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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第9部 ローヴェ大会議編
129/219

入団テスト

俺の隣りにいる者に明らかな殺意を持って流れた鎖。


俺の隣りにいる者が咄嗟に躱したが、躱した先にも鎖は容赦無く襲い掛かった。


俺は剣を抜きを鎖の先の分銅を弾き落とし彼を守ると放った者が攻撃を一旦残念し、そして言った。


「勇者・・・・・よくも謀ってくれたな!」


突然、鎖を放ったミザリーに『勇者』と呼ばれたクオンが面喰らった顔をし俺は理解出来ずに呆然となった。


「アベルさん、私に幻落丹を渡した少年はこいつですよ!

ナザニンさんからクオンって名前だと聞いていたから、いつか確認するつもりでしたが間違いないですよ!」


幻落胆‥・・・・・テアラリ島でミザリーがバラ撒き猛威を奮った謂わば麻薬だ。

確か、東方の少年から貰ったと言っていたが、そいつがクオンだと⁉︎


だがミザリーの話からすると、彼女が東方の少年に出会った頃はクオンはマヤータ族の中で生活していた頃であり、彼自身も彼女が少年と出会ったソビリニアなんて行った事もないと言う。


「ミザリー、その少年とクオンは別人だ。

それにクオンは鎖術なんて使えない。」


「しかし、こいつと瓜二つですよ!

顔から体型から何もかも⁉︎」


ミザリーの言った『顔・体型・瓜二つ』、その言葉から浮かんだ者、俺にとっての何故か不快にさせる男であるウルバルト帝国摂政ボルト。


「ミザリー兎に角だ、話しを聞いてくれ!

恐らくだが、その少年は俺達と同じ転生者だ!

頼む俺を信用してくれ!」


「姉さん、話の流れが俺には理解し辛いが、兎に角そいつは俺じゃない!」


2人で必死に説得するとミザリーは、仕方なく、そんな感じで矛を収めてくれた。


そんなミザリーの様子を見て俺は思った。


丁度良い機会かもしれない。


俺にボルド、メリッサにはテムルン、リーゼにはハタン、そして新たにクオンには東方の少年。


そんな鏡合わせにしたような人物が存在するのだ。


これだけの偶然があるはずは無い、きっと何かしらの意味があるのだろう。


「ちょうど良い機会だ。

今、このライトタウンには、俺達を含めて転生者が6人揃っている。

ミザリーが言う東方の少年の件を含めて皆に話しておきたい。」


「アベルさん、何か知っている事があるのですか?」


厳めしい顔をしてミザリーは聞いて来たが、まずは俺が語るよりクオンの様子で確認して貰う事にした。


「クオン、1つ聞きたいが・・・・・その東方の少年、勇者とかいう少年について今どう感じている?」


そう聞くとクオンは、少し顔を歪ませると一言だけ言った。


「なんか、物凄く不快だ。」


「だろうな。」


「アベルさん、どういう意味ですか?」


「ミザリー、クオン、今まで言っていなかったが、どうやらこの世界には・・・・・・いや東方の国には俺達西方の国の転生者達と瓜二つの転生者達が存在するようだ。

実は俺とメリッサ、そしてリーゼにも存在しているのを確認している。」


「すみません、アベルさん。

ちょっと意味が・・・・・・」


それから俺はミザリーにリーゼがルシアニア公国を旅した際に出会った俺とメリッサの瓜二つの者達、ボルドとテムルンの話をし、その2人の話が出ると今回のクオンと同じように心の奥から不快さを感じると説明した。


「自分に瓜二つの人間が存在するなら興味が先に立つのが普通じゃないか?

だが俺達姉弟もクオンも真っ先に出たのは不快という感覚だ。

ここから先は俺の考えで確定でも何でもないが、恐らくだが自分と瓜二つの者は転生前の世界で何かしらの理由で関係のあったものではないのかと俺は考えているんだ。」


「兄貴・・・・・その関係って何だよ?」


「それは俺にも解らない。

あ、クオンもミザリーも、これはリーゼには内密にしてくれ。リーゼは自分が転生者である事知らないから。」


「知らないって・・・・・転生者なら知ってて当然だろ!」


「もう俺もはっきりとは覚えていないんだがリーゼは俺が前の世界で死んだ時に関係のあった人物なんだ。」


「まあ意味は理解出来ないけど、喋らないから安心してよ。」


「ありがとう。」


俺とクオンが話をしているとミザリーが思い出したような顔をしてクオンに聞いた、それは奇妙な言葉だった。


「クオンさん・・・・・・『スライム』って言葉に聞き覚えは無いですか?

その東方の少年が『スライム』を探して旅をしてたんですけど。」


そう聞かれたクオンは俺から見ても不可思議な、まるで何かを懐かしむ顔浮かべ始めたのだ。


「スライム・・・・・何の事だか解らないけど・・・・・何と無くだけど懐かしくて安心する言葉だ。」


意味は分らないが東方の少年が探す『スライム』にクオンは関係あるのだろうか。


「まぁ、この話はローゼオ姉妹とデイジーそしてメリッサが揃った時に改めてしよう。

今は劇団ニートだ。」


それから俺は2人に劇団ニートへの潜入方法を説明した。

2人は何が面白いのかという顔を浮かべたが、兎に角やってくれる事になった。

何度か3人で打ち合わせと練習をして劇団ニートのテントに向かった。


「さて、ここからは全て日本語で話すぞ。」


俺がクオンとミザリーを選んだ理由は転生者であり日本語を話せるからだが、3人いないと潜入出来ないからだ。


テント前にいた劇団員らしき女の子に副団長を呼んで貰った。


「何か用?」


リーゼから聞いた副団長のイメージは怖そうな感じだったが、実際は、こんな奴がメリッサを圧倒したのかと思う程のヒョロっとしたバンダナを頭に巻いた優男だった。


「すみません、俺達も劇団ニートに入れて欲しくて来たのですけど。」


「じゃ良かったら入団テストやるけど受けてみる?」


「はい是非!」


そして俺達の入団テストが始まった。

俺達は舞台に上がり前には劇団ニートの幹部らしき副団長を含む5人と彼らの周りにテアラリ島で元コソベ3人組から来た時より増えたのか劇団員50人の前で入団テストを受ける、緊張する。


だが俺の自信作だ!

勿論、俺が作った訳ではない!

あの元コソベ3人組と一緒にやったコントだ!


クオンとミザリーが厚手の紙で作った扇子のような物で俺の頭を殴り俺が追い掛けるコントだ!

これはテアラリ島でもカルネの街でも観客達を爆笑の渦に叩き込んだ元コソベ3人組の自信作だ!

絶対にウケる!


だがコントを始めて2分で止められた・・・・・。


「君達ね『間』が悪いよ!」


「はあ?『間』って?」


「『間』ってのはテンポって意味だよ!

それに、これ・・・・・

君、誰かのパクってるだろ!」


不味い・・・・・あっさりとバレた。


幹部達の軽蔑の目、劇団員達のブーイングが俺達に襲いかかった。

不味い・・・・・潜入どころか不興を買った・・・・・。


「これで安心出来ましたよ、皆さんの目と想いが本物だと判って。」


焦る俺を他所に、いきなりミザリーが幹部達に話し始めた。

そんなミザリーの言葉に幹部を始め劇団員達も何故か爆笑し始めたのだ。


「なんだ俺達を試したのか!君達も人が悪いな!」


「すみませんでした。でも、これで安心して芸が出来ます。」


「じゃあ本番行こうか!」


「じゃあ私から始めます。」


そう言ってミザリーはバク転・バク宙、更に左手の鎖で思い付きで始めたのか舞台袖にあった小道具を引き寄せたり、弾いたりし始めた。


「おお大道芸か!やるね良いよ、ウチにはそういう人材いなかったんだよ。

君なら今日からでも舞台に上がって貰えるよ!」


「ありがとうございます。」


幹部は勿論、劇団員達の拍手の中、ミザリーの入団いや潜入が決まった。


「じゃあ次は俺で!そこの端にある弓を借ります。」


「どうぞ、で君は何が出来るの?」


そんな事を聞かれながらクオンが劇の小道具であろう弓と矢を拾い上げ少し調整し舞台の柱に向かって矢を放ち始めた。

勿論、弓の腕が確かなクオンだから百発百中なのだが、突然劇団員の女の子に手招きをし呼び寄せ、その女の子の両手に小さな木で出来たボール、頭に四角形の小さな箱を乗せさせると舞台の端に立たせ自分は反対の端に移動し3本の矢を一気に放った。

当然ながら矢は苦も無く命中するのだが、俺が見慣れた光景にも幹部は勿論、劇団員の拍手が起こった。


「これまた凄い大道芸だ!君も今日から舞台に上がって貰えるよ!」


「ありがとうございます。」


あっさりとクオンの入団いや潜入が成功した。


「で、君は?」


2人の芸が凄かったんだから、お前も凄いのが出来るんだろうな!?

そんな目達が俺に突き刺さって来た・・・・・・。


僅かな間で必死に考える。


俺に出来る事は何だ!?


二刀剣を振り回すか?

いや、そんなものでは絶対にウケない・・・・・。


じゃあどうする?

あ!言わせるような事をしなければ入団いや潜入は出来ない。


「あれ、もしかして君は何も芸が無かったかな?

それなら、もし良ければだけど、暫らくは見習いって事で雑用とかから始めてみるか?

芸は少しずつ学んで上達していけば良いから。」


この人は良い人じゃないか!

そう思う程の優し気な笑顔を浮かべながら副団長が俺に言ってくれた。


雑用か・・・・・それも一つの潜入方法だ。

幸いにして親切にも教えてくれるとも言ってくれている。

俺は何も出来ないから仕方ないかと思った時だった。


クオンとミザリーが嫌味たらしくニヤニヤとして俺を見ているのだ。


俺達は、ちゃんと芸をやって入団を認められたんだぜ!

何お前、雑用!?そんな感じで入るんだ!そんな感じで良いんだ!?納得しちゃうんだ?


なんて言いたげな目だ・・・・・・。


「いえ、今から芸やります!

でも少しだけ、御待ちを!」


心配そうな目をする副団長を他所に俺は2人を呼び寄せた。


「ミザリー・・・・・お前フォースは使えるか?勿論だが鎖の分銅に込めてだ。」


「使えますけど・・・・・どうして今そんな事を?」


「クオン・・・・・お前も矢を5本一気に放つって出来るか?勿論だが5本の矢全てにフォースを込めてだ。」


「出来るけど・・・・・今どうしてそんなの聞くんだよ、兄貴?」


「良いか良く聞け・・・・・・ミザリーはフォースを込めた鎖、クオンはフォースを込めた矢5本で俺を攻撃しろ!勿論だが2人同時の俺を殺す気でだ。それを俺が防ぐ、それが俺の芸だ。」


「アベルさん、それはさすがに不味いですよ。確実に死にますよ。」


「そうだよ兄貴、それは不味いって。死ぬから辞めろって。もういいじゃん、もう雑用で・・・・・あ。」


雑用、その言葉が不意にクオンの口から洩れた時、ミザリーは口を塞いだが『プッ!』そんな一瞬の笑い声に俺の闘志の炎が更に燃え上がった。


「良いからやれ!絶対に俺を外すな、俺を殺す気で来い、絶対に殺す気でだ!」


俺が叫ぶと、2人は最早仕方なし、そんな顔になり舞台の端に行き、俺は反対の端に立った。


「君、別に無理しなくても良いから。」


心配そうにする副団長に向かい俺も笑顔で返事を返す。


「大丈夫です、今から凄い芸を御見せ致しますので御楽しみにして下さい!」


俺の言葉に更に心配そうな顔をする副団長、その顔を確認したのかクオンが言ってきた。


「じゃあ兄貴、行くぞ。」


「おお、本気で来い!」


「では・・・・・。」


「ミザリーも本気で来い!」


2人の武器にフォースの蒼い光が灯り始めた、だが俺の二剣は未だ鞘の中だ。


こういうのは派手さが大事だ。

相手の攻撃が放たれてから派手に華麗に鞘から抜くくらいの演出をしないとダメだ。


緊張が支配した舞台、観客兼審査員となった劇団ニートの幹部達と劇団員達が一声も発せぬままの俺達の殺気が高まっていく。


しかし・・・・・確かに殺す気で来いとは言ったが本当に本気モードかよ、こいつらは。


そう思った時だった。


ミザリーの鎖がチリッ!そんな音が僅かに聞こえた。


その瞬間だった!


唸りを上げ分銅部分に蒼い光が灯った蛇の動きのような鎖攻撃と、動きを予測していました感じさせるようなフォースが込められた5本の矢が俺に襲いかかって来た。


俺も二剣を鞘から抜く、勿論抜き去る際にはフオースを最大限に込め青い光も全開である。


まずは目立つように身体を意味も無く一回転させながら右手にあるマウシムでミザリーの鎖の分銅部分を狙い弾き飛ばし、更に勢いのまま5本の矢を弾き飛ばすのに成功した!


死ぬかと思った・・・・・・。


「おおおお!凄いぞ、彼こそ劇団ニートが求めていた人材だ!」


「間違いないぞ、華麗な剣捌き、彼に頼もう!救世主だ!」


などなど、俺の芸は中々の高評価のようだ。


「やったな兄貴、これで入団もバッチリだ!」


「やりますね、あれだけ華麗に決めるとは!」


「2人のおかげだ、ありがとう、本当にありがとう!」


クオンもミザリーも喜んでくれ、副団長を始め幹部達や劇団員達まで舞台に駆け上がって来て俺は囲まれた。


「いや凄かったですよ!あれほど剣が使えるなら、さど御強いのでしょうね!」


「いやいや、それ程でも!」


参ったな。

潜入なのに、この勢いなら劇の主役でもさせられそうだ。

これは、いくら何でも不味い、そして断らないと。


だが、いきなりだが話が変な方向に向かい出した。


副団長が困った顔をして俺に頼んで来たのだ、劇団ニートの危機だと。


「実は我々劇団ニートは今危機的状況にありまして・・・・・。

それが原因で、このままでは団長が結成された劇団ニートは解散になってしまうのです。」


「なんだって!?それは困る、それでは俺達が入団テストを受けた意味が無いじゃないですか!」


「そこで貴方に守って頂けませんか?

相手は恐ろしい人なのです、突然今朝やって来て我々に脅しをかけてきたり・・・・・。

今朝は何とかして帰って頂いたのですが、次にはどうなるか。

そして、かなりの腕利きと聞きます。

我々のような者では太刀打ちできるはずも無く困っていたのです。」


そんな奴がいて劇団ニートを脅しているのか!?

今、劇団ニートに解散なんてされたら大会議が大変な事になってしまう。


「分かりました、そんな奴、俺がぶち殺してやりますよ!」


「ありがとうございます。本当に助かります。

貴方のような人が来てくれて助かりました。

いや、本当に困ってたんですよ。

権力と金の力で我々を脅してきたり朝も2人連れでやって来たかと思うと、我々にローヴェの所有会館で公演しろ!と言って来て断ると剣を抜きそうな勢いで脅して来て、本当に怖かったんですよ。」


今朝・・・・・ローヴェの会館・・・・・2人連れ・・・・・・剣を抜きそうな・・・・・って聞いた事があるような。


「今度、あの2人が来ても貴方がいてくれたら安心して我々は観客達の為に公演出来ます。

皆、これで大丈夫だぞ。

ローヴェの奴らや『血塗れの女神』が脅して来ても安心だ!」


「え・・・・・ローヴェ、血塗れの女神!?」


「そうなんですよ、然も、もう1人も調べてみたら『首狩りの女神』とかいう恐ろし気な二つ名持ちじゃないですか。

宜しくお願いします、我々を守ってください。」


こうして俺は劇団ニートに劇団員ではなく、用心棒として入団いや潜入を果たしたのだった。

ローヴェと『血塗れの女神』と『首狩りの女神』から守る為に・・・・・・。


雑用になれば良かった。



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