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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第9部 ローヴェ大会議編
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閑話 名工ハウル・ブロンソン

「お前はクビだ!」


そんな言葉を名工であり師匠のアッパス・ロムに言われたのは20年前。


腹が立つから工房を無茶苦茶にして出て行ってやった。

同じ兄弟弟子だったビン・アリーが俺に言って来た。


「ハウルよ、もう少し真面目に取り組もう。」


怠いんだよ!


大体さ、俺は転生者だぜ。


普通ならさ、チート的に圧倒するような能力に恵まれて当然じゃない!?


それが転生してみれば何もない、とあるゲームの中で生産職人として、ちっとは名の知れた俺が細々と修行生活をするって耐えられるか?

コントローラーの連打で十分なはずだろう。

修行など出来るはずは無いだろう、する必要すらない。

元はRMTでゲームの生産品を作って稼いだ俺。

この世界でも生きて行けるさ!


と思ったのは、甘かった……。


ムフマンド帝国まで来て鍛冶屋を開いたのは良いが、さっぱりと客が来ない。

いや最初は来た、だが俺の作った剣に文句があったのか戦から帰って来ると散々何かを叫んで帰って行った。

あっさりと折れて、もう少しで死にそうになったそうだ。

知るか、お前が悪いんだ、要は腕が悪いんだ。


そんな感じで生活すら厳しく、半分コソベのような生活を送っていた時だ。

奇妙な10人程のコソベ達と知り合った。


なんか一生懸命に芸や劇をやっていた。

偶々、知り合いになり話してみた。


芸や劇で、この世界を生き抜きたいらしい。

奇特な奴らだ。


「ハウルさんって、この世界でどう生きたいとかありますか?」


目を輝かせ聞いて来たが、正直、そんな質問は俺にとってはキツイ。


「いや……ゲームでさ、生産とかやってたから、そっち方面で生きたいよね!」


それが無意味な答えだと知っていながらも、ゲームという、この世界ではクソの役にも立たない栄光に縋り言ってみた。


だが、彼らの反応は違った。

どうやら、噂には聞いているが一生懸命に生きれば過去の世界の記憶は消えて新たな自分にリセットとかいう現象が未だ彼等には起こっていないらしい。


「ハウルさんは、どんな生産やっていたんですか、ゲームの名前は?」


聞かれた以上仕方が無いから言ってみた。

想像とは違う物凄い反応が起こった。


「俺、ハウルさんの武器とか欲しくて、あのキャラってハウルさんだったんだ!」


変な白い仮面に赤い衣装を着たリーダー格の男が言って来た。

しかし、こいつ……明らかに、あのアニメキャラを意識しているのか!?


それから、豪く俺を褒め称えてくれた。

勿論、ゲームの中の話だが、それでも久しぶりの感覚、然も面と向かって言われた事など無かったから、かなり嬉しい。


だが、そんな彼に頼まれた。

ゲームの中で憧れた俺に装備を作って欲しいそうだ。

聞くと今考えている脚本に登場するキャラの武器を作って欲しいそうだ。


「お願いしますよ、ハウルさん。

あの時欲しかった俺の願いを叶えて下さいよ!」


引き受けてしまった……。


さて、どうしたものか……。


一応、希望は聞いた。

兎に角、大きく派手、そして硬い武器が欲しいらしい。


派手は何とかなるにしても硬いが問題だった。

どうすれば良いか!?


悩み続けていると近くで砦の拡張工事が始まったと聞く。

生活の為、アルバイト感覚で働いてみた。


すると思いがけない物を発見した。


土台の下地を強化する為に打ち込む杭が置いてあった。

刺さりやすいように十字を模った杭、触ってみると結構な硬さだ。


夜中に盗みに行った……かなり重かった。

それから適当に買って来た革や同じく現場に落ちていた鉄板をくっ付けて、それらしくすると中々に形良くなった。

早速、渡すと喜んでくれた。


「ハウルさん、この剣なんて名前ですか?」


名前なんて考えていなかった。

仕方なく過去の世界で読んでいた漫画の剣の名前を捩った。


「タイガー嬲殺し!」


歓声が起こり気に入って貰えたようだ。


それからも彼は俺の作品を気に入ったのか次々と注文して来た。

主役の装備や相棒の女の鞭、助けに来てくれる助っ人の装備など色々だ。


仕方ないから再び夜中に工事現場へ行って盗んだ。

ちなみに鞭は巨石を引っ張るのに使うワイヤーだ、これも適当に買って来た革を巻いて作った。

すごく喜んでくれた。


おかげで俺は劇団ニートの小道具制作整備係として頼まれて行動を供にしている、気が付けば過去の記憶も消えていた。

それなりに真面目に生きたという事か。


そして劇団ニートの公演の為にローヴェのライトタウンに来た時に思い出した。

この近くのポテル山脈を越えた所にあるオービスト大砦に兄弟弟子のビン・アリーが店をやっている事を。

久しぶりに彼に会いたくなった。

レッドコメットに頼み休暇を貰って、今俺はビン・アリーの店で酒を飲んでいる。


「少しは真面目に生きているようだな、ハウル!」


「ああ、あの時よりも少しは真面目に生きてるよ!」


「そういやエスポワール帝国の女帝や重臣達もライトタウンで会議があるとからしくて行ったけどハウルとは逆になったな。」


「そうか、今俺がいる劇団ニートの公演もあるから女帝様や重臣様達にも是非見て欲しいものだな。」


やはり友と飲む酒は美味い。






第9部 ローヴェ大会議編 完。

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