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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第8部 カルム王国旧領奪還編
120/219

誇りに賭けて

仕事忙しすぎる・・・・・・・

やっと投稿できた。

人間にとって何が面白いのか?


金を稼ぐ事!?

良い服を着て上から目線で見下ろす事!?

良い女を連れて歩いて抱く事!?

良い男を連れて歩いて抱いて貰う事!?

それとも親しい仲間達とワイワイガヤガヤと楽しく話して遊んで時を過ごす事!?


などなど色々な面白い事が存在する。


だが違う・・・・・そんなモノより、もっと面白いモノがある。

一番面白いのは、その空間を支配し、そこにいる大多数の人間を支配する事である。


俺とフェリスは、その真っ只中にいる。


俺達が、その瞬間、その時、その場、その大多数を支配したのだ。


「私達も戦う!」


両部族の者達が俺達の支配から脱して急いで声を掛けるが遅い。


俺達は既に戦闘モードに移行しているのだ。

そんな声は、はっきり言って無駄で邪魔だ!


「信じてくれ!

自分達が選び信じ部族の誇りと未来を託した騎士を、俺を。

その為に俺は、ここにいるのだから。

それを証明する為にコイツと殺すのだから!」


全く同じ言葉を両部族に発した俺達の視線を交差しぶつかった瞬間が戦いの合図となった。


手探り、相手の出方、そんなのは関係無い。


ただ単に忠誠を誓った部族の運命を託された騎士として同じ立場の奴を殺して当然を証明する!

そんな想いの俺達の最初の一撃は互いに一刀にて相手を一気に斬り捨てるのを目的とした袈裟斬りだった。


勢いよく剣同士がぶつかり合い火花を散らし反動から互いがよろめいた瞬間にフェリスがサクスを抜き横一線の一撃を放ってきたが俺もマシウムを鞘から半抜き状態で受け止め右側頭部を狙い左蹴りを放った。

だが、これをフェリスも間合い奥に侵入し右肩からのタックルで弾き飛ばし更に態勢が崩れたのを見計らいレイピアでの突きに出ようとするが、俺も弾き飛ばされながら右蹴りを放ち、一旦の攻勢を残念させた。


「ふん邪剣か!だが器用に小梨やがる!」


剣聖なんて呼ばれる奴から教わったフェリスから見れば確かに俺の二刀剣なんて邪剣だろう。

しかし俺は今まで自分の命を、この二刀剣で繋いできたのだ。

邪険であろうが、これが俺の誇りと証なのだ!


「ただの道場剣術かと思っていたが、中々に荒っぽいじゃないか!」


そう言ってはみたがフェリスの剣術は確かに洗練されている。

俺の蹴り技にも対応し、それだけで、その技を実戦で使用し幾多の生死を賭けた戦いを潜り抜けて来たのだろう想像出来た。


「お褒めの言葉に預かって光栄だが、俺の師である剣聖グレン・ヴァレンタインより授かった剣:二刀流は、まだまだ奥が深いぞ!!」


「そうか・・・・・だったら殺し甲斐があるようだ!」


今の俺には解った。

あの時、リーゼが嫌った俺の顔が。

きっと今この瞬間にも俺の顔はニタぁ~と笑っているのだろう。


だが俺の心に迷いはない。


どうしようもなく心が躍るのだ。


どこかで充実していなかったのか?


姉妹に会い故郷の国の騎士にもなれた。

少ないとはいえ一軍を支配に置く立場。

一言喋れば良いだけの優れた部下達もいる。


だが俺自身がギリギリのやり取りが少なくなった。


いや、其れなり満足はしている。


目指した先に合った現在の生活なのだから当然不満は無い、幸せだと言って良い。

何よりテアラリ島3部族の族長達が導いてくれ女帝アルベルタが与えてくれたのだから。


だが俺は、その事に感謝が足りなかった。


今ある自分が誰の為の存在で生かされていたのか?


俺はホリーに救われて以来テアラリ島3部族共通騎士として過ごした時間の重みを自分自身が解っていなかった。


しかし、今目の前に同様の事情を持った奴が現れた。

ならば感謝の気持ちを戦いと殺人という手段で表わすのみ!


然も目の前の奴も同様の事情なのだから感謝して限りない。


そんな目の前のフェリスと俺の違いは武器の特性に現れた。


フェリスの持つサクスは長さ30CMくらいであり、どちらかというと主体は防御としての役割を果たし隙を突いて攻勢に出るという使い方だったが、俺はカムシンとマシウムが共に長さ80CMくらいの為にどうしても攻勢一方の展開になった。


守りに入った瞬間に殺られる。


蹴り技も下手に放てばサクスの餌食になりかねない。

兎に角自分の間合い侵入阻止をしながら攻勢に出なければならないのが必須である。


ひたすらに互いが左右の剣を繰り出し攻勢を掛けては互いに弾き飛ばし合い隙を探っては突く、そんな展開が必然的に繰り返された。


だが突如としてフェリスの攻勢の展開が変化したのだ。


「ここからが我が師ヴァレンタインの二刀流の真骨頂だ!」


そう叫びながら逆に変化したのだ。


左手に持つサクス主体の攻勢に変わりレイピアの方を防御として活用し始めたのだ。

然も、サクスの攻勢の動きの方が洗練されており力も強く感じる。


やられた‥‥‥フェリスは左利きだ。


気づき対応しようとしても身体がフェリスのレイピアでの左からの間合いを覚えきっており感覚が合わず着いて行けずに何とか致命症は躱したが頬へのザックリとした傷を許した。


「お前面白いぞ!これで大抵の奴らは死んだけどな!」


強気な態度で更に攻勢に出るフェリスに俺も自分の中のスイッチが入った事を自覚した。


「面白いのはフェリス!お前だ!」


もう間合いなど構うな!

例え腕や脚が捥げても敵を殺すのみ!


直ぐさま左右の連打から出て俺も蹴り技を混ぜての攻勢に転じた。


だがフェリスも俺の感情に感化されたように攻勢に出て互いに致命的な一撃を与えられぬままに縺れたような展開が繰り広げられた。


サクス主体、レイピア主体の攻勢を織り交ぜながらの実に遣り難い展開にも慣れ出した頃だった。


「これで終わりだ!」


レイピアを大きく振り抜くと突如としてバク転を数回繰り返し間合いを確保しサクスを俺に向かって投げたのだ。


当然ながらサクスを弾き飛ばした時だった。


そのサクスの真後ろから隠していたのかスローナイフが時を空けずに放たれていたのだ!


これは何とか態勢が崩れながらも躱したが次にはフェリス自身がレイピアでの袈裟斬りを掛ける三段攻勢に撃って出ていたのだった。


咄嗟という言葉が正しいように即座に反応し身体を捻り対応したがフェリスには、これも範疇のように動きの基本となった右脚を狙われ、そして斬られたのだった。

脚を斬られ倒れた俺を尻目に余裕を持ってサクスを拾い上げるフェリスが言ってきた。


「お前の邪剣、全ては脚の動きから連動する二刀流だからな。それに恐ろしく反応速度が速い。

だから脚を奪わさせて貰った。終わりだ。」



「終わり⁉︎

フェリス‥‥お前も剣聖なんて呼ばれている偉そうな師から教わったのだろうけど、俺にも師がいる。

俺の師リューケ・ガーランドの二刀剣の真骨頂を見せてやるよ。」


「じゃあ見せてみろよ!アベル!」


フェリスが勝負を決する為に行動の自由を奪われた俺に向かって突進し左右の乱打を仕掛け尚且つ間合いを詰めサクス主体の攻勢を出て一気に俺を殺るつもりで勢い良く振るって来る。


明らかに間合いを獲らせないつもりだろうが、それなら俺はフェリスよりも間合いを小さくするのみ!

両の手の剣の握りを縦から横に変える。


俺の胸を狙うサクスの突きをマウシムの柄頭の部分で弾き返しカムシンの柄による攻撃に切り替える。


繰り出されるフェリスの剣撃を一つ一つ正確に弾きながら前に足を引きずりながらも出る。


「お前‥‥‥化け物か⁉︎」


そんな言葉が漏れる中を遂にフェリスの間合いに侵入を果たした。

そうなるとフェリスの次の行動が俺には読めていた。


俺の間合いから脱出する為に一旦の後退を掛ける事である。

間合いが小さくなっているからフェリスに出来る事はサクスによる斬るか刺すかのいずれかしかないのだから。


予想通りにサクスによる牙突が俺に向かってきたがありがたい事だった。


俺は握り締めたマシウムを離し右手をフェリスの牙突に向かって突き出した。

鋭い痛みが頭の先まで響いた時、作戦が成功したと確信した。


「捕まえた〜!」


「お前‥‥右手を捨てたのか⁉︎」


俺の右手の掌を深々とサクスが貫通していた。

逃げようと左手に握るサクスを引き抜こうとするフェリスに貫通したままの右手に渾身の握力を込め脱出を阻止すると右手のレイピアによる打撃が俺に向かってきた。

だが、これも俺には好都合だ。


俺は左手に残るカムシンでレイピアを弾き返し勢いそのままでフェリスの右脚大腿側面を斬り更に返して左手首に柄頭による打撃を放った。


フェリスに左手首が折れたような感触と左大腿部からの出血が確認出来たが、依然として立っており勝負は未だ決着が着いていないと確信させた。


「クソが!お前、正気か⁉︎」


「正気だよ‥‥‥今の俺にはテアラリ島3部族の名誉さえ保てれば右手なんて安いものだ!」


「なるほど、なら余計に負ける訳には行かないな!俺を救ってくれたバイエモ島3部族の名誉の為に!

それに俺の師グレン・バレンタインの剣は二刀流だけではない!」


「じゃあ・・・・・ここから見せてやるよ、俺のもう1人の師の剣を!」


「もう1人の剣の師だと!?」


「もう1人の師メリッサ・ヴェルサーチの剣を見せてやる!」


互いに片手片足になり体力的にも戦える時間は僅かしかない。


一撃で決めたいところだ!


焦るな・・・・・必ず利き手を失ったフェリスの方が焦っている、やるはずだ・・・・・必ず刺しに来るはずだ。


最早躱すという作業が難しい俺達には一刀のみのぶつけ合う、火花と血が飛び散る中での戦いが繰り広げる中で遂にフェリスが突きに来たのだ。


来た!ここで勝負!


フェリスの突きに合わしカムシンを巻き込んでいく、ヤマト皇国剣術奥義昇竜!これで勝負!


だが、ここで俺はフェリスの発した言葉に驚愕する事になる。


「やっぱり巻き込み技を狙ってやがったか!」


巻き込ませたカムシンの回転に合わせるようにフェリスのレイピアが同じ方向に回転していく、無効化された。


こいつ・・・・・巻き込み技、昇竜を知っていたのか・・・・・・何故!?


「その技も我が師グレン・バレンタインの得意技の1つ!そんな技を俺に使ったのは失敗だったな、死ね!」


再び手元に戻され改めて放たれたフェリスの突きが俺に向かって来る。


死んだと思った時、自然と出た。

咄嗟だった。


メリッサとリーゼがやったのを見ていたからなのだろうか!?


俺の意思というよりも身体が勝手に動いたという方が正解かもしれない。


身体が勝手に反応しカムシンを胸元まで引き戻すと柄頭でレイピアの剣先を抑撃し叩き落とすと、そのままの流れでフェリスの胸に向かって突きを放っていたのだった。


知らぬ間に俺自身が『切り落とし技』を使っていたのだ。


俺の咄嗟に出た『切り落とし技』にフェリスが身体を捻じって後方に逃げようとしたが間に合わず右上腕の中間部に刺さったのが見え弾き飛んだ。


そして呆然とする俺が立ち竦む中で仰向けに倒れ込み左手、左足、右腕が最早戦闘不能となったフェリスが右足一本で立ち上がった。


「クソ・・・・・切り落とし技まで使いやがるのか・・・・・俺の負けだ・・・・・・だがバイエモ島3部族は負けてはいない、俺が弱かっただけだ。殺せ。」


「いや咄嗟に出ただけで・・・・・それだけだ。だが勝負は俺の勝ちだ」


「ああ、お前の勝ちだ。」


俺がフェリスに剣を振るおうとした時だった。

バイエモ島3部族の集団の中で何かが叫び暴れ抑えつけられているのが見えた。


それはバイエモ島3部族バイン族族長サーガ・バインの妹エンマだった。

恐らく俺に殺されるフェリスを救おうとしたのを止められたのだろう。


「なあ、すまないが死ぬ前に少しだけ時間を貰っても良いか?」


そんな言葉に俺が頷くとフェリスがエンマに向かって話し始めた。


「エンマ、今までありがとう。エンマに出会えて良かった、達者でな!」


「いやだ、死なないで・・・・・フェリス・・・・・」


「エンマありがとう。」


そんな言葉を交わすと再び俺に言ってきた。


「要件は終った、待たせたな。」


「あの娘・・・・・・エンマはフェリスの『女』か?」


そう聞くとフェリスが今までにない優しい顔をしながら言った。


「俺には勿体ない人だ。」


ふと何気なしに目線を変えるとラウラが首を振っているのが見えた。


もういいだろう・・・・・そんなふうに。


「勝負は着いた。約束通りにバイエモ島3部族は撤退して貰うぞ。」


「おい俺を殺せ!殺さないと撤退は無いぞ!」


「お前を殺すの別に良いけど、これ以上エンマの泣き顔を見るのは嫌だ!

それに俺の『女』が、もういいと言っている。」


俺の態度に納得がいったのかいかないのか判らないがフェリスが項垂れた。


「フェリス、テアラリ島3部族は今、各国に負けぬように戦い始めたところだ。

それは単に力による戦いというではない。

経済や文化、そして国際交流という新たな戦いに挑み始めたところだ。

お前がバイエモ島3部族を力による戦いだけではなく、どの国にも恥ずかしくないレベルまで導けたら改めて殺してやるよ、それまで生かして置いてやる!」


それだけ言うと俺がラウラ達の所に戻ろうとした5歩ほど歩いた時だった。


「アベル伏せろ!」


突然にフェリスの叫び声が聞こえ俺は前方に突き飛ばされた。


起き上がってみるとフェリスが倒れ右肩に矢が刺さっていた。

その後直ぐに多数の矢が俺達に向かって飛来して来たのだ。


「バイエモ島3部族の族長達よ!こんな茶番のような勝負など意味など無いのです!

さあアルベルタらを壊滅して頂きたい、御約束の強い奴隷など幾らでも御用意致しますゆえに!」


アニータとは違い防壁の上で観戦していたクリスチャン・セルピコが狂ったように自身の弓隊を指揮しながらバイエモ島3部族の族長達に叫んでいた。

俺が勝負に勝った以上、バイエモ島3部族の援軍は期待出来ないのだと焦ったのだろう。


俺が急ぎフェリスを抱えカムシンで矢を防ぎ後退を開始した時、フェリスが当然のように言ってきた。


「あいつ、自分で自分の死刑調印書にサインしやがった・・・・・」


俺も同じ事を思った。

戦いの内容を重視するバイエモ島3部族であれテアラリ島3部族であれ、これは侮辱以外の何物でもないのだ。


「クリスチャン・セルピコよ・・・・・我らの共有騎士の戦いを侮辱したな!」


バイエモ島3部族バイン族族長サーガ・バインの怒りの言葉を皮切りにバイエモ島3部族の戦士達の武器にフォースの蒼き光が灯った瞬間に一斉の怒りの攻撃がカルネの街への開始された。


「心配するな、か弱き住民たちへの攻撃はバイエモ島3部族の誇りに賭けて絶対にしない。」


そんなフェリスの言葉に安心した1時間後あっさりとカルネの街は陥落しアルベルタの元にバイエモ島3部族の族長達の詫びの言葉とクリスチャン・セルピコの首が届けられたのであった。

































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