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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第9部 ローヴェ大会議編
140/219

公演



それは悪魔の言葉。


それは突然というべきか、忘れていたというはべきか。

俺の前に突如として災いがやってきた。

俺だけではない、他2人にもだ。


「アベル、いやマスク・オブ・ニート。

時間が無くて苦労はしたけど明日の舞台の準備は整ったよ。

君達は心配しなくても良いよ。

団員達が合わせて演技するから、その辺は任せてくれ!」


何が任せてくれだ!


一応だがテアラリ島3部族とバイエモ島3部族の間で1000年の時を経て友好がもたらされたと思ったら、すっかり忘れていた話を、さも当然というようにディン・ツイハが持ってきたのだ。


「劇団員達は脚本さえ観れば勝手に判断してやってくれるから3人は大船に乗った気で!」


何が大船だ⁉︎結局出演するのか⁉︎

演技なんて出来ないぞ!


「大丈夫だ!」


更なる笑顔になりディン、いやレッドコメットが余裕だ!という態度になるのを観て俺は更なる焦りを感じる。


兎に角だが出演する以上は仕方なくミザリーとクオンを集め相談する事にした。


そして俺とクオンはアルベルタとヨハンナが大食いで戦ったゴチャニーニ・パスタが名物の店にいるのだが待ち合わせの時間になってもミザリーいやレディ・ヘルスが来ない。


「兄貴‥‥もしかしてミザリー姉さん逃げたんじゃないのか‥‥⁉︎」


いや間違いなく逃げやがった。


仕方なくクオンに席の確保を頼みミザリーを探しに行く事にした。

いる所は大体だが見当は付いている。


ライトタウンのメインストリート。

テロを警戒し数多くのローヴェ兵が厳戒態勢を執っている。

そんな1人に聞いてみた。


「すみません、ミザリー・グットリッジはどこですか?」


少し厳めしい顔をされたが直ぐに俺が同盟国エスポワール帝国の人間だと気が付いたのか、ここから先の警備本部テントにいると教えてくれた。


「しかし朝から忙しそうで誰もテントに入れるな!なんて厳命も出ていますが。」


俺が来るのを警戒してやがるんだ。


早速、向かうと多数の警備兵達がテントの周りで厳戒態勢を執っている。

まるで俺からミザリーを守るように・・・・・。

行きたくないから適当な嘘を言って警備させているのだ、きっと。


仕方が無い、やるか。


「すみません、ミザリー・グットリッジに会いたいのですが。」


「申し訳ない、只今ミザリー様は誰とも御会いできません。」


「そうですか、仕方ないなあ。

いや、さっきね、あの痴女みたいな恰好の女がウロウロしてたから報告をと思ったのですけど。」


「あの痴女ですか?」


「ええ、ほらテアラリ島3部族とバイエモ島3部族が鉢合わせになった時に現れた、あの痴女ですよ。」


「ああ、あの鞭を振るってたアイツですか!?」


「ええ、何やら鞭を持って騒動でも起こそうとしているんじゃないですか。」


こんな事を大声で話してやるとテントの中で影がソワソワと動いているのがボンヤリと見えた。


「あの痴女は証拠にもなく出没しやがったのか、不届きな。

しかし良い身体してたなあ、尻なんかキュとしてプリンって感じで!それから乳も程良い大きさで!」


「でしたよね~。」


その時だ、真っ赤な顔のミザリーがテントから飛び出してきた。


「お前!卑猥な話なんてしてるんじゃねえぞ!

さっさと、その痴女とかいうのを捕まえに行けよ!

ほら!お前も!お前も!お前も!もう全員で行けよ!早く行けよ!」


凄い剣幕で捲し立てるミザリーにビビったのか大慌てでテントを固めていた警備兵達が駆け足で走っていき、そして誰もいなくなった。


「じゃあ行こうか、レディ・ヘルス。」


「はい・・・・マスク・オブ・ニート。」


それから10分後、俺達は無事にエムマンと合流出来た。


まずは劇団ニートの演技指導とかあるかもしれないと思い腹ごしらえする事にした。


「俺の奢りだ、食べてくれ!」


奢りといってもパスタである、安いものだ。


クオンは諦めたのかヤケなのか食べ始めたがミザリーはパスタの1本も咽喉が通らない様子だ。


「やっぱり、あの格好するんですかね?」


分かっているのに聞いて来るミザリーに一言だけで返す。


「勿論!」


余計に咽喉に通らなくなったみたいで結局クオンが食べた。


それから劇団ニートのテント小屋に行ったのだが副団長の一言で帰る事になった。


「君達に演技なんて必要ないよ、ただ頑張ってくれれば。

まあ準備もあるから公演時間の一時間前には来てくれ。」


それだけで終わった。


しかし、帰ろうとテント小屋を後にした時だ。


バイエモ島3部族の20人の戦士達が何やら馬鹿デカい荷車を押してやって来た。


気になったので隠れて聞く事にした。


「御依頼の物、運んできました。」


「ああ団長から聞いていますよ、バイエモ島さん、こっちの方に置いて下さい。

それより明日の公演まで警備はして頂けると聞いたのですが?」


「はい、レッドコメット様とオーサ様より聞いております、私達で見張りますのでご安心を!」


何を警備だ?

何が入っているんだ?


そんな疑問が渦巻く中を今度はテアラリ島3部族の戦士20人が同じように馬鹿デカい荷車を押してやって来た。


「御依頼の物、運んできました。」


「ああ団長から聞いていますよ、じゃあテアラリ島さんは、あっちの方に置いて下さい。

それより明日の公演まで警備はして頂けると聞いたのですが?」


「はい、レッドコメット様とリラ様より聞いております、私達で見張りますのでご安心を!」


全く同じように話している。


それでも族長達が和解したとは云え、戦士達はどうなのだ?

鉢合わせになったら戦いが始めるのではないのか?


不安になり暫らく眺める事にした。


元テアラリ島3部族共通騎士だったから気になるのかミザリーも注視している。


テアラリ島3部族の1人とバイエモ島3部族1人、恐らくリーダーを務めているのだろうか、代表するように向かい合い叫び始めた。

テアラリ島の方は観た事がある、確かテアナ族の副官の1人だ。


「やあやあ、我こそはテアラリ島3部族のテアナ族族長リラ・テアナ様が副官を務めるアリー・ランドンである。」


「やあやあ、我こそはバイエモ島3部族のバエク族族長オーサ・バエク様が副官を務めるハル・エンゼルである。」


そして荷車に載せていたのか大きなバックを取り出し歩き出し向かい合った。

睨み合う2人。

隠れて見ている俺達にも緊張が走る。


「これはゴウド殿が丹精込めて作ったテアラリ島伝統の菓子だ、食べてくれ。」


「これはダカロ殿が丹精込めて作ったバイエモ島伝統の菓子だ、食べてくれ。」


ただの御菓子交換だった・・・・。


戦士達とは云え、やはり女の子達だからワイワイキャアキャアと喜びながら食べている。


まあ平和なのだが両部族総勢40人が守るものとは何だ?


「兄貴、俺の予想だけど、あれは絶対にやばいと思うぞ。

俺達が演技をしなくて良いというのと、あれは絶対に関係があるぞ!」


演技をしなくても良いというのと関係があるかのは分からないが、ヤバいものには間違いないだろう。

でなかったら戦士40人が警護なんてありえない。


「調べた方が良いんじゃないの?」


クオンの助言を採用し3人で、まずは劇団ニートのテントに戻り副団長に聞いてみる。

しかし、内緒だと言われた。


「団長から3人には内緒にしろと言われている。

分かると面白く無くなるからだそうだ!」


絶対に教えない、そんな態度に諦めて何故か獣臭い荷車を守る両部族の副官に聞いてみたが当然な言葉を言われた。


「誰にも言うなとの厳命が出ています。

ですがアベルさん達も楽しみにしていて下さい。

マスク・オブ・ニート達の活躍を!」


そりゃそうだ。

マスク・オブ・ニート達が俺達だって知らないのだから。


だがアリーが‥‥‥。


「ところで‥‥‥お前、どこかで‥‥‥あ!お前はミザリー・グッドリッジ⁉︎」


忘れてた‥‥ミザリーもレディ・ヘルスの格好の方が気になって自分がテアラリ島では犯罪者だというのを忘れていた。


だが‥‥‥。


「んな訳ないか!

しっかりとアベルさんが殺したから生きてるはずないか!

しかし、よく似てるなぁ。

あの時、確かに殺しましたよね?」


一瞬、焦ったがギリギリでバレなかったけど。

この状況では仕方ない‥‥‥。


「勿論殺したさ!確実にブスっと抉ってやったからな!

よく似てるだろ、そのはずさ!

俺もライトタウンで会った時は驚いたよ、なんせミザリー・グッドリッジとは双子だそうだ!」


「え⁉︎、本当ですか?」


「ああ、名前もミザリーじゃなくて・・・・リザリー・グッドリッジって名前なんだ。

なぁリザリー!」


リザリー、そう呼ばれたミザリーも戸惑いながらも頷く。


「そうか双子なのか!

でも確かに趣味の悪い帽子は被っていないからミザリーではないな!」


「趣味の悪い帽子?」


「ほらミザリーがいつも被ってた帽子ですよ。

あれミザリーが共通騎士で生きた頃、皆んな陰で話してたんですよ。

センス最悪って!

でもリザリーさんは、あんな最悪なの被ってないからミザリーとは双子でもセンスは良いみたいですね!

どっちが姉か妹か知らないけど似ないで良かったですね、あれは趣味悪いの極致でしたよ。」


いつも被ってた帽子‥‥‥ゴブリンの国のキキにあげた帽子か⁉︎

ゴブリンのキキでさえ最悪だって言っていたような・・・・・。


ミザリーが真っ赤になり複雑な顔をする中で俺達は逃げるように場を離れるしかなかった、長く居れば確実にミザリー・グッドリッジだってバレる。


「ライトタウンにテアラリ島3部族がいる間と、デイジーさんと一緒にテアラリ島に行く時、いやもうこれからはリザリー・グッドリッジだからな。

分かったなリザリー!

でも良かったじゃないかリザリー、センスは双子のミザリーよりも良いみたいだ。

それから・・・・あの帽子は絶対に買って被るなよ!」


そう俺が言った途端にリザリーが半泣きな顔した。


こいつ既に買って用意してやがったんだ・・・・今日は偶々被っていなかっただけだ。


「後で俺が別の帽子を見繕って買ってやる!

ミザリーよりセンスの良くて似合うのをだ!

それで納得しろリザリー!」


半ばヤケクソ状態でリザリーが頷いた、しかし今日は出費を迫られる日だ・・・・。


それからディンから無理やりでも聞いてやろうかと思ったが止めた。

副団長が喋らない以上はディンも喋らないだろう。


「兄貴よ、出たとこ勝負でいこう。

もう深く考えるのは辞めよう。」


クオンが言うが、こいつが『出たとこ勝負』なんて言うと碌な事はない。

過去に実証済である。

しかし確かに、もう諦める他は無さそうだ。


「仕方ない、明日がどうなるか分からないが注意だけはしよう。」


そしてミザリに似合う最高の帽子を買い解散し不安を抱えたまま1日が瞬く間に過ぎ去った。


溜息を付きながらマスク・オブ・ニートの衣裳を装備し出番が来るまで舞台袖に待機する。


最初は劇団員の女の子がフリフリの衣裳で歌を歌い観客達を楽しませる。

しかし何だ?

俺達は転生者だからか、どこかで聞いた様な気がする歌だ。


『渚の〇〇〇〇ーで待ってて〇〇〇〇○の・・・・・Ⅰ○○○○ SO Ⅰ○○○○・・・・。』


実に甘ったるい歌だ。


だが観客達は熱狂して興奮状態だ。


それからも大道芸やマジックなどどこかで見たようなものを実演し更に興奮の渦が大きくなった。


そして最後に俺達が出演する演劇が始まった。

しかし、これも初めの出だしは何処かで観たような内容だ。


何やら勇者の血を引く男の子を殺そうと魔物達が襲ってきて彼を助ける為に幼馴染の女の子が魔法で彼に変化し身代わりになる。

それから男の子の勇者としての旅が始まり仲間達と苦労しながらスペシャルな武器や道具を手に入れて魔王が住む城へと向かい戦うといった内容だ。


「さあ魔王、勝負だ!

人々の平和の為に倒す!」


「小癪な勇者、死ね!」


仲間達と戦い、魔王を追い詰め、あと一歩となった時だ。

魔王が叫び始めた。


「忌々しい勇者め、我が最大最強魔法を見せてやる!

地獄の魔獣達召喚、我が剣となり勇者を倒せ!」


「ならば、こちらも聖なる戦士達を召喚するまでだ!

さあ来てくれ!マスク・オブ・ニート!」


何やら舞台に煙が充満し俺達は舞台袖で一緒に観ていた副団長に背中を押され舞台に出たのだが・・・・・。


煙が晴れた瞬間に目を疑う結果が待っていた。


目の前には、かなりデカいミノタウロスと豚に似た見た事がない魔獣がいた。

こいつらか、あの両部族の荷車に積まれていたのは!?


「おいディン!

これは?」


「さあマスク・オブ・ニートそして仲間達、正義の力を見せてやるんだ!」


無茶苦茶だ・・・・こんなの戦えってか!?

テアラリ島3部族の20人とバイエモ島3部族の20人にしっかりと守られたディンと副団長が俺達に向かって親指をニヤッとしながら立てた。


仕方ない、やるしかないか!


そう覚悟を決め俺達が戦おうとした時、予想外の事が起こった。


俺達に向って来ずミノタウロスともう一匹が戦いを始めたのだ。


「あれ・・・・予想外だな。

予定だと3人に襲いかかる筈だったんだが。

これじゃあ演劇のタイトルが『怪獣大戦争』になっちゃうぞ・・・・・。」


「そうですね、でも団長。

これはこれで面白いかも。」


「だな、確かに面白い。」


少し楽しそうな顔をしてディンと副団長が話しているが、このままなら2匹の魔獣が舞台から飛び出たら大惨事だ。


「おい舞台がどうのこうのより、こいつらを何とかした方が!?」


俺の心配をよそに2人は、また親指を立てて来た。


「大丈夫です!

いざとなったら我等で抑えますから、遠慮なくぶち殺しちゃって下さい。

でもグチャグチャにしないで下さいよ、そいつらは今夜予定のテアラリ島・バイエモ島友好記念パーティーのメイン料理になる予定ですから!」


両部族の戦士達が嬉しそうにディンと副団長に続いて親指を立てた、早く食いたい!そんな願望丸出しだ。

それに恐らくだが、両部族とも、こいつらを本当は料理バトルのメイン食材にしようとしてたんじゃないのか!?


しかしミノタウロスは分かるが、もう一匹は何だ?見た事がない。

それにミノタウロスと互角に戦っている。

結構な強さだ。


「そいつはネグロゾーンです。

バイエモ島にいるんですけど、肉の質は脂身も多くて最高なんです!

パーティーにはマスク・オブ・ニートさんも招待するので楽しみにして下さい!

ただ毒は吐くので注意を!」


ハル・エンゼルが笑いながら親指を立てた・・・・毒だと。


「仕方ない、やるぞ!

レディ・ヘルスとエムマンはミノタウロスを殺れ!

俺はネグロゾーンとかいうのを殺る!」


こうして俺達主演の演劇が始まった。




















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