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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第10部 ウルバルト帝国権力争奪編
153/219

力と速さ、そして洞察力と

その暗闇の先さえ見えない草原の中で向かい合う1人の男と4人の女。

敢えて意識して真顔を保つ男と目の前に仇がいる事で冷静さを保てない4人の女達。


そんな目に反応したのか主である女が頼むように呟いた。


「従兄殿、お気遣いは無用にて、従姉殿とは私1人で戦う。

直接、母を殺した御人だからな。」


主である女が呟くと当然のように9人の纏め役の女が4人と一緒に『従兄殿』と呼ばれた男の前に、平然と当たり前のように立った。


「おいおい、1対5か!?

まあ‥‥お前らが良いなら良いけどな。」


人数は増えても気にしない。

そんな素振りの二刀を抜き構える男の言葉に合わせるように最前に立った女が呟いた。


「オルツィイ、バヤンの2人は負傷中、確実を喫する為に私もボルド様と戦う。

宜しいな!?」


「確実だと!?

俺は良いが、随分とサラーナの強さを信用しているのだな。」


「信用!?違いますね。

これは貴女を気遣っての事です。

ボルド様も過去の失態は取り返したいのでは?

私の父母にまんまと欺かれた失態は取り返したいのではないですか?

父母に言わせればボルド様は案外と楽だったらしいですからね。」


そう嫌味を込めてツォモルリグが言ったが、これは明らかに陽動。

怒らせ冷静さを奪おうとする誘いの言葉だと見え見えであった。


「ツォモルリグ、随分と下手な陽動だな。」


「いえ、やらないよりはマシだと思いまして。」


「だが、さすがツォモルリグだ。

お前のおかげで4人が冷静になれたようだな。」


別にボルドを嵌めるつもりではない、一呼吸を遅らせペルジド、ホルロー、オルツィイ、バヤンの余計な憤りを取り除く為に見せかけたのだった。


「気が付かれましたか。

しかし……もう一度だけ確認したい。

女帝ハタンの意思を確認せずして本当に宜しいのか?」


この再度の質問にはボルド、そしてテムルンでさえ顔を歪ました。

改めて問われると自信が保てないのだ。

陽動の意味で言ったわけではなかったツォモルリグには意外な効果を生み出した結果となった。

姉弟が焦りだしたのだ。


「いや……今まで守って来たのは俺達だから……。

なぁ、そうだよな!?テムルン姉さま?」


「ああ……そうだなぁ……ボルド。」


今ここで聞くか!?

なんて言いたげなテムルンだったが何とか対応すると突然に暗闇の中で声が響いた。

それは攻撃的且つだが仕方ない、そんな感じの口調を醸し出すが、はっきりとしたものだった。


「女帝ハタンの名の下に明言する。

我の次のウルバルト帝国女帝いや皇帝はサラーナだ。

但し、これについては条件を付ける。

帝位継承順位一位サラーナ、その配下ツォモルリグ、ペルジド、ホルロー、オルツィイ、バヤンに命ずる。

我の実姉兄テムルン、ボルドの死を女帝への証明とし我が前に差し出せ。

両人の死が確認できれば、直ぐにでもサラーナにウルバルト帝国女帝の地位を譲る。

これで良いのか、テムルン、ボルド?」


怠そうな顔のリューケと傷付き緊張した様子の雪麗を両脇に引き連れハタンがやってきたが、早くしろ、眠い!そんな感じの表情を浮かべていた。


「それで本当に良いのかハタン?」


突然の妹の来訪に驚きを隠せない姉兄に、更に焦りを生み出す話を吐き出した。


「私は男には興味は無い。

まして抱かれるなど想像しただけで虫唾が走る!

ついでに言うと皇帝の座にも興味はない。

元々サラーナか、その娘に次期皇帝の座を譲るつもりでいたからな。

早いか遅いか、それだけの違いだ。

それに‥‥女帝なんて指名されたからやっていただけだ。

テムルンには殴られるし碌なものじゃない。

もう良いか?眠いから早くしろ!」


あっさりと答え早く結果を出せば良いという顔をしたのだ。

まるで皇帝の座よりも睡眠時間の方が重要だと言いたげな表情だ。


「‥‥という女帝ハタンの意思だ。

だから遠慮なく殺ろうか!」


ボルドが微笑みを浮かべて6人に言ったが、今度は5人が焦り出した。


これでは仇討ちは兎も角も、東南部制圧などで苦労しながら戦い軍功を挙げた意味が無いではないか⁉︎

最初からハタンの中ではサラーナもしくは未来の娘に次期皇帝の座が移行する予定となっていたのだ。

もしかしたら素直に、今直ぐ皇帝の座を譲ってくれ!

なんて言えば直ぐにサラーナに譲っていたかもしれない。


「だが‥‥あんな女でもオヨンは一応は私の母だったからな。

仇討ちはせねばなるまい。

テムルン、ボルド‥‥殺れ。」


どうでも良いが、勝つのは自分の姉兄という自信を持った『殺れ』という命令を下した。

6人は自信に満ちた女帝の命令に気負いを感じたが主であるサラーナは違った。

むしろ、これで良かったとのどこか吹っ切れた顔を浮かべていた。


「従妹殿‥‥いや女帝ハタンよ。

では遠慮なくウルバルト帝国皇帝の座を獲得する事にしようか。

従姉殿、とりあえずは従兄殿と5人の勝負の後で宜しいか?」


笑顔すら浮かべてテムルンに聞いた、彼女も自分が生死を共に戦い抜いた幼馴染には自信があるのだ。


「そうしようか。

だが‥‥現女帝様は早くして貰いたいようだが、これはウルバルト帝国の行方を決める意味を持つ仇討ちだ。

現女帝様には我慢はして頂こう。」


ハタンに正論による嫌味すら言い放ち納得した。


「では始めましょう。

ボルド様、女帝の御慈悲は尊重したい。

早く終わらせましょう。」


ツォモルリグが少しだけ笑顔を浮かべたがボルドは違った。


「ああ、そうしよう。」


そう返事はした途端に目が完全に座り例の顔になっていった。


皇帝の座は要らないか‥‥まぁ俺のやらねばならない事は変わらない。

ハタンを守る、それだけだ。


元はハタンを守る為に脅威となったボルテを殺しウルバルト帝国を繁栄させ築き上げた。

繁栄し大きな力を手に入れれば守れる、そう単純に考えただけの話。

その妹が帝国に用は無いなら、苦労はしたがウルバルト帝国など要らない、サラーナにくれてやっても悔いは無い。

だが、今は妹を危険に晒す者達。

だったら殺す。


ボルドが転生して以来、忠実に実行してきた信義。

その感情が身体を支配した時、あの表情が現れた。


「お前たち‥‥皆殺しだ!」


ニタァ〜と笑い始め叫び始め全身から殺気を放ち始めた。


辺りに漂い始めた殺気に5人も直ぐに反応したが怯えてはいなかった。

彼女達とて戦場を駆け巡り生死の壁を乗り越えてきた者達であり、このような危機など経験済みである。

しかし一様に思った事がある。


ボルド様の表情‥‥サラーナ様そしてゴンザとかいう奴と同じか⁉︎


転生者という存在を知らないから、そんな疑問を持ったのだが、それが一瞬の隙を生んでしまったのだ。


一瞬の隙、ほんの一瞬の隙を突いてボルドが5人の中に侵入したのだ、狙われたのは怪我人2人であった。

左右二刀を器用に振り回しオルツィイ、バヤンの喉を狙い突き殺そうとしたのだ。

だが、これはやはりだが疑問から逸早く脱したツォモルリグがオルツィイを突き飛ばしバヤンに向かったボルドの一刀を受け止め防ぎ、直ぐに4人に指示を出した。


「オルツィイとバヤンは我ら3人の後ろに下がり補佐し隙を突け!

ペルチドとホルローは左右に分かれ一刀だけに集中し攻めたてよ!

私がボルド様の正面に立つ!」


「さすがにツォモルリグだ。

直ぐに反応し更に臨機応変な対応。

もっと言えば俺の正面に立つ勇気‥‥惜しいな。」


「臨機応変‥‥ですか。

ボルド様こそ。

先に弱者を狙い人数を減らし戦いを有利に運ぶ。

多数を相手にした場合の鉄則、中々良いです。

どうですか、今からでも遅くはありません。

サラーナ様に御仕えして頂ければ仇討ちなど、この4人も忘れて差し上げますよ。」


「また陽動か⁉︎

ツォモルリグは、やっぱり下手だな!」


「いえ、やらないよりはマシだと思いまして。」


2人の間で剣がギリギリと唸り声を発した時、左右からペルチドとホルローの薙ぎ払う様な横からの剣撃が襲い掛かった。

当然ながらボルドには後ろに逃げる選択肢しかないのだが、それすら許さないのか2人の真後ろに隠れたオルツィイとバヤンの攻勢が続き防戦一方を強いられた。

更に僅かな隙を見つけ攻勢に出ようとしてもツォモルリグが中央に陣取り機会を潰しに掛られ全く前に出れないのだ。


失敗した‥‥これじゃあゴンザが捕まったのも頷ける。

だが、だったら手順を変えるか!


ツォモルリグが僅かに前に出た瞬間を捉えてバク転の要領で後方に下がりつつ蹴りを放ち右にある牛頭を左側の攻勢を受け持つペルチドに投げつけた。

だがペルチドは直ぐに反応し払い除けたがボルドも着地直後に一旦は右に跳び彼女を襲う仕種を仕掛けるもと途端にステップを踏み次に左へと攻撃対象を変えた、ヘルローへ狙いを変えたと5人が思った時だった。

更に細かくステップを踏み突如として左右を無視するように猛然と一刀のみの攻勢をツォモルリグに仕掛けたのだ。


「お前ら5人の動きは大体分かった。

確かに5人一体とは素晴らしいな。

だが……それなら『頭』を潰せばいい、それだけだ!

ゴンザに見せたのは、やり過ぎたな。

ツォモルリグ、万の軍勢を動かすなら兎も角、これでは少なすぎたな。

お前、見え見えだ!

もう、俺には通じない。」


再びのギシギシと刃を併せた異音の奏でる中での会話。

違いは余裕のボルドと焦りを見せたツォモルリグの表情であった。

左右から攻勢に出ようとする4人、隙を見つけ仕掛けようとするがツォモルリグを器用に盾とし指示させなように激しく派手に討って出る。

自分の事に必死で指示など出せず守り一点に晒されるツォモルリグである。

もし僅かでも隙を晒せばボルドは必ず見つけ出して自分を殺す。

自分だけなら良い、『頭』を失った4人は直ぐに各個攻撃を受けて殺される。

是が非でも堪えねばならない!


必死な思いでボルドに食らいつくが徐々に剣撃の速度を上がり次第に態勢が崩されていった。


「どうしたツォモルリグ?

そろそろ限界か?なら死んで貰うぞ!」


調子に乗ったボルドが剣撃を繰り出す中で、ジッとツォモルリグが手傷を増やしていく。

致命傷にはならないが末端部、手足に傷を増やす中で痛みなど無視しツォモルリグが防御に集中する。

そんなツォモルリグを良いように時には剣で刻み、時は盾とし左右の攻撃を躱す道具とするボルドが剣撃を加速させ同時に血に濡れていく顔も楽しむようにニヤけていった。

だが何故かツォモルリグは防御に徹する中で傷つきながらブツブツと口を動かしていた。


『馬鹿が……勝負は着いたな……。』


戦いを眺めるテムルンが面白く無さそうな顔を浮かべ呟くとハタンの隣りにいたリューケも同時に同様の表情を浮かべた。


2人の表情が苦悶に満ちていく中でボルドの口が更に歪んでいく。

人を斬る、その瞬間と感触が楽しくて仕方ないと表わすように口角が吊り上がっていく中で雪麗がリューケに言った、単に『場面』を観て言っただけだった。


「師リューケよ、これはボルド様の勝ちで間違いなさそうですね。」


そんな雪麗の言葉に当然のようにリューケは返したが正反対だった。


「いや……ボルド様の負けだ。

よく観ておけ、あの戦い方は愚者の戦い方だ。」


愚者……そう言われても目の前では明らかにツォモルリグが傷付き他の4人は手を出せずオロオロとしボルドの苛烈な剣撃が一層に加速していく。

どこをどう見てもボルドが優勢だった。


何故だ?

疑問の表情を浮かべた雪麗にリューケが一言だけ呟いた、その呟きはより疑問を深めさせるものだった。


「悪い癖に飲み込まれた。」


「飲み込まれた?」


リューケはウルバルト帝国に仕官した時にボルドとはハタンの命で戦っているが、その時に判ったものが今出ているのだ。


ボルドが戦いを楽しもうとする傾向が強い性格である事。

圧倒的な自分の力を誇示しようとする性格である事。


リューケと戦った時でも自分には余裕があると見せつけるような態度をとり誇らしく演じていた。

後で聞いたがゴンザの時も同じだったらしい。

あの時は初めてボルドと対面し分からなかったが今なら判る。


圧倒的な力と速さ、それがボルド強さと持ち味。

更に言えば一度観た事も直ぐにものにしてしまう。

自分の二刀剣なんかがそうだ。


二刀剣をボルドに指導するという名目でウルバルト帝国に仕官してはいるが、実際は違った。

3日ほど指導し10日ほど模擬戦闘をしただけだ。

それだけで二刀剣の指導は終ったのだ。


確かに戦いの天才かも知れない。

だが……本質を知らないまま才能だけで観た事を演じた戦い方をしているだけだ。

聞いた話では錬氣(フォース)にしてもそうだ。

最初は使えなかったが見様見真似で10日ほどで出来るようになったと言っていたらしい。


要は器用なのだ。

器用だから直ぐに出来る。

出来る様になり自分の能力を加味しているから強くなる。

強くなるから本質を探らなくても良い。


本質を探らないから努力も修練もしない。

必要としない。


だから思慮深い相手と戦った時に苦労する。

努力や修練が無いから裏打ちされた精神的な土台が無い。

初めは思慮したとしても、その内に自分の生まれ持った戦い方に終始し始める。

思慮深い相手はジッと自分を観察しているとも気が付かずに。


もしボルドとアベルが戦ったなら……。

リューケがそう感じたのは至極当然だった。

片方は常に思慮深く洞察し決して感情に飲み込まれる性格ではないのだから。


だが不思議だ。

ウルバルト帝国の摂政まで務め我慢強い男、思慮深く国を運営していた男が何故、剣を持つと途端に変わる?

どうして性格などに飲み込まれるのだ?


そんな疑問を感じたリューケの前で遂に予想が的中する瞬間がやって来た。

必死に耐えていたツォモルリグが前へ倒れ込んだのだ。


「終わりだツォモルリグ!」


一気に決めようと袈裟懸けに斬り殺そうとした上段まで剣を上げた時だった、懸命に耐えていたツォモルリグが剣を捨て踏み出し間合いを詰めボルドに抱き付いたのだ。

剣を上に掲げた状態で抱き付かれたのである、こうなっては身動き一つ出来なかった。

ツォモルリグから脱しようとしても最後の力を振り絞っているのか全く離さないのだ。


「私を盾代わりにしたのは良かったですが、途端に攻勢が単純になりましたね。

攻勢の順序が判り易くて助かりましたよ。

確かに速さは女帝ハタン並でしたが順序が解れば大したことなどありませんよ。」


そう言われたボルドが怒りから真っ赤な顔になり直ぐに真青な顔になった。

この2人の状態で、次に言うであろうツォモルリグの言葉が予想出来たからだ。


「ペルジド、ホルロー、オルツィイ、バヤン!

私ごと、ボルド様を刺し殺せ!」


その言葉に戸惑う4人に更にツォモルリグの叱咤が続く、それは4人いやサラーナを含めた5人に対しての別れの言葉も含んでいた。


「早くしろ頼む……そうは長く抑えられない。

後は頼んだぞ……サラーナ様を頼む!」


今まで剣撃に耐えていた身体から血が滴る中で必死に叫ぶツォモルリグの姿に応えるように4人が手にある剣を突きに掛かる構えを執る中でボルドが恥も外聞も捨て必死にもがく、全ては妹の為と言うように。


「クソが放せ!まだ俺はハタンを残して死ねん!」


「……貴方は我らに負けたのではない、ボルテ様と4人の母そして私の父母に負けたのだ……。

7人が守ろうとしたゾンモル草原への想いに。」


力の籠った両腕の中でボルドがツォモルリグの顔を観た時、その顔は薄らと笑っていたのだ。

その顔に幼き日に殺した叔母ボルテ、そしてペルジド、ホルロー、オルツィイ、バヤンの母達の顔、そして自分を嵌めたツォモルリグの両親の顔が頭に蘇った。


「そうか……あの時に負けが……俺の死が決定していたか……。」


そう呟くと途端にボルドの力が抜けた。

良心の呵責ではない、怯えでも4人を哀れんだわけでもない。


あの時5人をテムルンに殺させた、全てはハタンの為。

そのハタンの為にゾンモル草原を憂い愛した者達を殺した、これは遂に報いの時が来たのかもしれない。

全ては俺の責、その責を問われる時が来た。

そう思ったのだ。


「ペルジド、ホルロー、オルツィイ、バヤン……すまなかった……母の仇を獲れ。

ツォモルリグ……もう放せ。

俺の負けだ……。」


「ありがたいのですが……もう放す力すら残っていません。

それに私もボルテ様に報告がありますゆえ御一緒願えれば。」


「そうか……美女と同行だ、悪くはないな。」


「嘘を言いますな……。」


「……バレたか。」


だが奇妙な会話を終え覚悟を決めた2人の前で4人から一斉に剣が零れ落ち泣き崩れたのだ。


「出来ません……。

ツォモルリグを殺すなど出来ない。

もういい……我らの恨みなど良い。

ボルド様に勝った、ボルド様は謝罪された、それで良い……もういい。」


泣き崩れた4人に2人が呆然と暫くは理解しがたい時間が過ぎようとした時、サラーナが叫び出した。


「女帝ハタンよ、この仇討ちは引き分け、終りで宜しいな。

ツォモルリグ、ペルジド、ホルロー、オルツィイ、バヤンに命じる。

もし私が従姉殿に負け死んだなら女帝ハタンに忠誠を誓いウルバルト帝国の為に忠進せよ!

勿論だが負けるつもりはない、万が一の命令だ。」


その叫びに5人が慌てふためいたがサラーナの平然とした言葉が続いた。


「私は現在幕僚長だ。

その幕僚長が後顧の憂いを残してはならぬ。

ウルバルト帝国の民達を内乱などに巻き込んではならぬからな。

では始めようか従姉殿!」


「従妹殿。

お気遣いに感謝する。

だが……暫し時間を貰う。

ほんの少しだけだ……。」


テムルンがサラーナと向き合う前にボルドとツォモルリグの所にまで歩き出し、そして到着すると身を屈め右の拳を握り締め思いっ切り振りかぶった。

ボルドの左頬に拳が突き刺さり膠着状態の2人が吹っ飛び別れた。


「実妹といい……実弟といい……出来が悪いと実姉が苦労する!

ボルド、そこで正座でもして反省しながら観ておれ!」


口から血を吐き出すボルドを他所にテムルンが黒椿を抜き放ち既に薙刀を構えるサラーナと対峙した。
























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