無視していたのはこちらだ。

非は完全に私達だ‥‥‥何よりテリク族だけでなくテアラリ島3部族の名に泥を塗ってしまった。

これは私の責任だ‥‥‥。


蒼い顔になった実直な性格のケイトが叫んだ、お付き達にである。


「剣を収めろ、この非は私にある。

礼を失したのは私達の方だ。

この失態は私の死で償わしてもらう。」


お付きの1人から剣を奪いとり喉元に刃を当て掻っ切ろうとした、その時であった。

考えもしない所から声がした。


「誰か出来るだけ大きな桶に水を入れて持ってきてあげて。

喉が渇いているみたいなの。」


声の主はファティマだった、然も暴れ狂うクイノタウロスの檻の直前にいる。

騒ぎでケイトすら気が付かなかったのだ。


「ファティマ様、危ない!

お下がりを!」


「大丈夫だから、早く持ってきてあげて。」


慌てた衛兵の1人が急いで桶に水を汲んできたが制止も聞かず自ら檻の前まで運ぶとクイノタウロスに優しく言った。


「さあ飲みなさい、苦しかったでしょう。」


そう言って差し出すと暴れ狂っていたクイノタウロスが大人しくなりジッとファティマの目を見つめ始めた。


ファティマも涙を浮かべて言った。


「ごめんね、我慢させたね。

さあ安心して飲みなさい。」


するとケイトすら信じられない事が起こった。

暫くすると桶に手を伸ばしクイノタウロスが水を飲み始めたのだ。


「ケイトさん、この子って食べなければテアラリ島3国への儀礼に反するでしょうか?」


「えっ‥‥‥それは‥‥‥。」


「反しないのなら、ありがたく頂戴致します。

可愛いじゃないですか、この子。

ずっとペットが欲しかったんです。

最高の贈り物ですわ、テアラリ島3国の族長殿達には良しなに御伝えください。

ケイトさん、ありがとう。」


「えっ‥‥‥あ!はっ、ありがたき幸せ。」


そして今度は泣きながらクイノタウロスの手の届く位置に近づき語った。


「お前は私の元で暮らしなさい。

もうテアラリ島には帰れないけど、その代わり食事と家の心配はさせません。

それで良いですか?」


手を伸ばせば瞬殺出来る位置にいるファティマの目を見つめ、やがて一声鳴いた。


「モオー!」


「では名前を決めましょうか。

ケイトさん、名付けてあげてくれませんか?」


そう頼まれたケイトが考えたが拒否された。

再び暴れ始めたのだ。

どうやらケイトでは嫌らしい。


「仕方ないですね‥‥‥では私が名付けましょうか。

ハラール‥‥‥ハラールで良いかな?」


「モオー!」


胸を張るかのようにクイノタウロスが鳴いた、どうやら気に入ったらしい。

ちなみにエルハランの言葉で『ハラール』とは良い事を意味し『ハラーム』となれば悪い事を意味する。


この方にテアラリ島3部族の名誉は守られ私は命を救われた。

この恩は必ず返す!

そう誓ったケイト・テリクであった。


この後、一応は同行していたお付き達がハラールの調教役という事でエルハラン帝国に残り、ケイトは帰国する。

外交の難しさと重要性を痛感したケイトの進言によりテラン族だけの騎士だったアベル・ストークスを『共通騎士』にしたのに大きく作用したのだった。

ある意味でテアラリ島3族では大きな改革となり、そのきっかけを作ったのはファティマと云えるのだ。

共通騎士は大きな変化をもたらしてくれた。

考えた事も無かった貿易や為替相場、そして情報である。

その情報の主座を務めるケイトは後に聞く事となった。

難航していたエルハラン帝国とイスハラン帝国の再同盟交渉の行方である。


実に簡単だった。

調教され完全に大人しくなり、更には警護役を気取っているのか片時も傍を離れないハラールを連れたファティマが問題の池を訪れたのだ。

ハラールの存在に怯えるグール達にファティマが優しく語った。


「貴方達の食料は、こちらで家畜の死骸などを用意するから墓地を荒らしちゃ駄目よ。」


墓地を管理する村々から死んだ家畜をエルハラン帝国が買い上げ池の近くまで運び込ませたのだ。

これによりグール達は墓を荒らさなくなり村々も死骸を買って貰えるのだ、両者の懸念は無くなった。

更にはイスハラン帝国でも墓地近くの村々には同じようにして対処し始めた。

グールは太ってしまったが感謝はしているのか他の魔物達から村々を守るようになったのだった。

おかげで周辺の警備の兵士達の苦労と危険が減った。

そして再同盟は締結された。

問題となった池の畔で両女帝が調印式をする。

その時にイスハラン帝国女帝スフラがエルハラン帝国女帝ファティマに言った。


「今回の懸案事項の対応、誠に見事でした。

貴女は聡明な方のようだ。」


その言葉にキョトンとするファティマ。


「私は聡明ではありません。

ドジな女ですが皆が率先して私を助けてくれるのです。

こんな女帝の為に一生懸命に命を掛けて。」


今度はスフラがキョトンとなった、意外な言葉だったからだ。


「それが貴女の力なのでしょうな、羨ましい。

私など臣下には良いように思われていないでしょうから。」


違うと首を振るイスハラン帝国重臣達、厳格だが義理に厚い女帝である。

嫌われるはずはないのだ。


「どうですか私とで良ければ『義姉妹の盃』を交わして頂けませんか?

正反対の貴女と私だ、それも面白いと思うが。」


「是非ともお願いします、イスハランの義姉妹。」


こうして、より強固に同盟された両国であった。

報告を受けたケイト自身も嬉しく思ったのは言うまでもない。


そしてケイトは今、リラから変わり筆頭族長を務めエルハラン帝国の地にいる。

テアラリ島3部族1万を率いる総大将として同盟国エルハラン帝国の危機を救う為にやって来たのだ。

エルハラン帝国、イスハラン帝国では多数の魔獣達がバジリスクのおかげで暴れ大混乱に陥っていたのだ。

すぐに副将の2人であるリラ・テアナとホリー・テランを両脇に連れファティマと面会し話し合った。


「ファティマ殿、我らが同盟国の危機と、今あの時の恩を返す時!

安心して下され、すぐに魔獣共などテアラリ3国で皆殺しにしましょう!」


リラもホリーもケイトがファティマから受けた恩は聞いて知っていたから勇んで頷いたが、言われた本人は違った。


「ケイトさん‥‥‥その恩って?

私、貴女に何かした?」


キョトンとしていた。

ファティマからすればハラールを連れて来てくれたありがたい人としか思っていなかった。


「えっ‥‥‥いやハラールでしたかな、あの時のクイノタウロス‥‥‥。」


「ああ、ハラール!

あの時の事を恩だと思っていてくれたのですか?」


「はい‥‥‥。」


「いえいえ、こちらこそ恩だと思ってましたよ。」


何ともバツの悪い時がケイトを襲う、副将2人が『おいおい話が違うじゃん!』というような目をしているからだ。


「でも、もし恩に思って頂けていたなら‥‥‥お願い出来ますか?

もう一つの私達の懸案を対処して頂ければ幸いです。」


ファティマの懸案、それはローヴェとエスポワール帝国が戦うウルバルト帝国である。

援軍要請は来ていたがエルハラン帝国もイスハラン帝国も、この状況の為に動けないのだ。

それが懸案だった。


「イスハラン帝国から情報が入り敵ウルバルト帝国は総勢40万以上との事。

ですからローヴェとエスポワール帝国を助けて貰えたら。

ローヴェにはデイジー・ヴェッキオもいます。

彼女の父、故グラーノ・ヴェッキオのおかげでイスハラン帝国とも同盟を結び仲良くしています。

その恩には私も義姉妹も報いたいのです。」


「エスポワール帝国はテアラリ3国とも同盟している間柄、我らにとっても好都合ですが本当に宜しいのですか?」


「あちらで負ければ、この事態を対処しても結局は私達も滅ぼされるでしょう。

それに私達もイスハラン帝国も魔獣達になんて負けません!」


「分かりました、期待して頂きたい!」


「宜しくお願いします。

では足の速い者を先行させイスハランの義姉妹にも連絡しておきますから。」


すぐにテアラリ3部族はローヴェ領ゲーネル要塞に向かって走り出した。


途中行く先々で兵士達だけではなく領民までもが鎌や農作業具を武器にして魔獣と戦い、魔物であるグール達までもが村を襲う魔物達と村人達と協力し戦っていた。


しかし女帝の言った『足の速い者』って、この国にいるのか?

我らより速い人間が存在するとは思えないが。

そして二週間後、エルハラン帝国とイスハラン帝国の国境に差し掛かった時に謎が解けた。

国境の検閲所で守兵が言った。


「20日前に到着した使者から伝令を貰ってます。

馬を走らせていますから今頃はイスハランでも行軍に支障はないはずです。

さあ一旦は休息を、食事も用意しております!」


「ありがたい、だが使者殿は?

是非とも礼の一言を。」


「いや‥‥‥もう帰っていきました。

余程ファティマ様が心配だったのでしょう、伝書を渡すと休息も無しに急いで帰っていきましたよ。」


自分達よりも早く走り休息も無しで帰ってしまっただと⁉

是非とも共通騎士にしたいほどの逸材だ。


「それは、どんな御方ですか?」


「御方って‥‥‥。

噂で聞きましたけど貴方達が連れて来たのでしょう?

ハラールを⁉」


あのクイノタウロスだったのか!


食事をし十分な休息が終わり再び走り出す。

途中で嬉しそうな顔をするケイトにリラとホリーが不思議に思い聞いた。


「なんか嬉しそうだな、どうしたんだ?

何か良い事でもあったか?」


「今度はクイノタウロスを共通騎士にしてみようか!」


何を言ってんだ⁉

おかしくなったのかと心配した2人をよそにケイトが楽しそうに呟いた。


「我らでは無理だな。

我らと違った力を持つファティマ殿だから出来るのだ。

『守ってあげたい』と思われる力もあるのだな!」


益々、心配になったリラとホリーだった。


テアラリ島3部族は、ローヴェとエスポワール帝国を救う為、爆走中である。

















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