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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第8部 カルム王国旧領奪還編
122/219

親子喧嘩

仕事が忙しく中々投稿出来ませんでした‥‥‥。

最悪‥‥‥。

あっという間の出来事だった。


こんな形で終わったの?


そんな印象のアニータ側のカルネの街の最後だった。


「申し訳なかった、あのような誇りを汚す者の味方をしてしまったとは・・・・・許して欲しい。」


そう言って頭を下げるバイエモ島3部族の3人の族長達。

誇りを重んじる部族にとっては恥となったと感じたのだろう。


焦りながらも急いで頭を上げて貰うアルベルタだったが、彼女には未だやらねばならない事があった。

捕虜となったアニータ・カルムの処刑と残る北部の地方貴族達の殲滅である。


「アベルは、ゆっくりと休んでいろ!」


メリッサが先鋒として出陣して行くと主将をシェリーに、ジュリア、パメラ、ブラスコ、マーア、ドーラといったアルベルタから委任を受けた一軍が残りの北部の地方貴族達の殲滅に向かい出陣していった。

『全員皆殺しにしろ!』とアルベルタからの指令を受けてである。


「アニータはカルミニにて火刑とする。

アニータの処刑をもってカルム王国は終焉とし新たにエスポワール帝国の始まりとする!」


非道を犯した者達に非情をもって答えとしエスポワール帝国が始まるのだと言いたげなアルベルタから俺に1つの厄介事を言ってきたのだ。


正確には二つだが、一つはエスポワール帝国騎士に戻る事、これは直ぐに戻ったから難は無かった。


二つ目は、二度と今回のような事が起こらないようにバイエモ島3部族との同盟交渉をする事である。

これはフェリス・リードを通して交渉をしてみようと考えたのだが難航したのだ。


詫びは入れるが、それとは話が別だ!


そう言いたいのだろう。


どうもグレーデン王国への対応といい今回の事にしてもバイエモ島3部族は国際交流というものを、あまり理解していないように思えた。

テアラリ島3部族にしても正確には国際交流に乗り出すまでには195年を要したのだから当たり前かもしれないが西方は勿論だが東方の国々でも目まぐるしく変化しているのだ。

バイエモ島3部族次第だが彼らとて流れに乗り遅れれば、いずれは滅ぼされかねない。

未だ『力』という観点から脱し切れていないのだ。


まずはテアラリ島3部族の現在の状況を説明する事から始めた。

航海技術を習得しハブーブなどの強力な武器を持ち、現在は各国への郷土料理店などの出店に力を注いでいると話すと興味を持ち聞いてきたのだ。


そこで俺は、まずフェリスに自分がテアラリ島でやった方法を教えバイエモ島で実践する事を勧めた。


しかしフェリスは、ある程度は頷くのだが‥‥‥


『そうするならば、こうした方が良いのに⁉︎』


など実に嫌がらせのような事を言って来る‥‥‥


やはり殺しておけば良かった‥‥‥



だが、そんなやり取りの中でエスポワール帝国の人材の問題も明らかになっている。


一応、俺は騎士という立場上は武官扱いである。

バイエモ島3部族との外交に立ち会っても精密な交渉事は、やはり文官がするべきである。


それに俺にしても対象者であるフェリス・リードにしても負傷中であり体力的にも今回は問題があり過ぎた。

何よりエスポワール帝国は武官に比べ文官が圧倒的に少なく内政は兎も角も外交を担う者がいないのだ

勿論、バイエモ島3部族には『外交』なんて観点がないから話しにもならない。

興味は持っても全てをフェリスに任せきりなのだ。


その事をアルベルタに相談すると思い付く人間はいるようなのだが俺に対して言いづらそうな顔をした。


「アベル‥‥‥貴方の一軍にいる2人を一時的に私の直属にしても良いだろうか⁉︎」


「2人とは?」


「ドミニク・バルディとシラ・ビバロの2人です。」


なるほどドミニクとシラの2人なら交渉事には最適かもしれない。


「あの2人に直言された事があったが見事だった。」


イグナイトの罠に嵌った際に2人から受けた諫言に深く思い入ったようだ。


早速、俺から2人に話してみると一時的ならと了承したのだが俺にテアラリ島3部族の現在の状況を教えろと言ってきたのだ。

然もスノー・ローゼオにも同行を求めてきたのである。


「グレーデン王国はバイエモ島3部族を恐れているようですからローヴェとの直接交渉を含めた方が良いでしょう。引出しは多い方が交渉材料になりますから!」


慣れているのか、それとも前の世界の経験なのか、あっと言う間にバイエモ島3部族との同盟を結びローヴェとの同盟即ち商売取り引きまで話し合ってきたのだ。


「凄いな!もう決めて来たのか!」


「はい簡単でした。テアラリ島3部族に遅れても良いのか?と言うと直ぐでした。」


「ローヴェの方はどうやったの⁉︎」


「それもローヴェと交流から始め深めて、それを切っ掛けにして他国との交流をすれば良いと言うと直ぐに決断してくれました。」


「なるほど‥‥‥」


「ただ2つの難問が発生しました。」


「何、2つの難問って?」


「1つは今回の事もそうですが、どうしてもテアラリ島3部族との優劣を付けたいらしくて勝負させろと‥‥‥」


「やっぱり祖先の事で拘るのかな?」


「それもあるのでしょうが長らく離れていた部族が、その優劣を見極めたいと思うのは当然でしょう。

まあ、スノー様が解決してくれたので何とかなりましたが。」


「解決って、どうやったの?」


俺の中では、また戦闘とかと言ったのではないだろうな⁉︎と懸念が湧いたが内容は少し違った。


「互いの武闘祭と闘技会の優勝者チームがローヴェの首都ライトタウンで司令官とフェリスさんが決めたルールに乗っ取り模擬武器で戦い、そして単に力による戦いだけではなく料理バトルも同時に開催し第3者に判定して貰う事を決定してきました。

勿論、これからテアラリ島3部族にも連絡し判断して頂きますが一応はバイエモ島3部族の準備期間とローヴェで取り引き国を招待しての大規模会議を2年後に行う予定らしいので、それに合わせるらしいです。」


要は自分達の会議の余興としても使うつもりか‥‥‥‥

それに料理バトルって・・・・・そんなものまでテアラリ島3部族と戦いたいのか・・・・・

でも、そういった内容なら安全に行われ料理バトルもあるのだから互いの技量を高め合う事にもなり友好の切っ掛けにもなるかもしれないと思った。


「よし、そういう事ならスノーさんにも相談するけどマヤータ族族長アナンダさんにも来て貰おう。」


あの御伽噺から3つの部族が元は同じ部族だと分かりクオンに他にも思い出せる事はないかと聞いていたが思い出ないらしく、もしかしたら族長なら知っているかもと答えを貰っていたので、そういう判断をしたのだ。

早速スノーと相談の上、クオンに手紙を書いて貰う事にした。


しかしスノー・ローゼオの助けがあったとは云え、こうもあっさりと同盟交渉を成し遂げるとは、やっぱり前の世界の経験っていうは必ず残存するものだなと感心していると今度は難しい顔をしながら2人が言った。


「それと、もう1つなんですが我々ではどうにもならないものを頼まれまして‥‥」


「何それ⁉︎」


「フェリス・リードとナタシャー・リードの親子を仲直りさせろと‥‥‥」


俺には分かった。


やはりテアラリ島3部族と同じでバイエモ島3部族も『家族愛』が強いのだ。

だから自分達の共有騎士であるフェリスの事が気になるのだ。


「それは俺がやってみるよ。まずは親子喧嘩の原因を探らないとダメだろうから。」


早速、ナタシャーに来て貰いフェリスとの事情を聞いたのだが中々話さない。


「フェリオはリード家の跡継ぎだ!」


一点張りであった。


次に俺が負傷中である為リーゼを伴い俺と同じで負傷中の為エンマに付き添われるフェリスを訪ね親子喧嘩の原因を聞いたのだが、やっぱり話さない。


「アベル、もし夢を奪われ強制された道を歩け!と言われたら我慢出来るか?」


「そりゃ嫌だけどフェリスの夢って何だよ?」


「それは‥‥‥」


そこまで行くと止まってしまう‥‥


その時だった。


「フェリスの夢って母様と同じだったんでしょ⁉︎」


エンマがニコやかに軽い口調で話した。

未だにフェリスには、この部族達が口が軽いとは、しっかりと理解していなかったのだろう。


慌てるフェリスを他所にエンマに聞くとベラベラと自慢気に話してくれた。


「フェリスは母様と同じ弓職人になりたかったの!」


ここで諦めたのかフェリスが話してくれたが確かにナタシャーに問題があったのだ。


「あの野郎、小さい頃から弓職人になりたかったのを知ってて鍛治師の道を強制してきやがった。

然も自分は鍛治師を嫌って弓職人になったクセに!」


「今も弓職人になりたいのか⁉︎」


「今は、そうも思わないがな。」


直ぐにナタシャーの元に戻ってフェリスが怒っている理由を説明したのだが意外な答えが返ってきた。


「弓職人になりたかったなど初めて聞いたぞ!」


そんな答えに不思議に思ったが、よくよく聞いてみると元々はリード家はワッツ・リードの父の代からの鍛治師だから跡継ぎとかどうでも良いらしい。では何故ナタシャーはフェリスに鍛治師になる事を強制したのか更に聞いてみると、この親子のいい加減さが良く分かってきた。


「幼き日のフェリオが絶対に職人になり跡を継ぎたいと言ったからだ!だから跡継ぎにするつもりだった。」


要は親子で何の職人になりたいのか、はっきりと話し合っていないのだ。


フェリスは職人になって跡を継ぎたいとしか話しておらず、ナタシャーもフェリスが職人として跡を継ぎたいと言った為に『鍛治師リード家の跡継ぎ』という認識を持っていただけだった。


「じゃあ別に弓職人になろうがバイエモ島3部族共有騎士であろうが問題はないのですね?」


「私自身が鍛治師になっていないのだから強制する気はない。フェリオが絶対に職人になりたいと言ったから強制しただけだ。」


実に馬鹿みたいな話だった。


再びフェリスの元まで走りナタシャーの言葉を伝えると、聞いたフェリスも確かにという顔したが、一度喧嘩をしてしまうと中々親子でも打ち解け合うまで時間を要するものである。


そこで夜に2人に仲直りの食事会を催す提案をし来て貰う事にした。


だが2人は来るには来たが全く喋らない。


俺やリーゼが話を振っても全く喋らない。


それでも何とか2人に率先して話し会話が始まったが、まるで見合いだった。


「本日は御日柄も良く・・・・・」


「そうですね、良い天気ですね・・・・・・」


「あ・・・・・爺ちゃんは元気ですか・・・・・」


「もう3年は見ていないので、そろそろ死んでいるかも知れません。」


とても親子の会話とは思えない・・・・・


だが・・・・・


「チッ、こいつが俺の話をしっかり聞いていなかったのが原因じゃねえか!」


それは状況に耐えかねたフェリスの小声での愚痴から始まった。


「お前がはっきり言わなかったのが原因だろうが!」


「母親なら幼い子供の気持ちくらい察しろよ!」


「弓の職人になりたいと、はっきり言え!」


そしてテーブルをひっくり返す親子喧嘩が始まった‥‥‥


止めようと思い2人の間に割り込もうとした時に笑顔のリーゼに止められ、何故か俺も静観する。


一通り言い合いが終わり2人が少しだけ落ち着いた時、リーゼが呟いた。


「羨ましいですね。親子喧嘩が出来るなんて。私には出来ない事ですから。」


リーゼの呟きに黙り込む2人を残し俺達は退散した。


どう話すのかは親子次第なのだから。


そしてカルネの処理も落ち着き、イグナイト帝国への備えの為にメリッサの副官を勤めるエド・デクーレンに駐留軍司令官職の人事が発表された。

北部地方貴族達の討伐が終了次第有効となるらしい、兵力は20000。


それから2ヶ月後に北部地方貴族達の討伐が終了したと報告が入り旧カルネ王国と旧ケンゲル王国の領土統一が完了し正式にエスポワール帝国とエスポワール帝国初代皇帝アルベルタ・エスポワールの誕生が全土に発表されたのだ。


そんな忙しい中でフェリスから俺に連絡の使者が来た。


バイエモ島3部族の3日後の帰還が決定したらしい。

そして俺と会いに来るとの事だ。


早速会ってみるとフェリスの他にナタシャーもいる。


「あれから色々と落ち着いて話し合って和解とまでには行かないが、取り敢えずはバイエモ島で一緒に暮らす事にしたんだ。

アベルからの助言を考えても母の弓職人としての技術も必要になる、それに母が祖父の弟子だった人達にも手紙を送ってバイエモ島に来て貰うように頼んでくれるようになった。」


そう話すと、最後にフェリスが笑顔で言った。


「2年後、ライトタウンで再び勝負だ。今度は殺し合いではなく、文化で勝負だ。」


そう言っただけで俺には喋らせずに帰って行った。


ナタシャーやワッツ・リードの弟子達がバイエモ島に力を貸すとなると2年後にはテアラリ島3部族にも劣らない武器を持つ事になるだろう。


それはそれで2年後の楽しみが出来たのだ、素直に喜ぼう。


そんな俺の想いを他所に3日後、エスポワール帝国にとって重要な事がアルベルタから発表された。


「帝都をパースにする。名も同盟国ローヴェ首都ライトタウンに習い『ボヌールタウン』とする。』


ボヌール、カルム王国では『幸せ』を意味する単語だ。


これから忙しくなりそうだ。


荒れ果てた旧カルム王国・旧ケンゲル王国領の開発。

それに伴う内政人事や文官の登用。

軍政の再編成。

イグナイト帝国からの民の帰還と編成。

遷都による新たな街の拡張や城の構築。


やる事は山済みである。


「兄ちゃん、忙しくなりそうだね!」


笑顔で言ったリーゼの顔から、両親の復讐が消え新たな希望が溢れているのが嬉しかった。


そう、これからはエスポワール帝国なのだから。

希望の帝国が始まるのだから。













第8部 カルム王国旧領奪還編 完

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