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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第9部 ローヴェ大会議編
134/219

理由

ここはエスポワール帝国宿営地となった、ローヴェのとある権力者であり商人の屋敷であり、かなり広い。

だが本来の屋敷の主人である商人は、この状況の危険性を察知したのか早々に逃げ出し代わりにスノー・ロ-ゼオとデイジー・ヴェッキオがエスポワール帝国女帝アルベルタに協力の申し出の為に詰めている状況だ。


更に、ここにはテアラリ島3部族の族長達とバイエモ島3部族の族長達そして各6人の妹達、バイエモ3部族共有騎士フェリス・リードとその母ナタシャー・リード、テアラリ島3部族に同行していたゲイシーとラウラの父方の姉であるナザニン・ロム、グレーデン王国からバイエモ島に渡り外交に励んだラシムハもいた。

そして2人そしてマヤータ族族長アマンダとその娘ディーナがいる。

勿論だが俺とミザリーそしてクオンもいるのだが未だ俺とミザリーはマスク・オブ・ニートとレディ・ヘルスのままである。

はっきり言えば、かなり厄介な展開としか言いようがない。


「御迷惑をお掛けしました、ごめんなさい・・・・・・。」


あの両部族を相手に暴れ狂ったディーナが母アマンダがいるせいなのか明らかに渋々とした顔と態度で両部族の族長達に頭を下げ土下座した。


最初は厳めしい顔をした6人の族長達だったがアマンダが再び頭を深々と下げると慌てて頭を上げて貰うという展開に笑いそうになった。

年長者を敬う事には煩い部族達なのだ。


「私の傷の方は日常茶飯事の事です。お気になさらずに。」


こういう空気は直ぐに察知出来るのかフェリス・リードが率先して場を和ませる。


しかし、それでは申し訳ないと思ったのかアマンダがディーナを立たせ、そっとフェリスが折られた脇腹と同じ位置に、そっと手を当てた瞬間に優しく蒼く光った。


「ディーナ‥‥‥己の身体で落とし前を付けよ。」


そう言った途端に顔を恐怖に痙攣らせたディーナがボキッ!という音と共に吹っ飛んだ。


「ガバァ!」


そんな呻き声と血を吐いて苦しみ悶えている‥‥‥。


「フェリス・リード様、これで御容赦願いたい。」


更に頭を下げ詫びを入れるアマンダに真っ青な顔をしフェリスが頷く。


何をしたんだ?

フォースか?

俺を含め皆が同様に焦りと疑問に支配された時、クオンだけはマヤータ族なのか焦った顔を見せずにアマンダに言った。


「族長‥‥‥ディーナ様も反省しております。

許してあげて下さい。

それから屋敷内で発勁を使うのは、どうかと‥‥‥。」


「そうですね、クオンの言う通りです。失礼しました。」


発勁?なんだ、それは?

そんな疑問も感じたが今は兎に角、マヤータ族に伝わる御伽噺から両部族の親善改善を目指さないと!


だが俺とミザリーは現在マスク・オブ・ニートとレディ・ヘルスである。

あの後に、あの場にいた関係者という事で無理矢理連れて来られたのだ。


この状況から切り出そうかと思った時、察してくれたクオンがアマンダに問い掛けてくれた。


だがアマンダは話すには話してくれたが3つの部族が元は同じ部族というクオンから聞いた内容と大差のない御伽噺しか話さない。


「他に何か伝承されたような物とか話とかないですか?」


クオンが、そう聞くと質問には答えず頼み事を言ってきたのだ。


「願いたき事が。

私達マヤータ族もクオンの手紙にあった料理バトルに参加させて貰えないでしょうか?食材を妹達がワイバーンに無理させ空輸しております。

是非とも参加の許可を得たい。」


これは直ぐにスノーによって許可を得たのだが質問には答えなかった。

ただ一言だけ。


「私達の料理を食べれば分かります。」


何を意味して言っているのか分からないがアマンダに任せる事にした。

彼女なりの考えがあるのだろう。


そんな間にも両部族の族長達がアマンダの口から出た料理バトルを題に言い合いを始めた。


「まぁ増えたところで我々バイエモ島の勝ちだがなぁ!

何しろ食材には取って置きを用意して更に試行錯誤を重ねた絶品料理だ!」


「ふん、それはこちらも同じ!

各国の王や帝が美味いと言うのはテアラリ島に決定している!」


1000年という歳月と御伽噺そして祖先の為とはいえ、こうも蟠りを発生させるのかと閉口しかない。


その内に、やはりだが肝心の両部族の武闘祭と闘技会の優勝チームの話に及び手こそ出さないが殺気立って話をしている。


今回はテアラリ島3部族の武闘祭で優勝したのはテリク族の17歳の戦士らしく彼女とそのパートナーがバイエモ島3部族の闘技会優勝チームの戦士達と戦うらしいのだがレイシアの発言から更に殺気立つ種が撒かれたのだ。


「こちらは『テアラリ島3部族最強』と呼ばれたソニア・テリクが付き切りで指導しているんだ、負ける道理なんてないけどね!」


敬愛する叔母ソニアの自慢をしたかったのであろうが、これが不味かった。


「何が『テアラリ島3部族最強』だ。

こちらは『バイエモ島3部族随一』と呼ばれるシレーヌ伯母が付き切りで指導している。こちらが負けるなどありえるか!」


バイエモ島3部族の内が1つバエク族のティーナ・バエクが、やはり伯母シレーヌ・バエクを敬愛しているのか直ぐに言い返した。


「なんだと!ぶっ殺すぞ!」


伯母ソニアを馬鹿にされたと感じたのかレイシアがパリーイング・ダガーを抜きティーナに向けると彼女も手斧2本を抜き応戦態勢をみせた。


2人に合わせるように残りの妹達も武器を抜き族長達も武器を抜く。

中でもテアラリ島3部族の中では一番の常識人なケイトが一番前に出て真っ赤な顔をするのには驚き以外ない。


「両部族の方々、落ち着かれよ!

ここには争いではなく平和的に優劣を見極める為に来られたはず!」


両部族の間に億せる事なくメリッサが立ち騒ぎは一時的には収まりをみせたが、こんなので大丈夫だろうか⁉︎

そんな不安が俺の中に渦巻いた。


だが、さすがにエスポワール帝国女帝アルベルタやスノーとデイジーがいる状況では失礼にあたると考えたのかケイトが俺達に話題を変えた。


「ところでマスク・オブ・ニート殿とレディ・ヘルス殿。」


俺は兎も角、テアラリ島3部族に字を残しているミザリーに緊張が走った。


「貴方達は中々の武勇の持ち主とお見受けしたが、どこかに仕官されておいでか?

もし宜しければだがテアラリ島3部族に仕官して頂きたい!

現在、理由があり元いた共通騎士達が去った状況でして代わりの者を探していた次第ですが、貴方達なら申し分ない。

是非お願い出来ないか?」


俺達の正体を知って揶揄いの意味で言っているのかと思ったが、その目は完全に中身に気付いていない。

共通騎士だった俺達に共通騎士への誘いである。


正体に気付いているラウラ達が俺に気を遣い話題を逸らそうとしたが姉達に一喝され黙る他はない展開になってしまった‥‥‥。


そんな時だ!

助け舟が出た。


「この人達は劇団ニートを守護する者達。

我らエスポワール帝国も誘いを掛けましたが断わられ諦めた次第にございます。」


そうシェリーが色々と説明してくれたが、思いもよらなぬ質問に俺達は晒された。


「そうか、そんな事情があるなら諦めねばならないな。

で‥‥‥何という国の騎士だったのですか?」


「いや‥‥‥滅びた王国でして‥‥‥。」


「だから何という名前の滅びた王国なのですか?」


そんな国の名前の設定までディンから聞いていないぞ⁉︎

どうすりゃいいんだ⁉︎


聞いてきたケイトを筆頭に、その場にいる者達の視線がマスク・オブ・ニートの俺に突き刺さった‥‥。


「あの‥‥その‥‥ど‥‥ドラ‥‥‥ドラグーン王国です。」


その場にいる誰もが疑問符を着けた顔をした‥‥‥。

当たり前だ‥‥‥今、この瞬間に俺が考えた名前だ。


「なんだって!

ドラグーン王国って、あの恐れられた龍の末裔達の王国ですか?」


疑いの視線が大半の中で何故か1人だけ驚きの声を上げる者がいる。

ラシムハだった。


「ラシムハ殿、そのドラグーンなる王国を御存知なのですか?」


バイエモ島3部族のバイン族族長サーガ・バインが礼義正しく親しげにラシムハに聞いた。

どうやらバイエモ島を訪問した折に互いに親しくなったのかラシムハも笑顔で皆に伝えるように返事した。


「ムフマンド国の更に東、西方か東方どちらに属するのか、はっきりしない位置にベルンという小国が存在するのは御存知の方々もおられると思います。

ドラグーン王国は、そのベルンの北に過去に存在し龍の末裔の国と呼ばれた王国にございます。

私も、その位の知識しかありませんが。

ただ恐ろしいほどの戦闘力を秘めた龍騎士達がいたと‥‥‥マスク・オブ・ニートさんとレディ・ヘルスさんは、その龍騎士なのですか?」


そんな国あったのか・・・・・だが、この場合、いえ違います!とは答えられそうにない・・・・・・。


「はい、そうです。」


としか答えられない・・・・・。


だがラシムハが皆に気付かれないように舌を出した。


こいつ、マスク・オブ・ニートが俺だと気付いてやがる・・・・・。


しかしだ西方と認知されてはいるが不確定なムフマンド国の更に東のベルン、その更に北に存在したらしい『ドラグーン王国』。

そんな曖昧さがラシムハの説明に、ある意味説得力を持たせたのか皆が納得した。

いや2人ほど納得どころか一瞬だけ疑った目になった者達いる。

ムフマンド国に所属するアマンダと未だ痛みにのたうち回るディーナであったが、それも主であるアイヤンガーの実妹ラシムハが言ってるのだから逆らうはずなどはせず、直ぐに頷いてくれたのだが。


「ラシムハ様の言う通りだ!良く聞け、ドラグーン王国はベルンの北にあったのだ!」


のたうち回りながらもディーナがラシムハの言葉に重みをもたせようとしたのだろうが、逆に軽くなり再び皆の疑問の視線が俺に向いた時、俺もまた不思議に思った。


どうしてラシムハにディーナは『様』など敬称を付けたのだ。

いや、主筋だから当然なのだが自然さが無いというか、ラシムハを持ち上げる為にわざわざ着けた!そんな感じだ。

それに両部族に喧嘩を売りマヤータ族に取り込もうとした彼女が他人に服従しているのもおかしい。

そういう剛毅さと野望があるならアイヤンガーとラクタシャーを倒して実権を奪うとか考えなかったのか?

そんな疑問が湧いた。


そんな俺の疑問はラシムハ本人に聞かれる事になった。


「ディーナさん、騒ぎを起こしバイエモ島3部族とテアラリ島3部族に喧嘩を売ったほどの貴女が私に『様』付けなんてしおらしいですね。」


「ラシムハ様、当然でございます。

それから私はアイヤンガー様の忠実なる臣、ラシムハ様も私に『さん』など遠慮染みた真似はお辞め下さい!ディーナと御呼び下さい!」


異常なほど態度が一転し両部族の族長達には渋々だったのにラシムハには愛想笑いまで浮かべ低身低頭である。


「ではディーナと呼びますが・・・・・・どうして両部族に喧嘩を売ったのか答えなさい!」


そうだ、ここライトタウンに来て過去の蟠りを無くし仲直りさせる目的もクオンからの手紙で知っていたはずだろうに、どうして両部族に喧嘩を売り取り込もうとしたのだ?あんな危険な真似までして。


そう聞かれたディーナが胸を張って答え出したが、全く浅はかな答えで全く反省していないのだ。


「それはアイヤンガー様の為にございます!」


「兄の?」


「はい、こいつらを配下に収めてムフマンド国に連れて行きアイヤンガー様のムフマンド国統一の先兵に使ってやろうと思っておりました!

今からでもラシムハ様の許可さえ頂けるのなら直ぐにでも全員ブチ倒してアイヤンガー様とラシムハ様の配下に収めてごらんにいれます!」


これにはラシムハも厭きれたが直ぐに怒ってる、そんな体裁を整え怒鳴り出したのだ。


「ディーナ、それは我が兄アイヤンガーの意ですか?」


「いえ・・・・アイヤンガー様は何も・・・・・・」


「愚か者!

我が兄アイヤンガーの命でもなく勝手にやったと申すのか!?

テアラリ島3部族とバイエモ島3部族は私の恩人であり実兄アイヤンガーの剣術の師アベル・ストークスと昵懇の方々と知ってやったと申すのか!?」


「いえ・・・・その・・・・・アイヤンガー様の為に・・・・・。」


「そのディーナの行為が兄アイヤンガーの顔に泥を塗ったのではないか!

どうするつもりだ?」


「アイヤンガー様の為に・・・・・・。」


ラシムハの作った怒りに晒されたディーナが真青な顔になり涙を浮かべガタガタと震えだしたのだ。

とても両部族の間に陣取り喧嘩を売り族長達を『獣化』させるまで追い込んだ同一人物とは思えない。


「ラシムハ様、許してやって下さい。

ディーナ様も十分に反省された故に。」


クオンまでアマンダと一緒に慌ててラシムハに土下座をすると彼女が自分にではなく両部族の方々にするべきだろうと言い始めたのだ。


急いで両部族の族長達に土下座をしたディーナを見て思った。


こいつ、もしかしてアイヤンガーに何かしらの感情を抱えているのか?


「おい小娘、お前そのアイヤンガーというラシムハ殿の兄に惚れているのか?」


バイエモ島3部族バモナ族族長カイヤ・バモナがニヤつきながら聞くがディーナは何も言わずして答えた。

顔が真っ赤に変化したのだ。


それからラシムハに問い出たされ理由が明らかになった。


神聖ヤマト皇国での修行から帰って来ると故郷はムフマンド国第一王子サルマンに壊滅されていたが、アイヤンガーによりマヤータ族は保護された事実を知った。

直ぐに新たな居留地となったラクタシャーの領地に向かい再会し母アマンダに連れられアイヤンガーに礼を兼ね彼に会ったが優しく頷き声を掛けてくれた。

その姿は自分が今まで出会った事のない程の優し気且つ高貴な雰囲気だったがアイヤンガーは新開拓となったマヤータ族の居留地まで来ると身分を感じさせず部族1人1人を労い気に掛けてくれたのだ。

そんなアイヤンガーに恋心を抱いたのは良いが、聞けば既に彼には婚約者、心に秘めた女性がいたのだ。

名をナザニン・ロム。

あの名工アッパス・ロムの孫娘でアイヤンガーの剣術の最初の師の娘である。

身分もさることながら状況的に考えても、とてもアイヤンガーの心を射止めるには勝てる相手ではなさそうだ。

どうすれば婚約者ナザニン・ロムに勝てるのか?

そんな事を寝ても醒めても考えていた時にクオンから手紙が来て、この状況を知り両部族を取り込みアイヤンガーの為にムフマンド国統一に貢献し注目を集めよう!

単純な乙女嗜好の考えから全てはナザニン・ロムに勝つ為に両部族に喧嘩を売ったのだった。

それが理由だったのだ。


確かにアイヤンガーなら聡明だからディーナみたいな単純嗜好で解り易いタイプにはモテるかもしれない。

そして、その本人ナザニンはテアラリ島3部族の族長達と妹達の注目の的になり焦り倒している。


「あの・・・・・アイヤンガー殿下とは、そんな関係じゃなくて・・・・。」


「なんだチビ?」


「あの・・・・・私がナザニン・ロムです。」


「ええええええええ!?」


それからナザニンからアイヤンガーとの関係を改めて聞かされたディーナは自分のした事が浅はかで無意味だったと思ったのだろう。

改めて両部族の族長達に土下座をし詫びを入れ受け入れられ、この件は一件落着となった。


これで漸くローヴェ大会議への用意が整ったと云える。










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