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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第8部 カルム王国旧領奪還編
118/219

複雑

「えーと、ここからここまでで縄を張って下さい!四方の角が90°にして四辺を50M位になるように!」


俺が明日戦う為のテアラリ島3部族の縄を張るだけの対決用リングをテアラリ島3部族の3人とエスポワール帝国の数人とで作っている時だった。


「ふんテアラリ島3部族とかいうのは余程臆病らしい!」


バイエモ島3部族の使者を務めたフェリスとかいう女とバイエモ島3部族の族長達の妹達3人がやって来て嫌味を言ってきた。


「四角形とは角に逃げられるようにしていやがるんだ!」


「小細工な!」


「『3人のボケのブス戦士』の子孫らしい!超ウケる!」


そんな言い掛かりに等しい嫌味を言って来るので怒れるテアラリ島3部族の3人を抑えつつ聞いてみた。


「こういうのはバイエモ島3部族にもあると思いますけど、どんな感じでやってるんですか?」


「聞いて驚け我らは円状だ!これなら逃げられんからな!」


「なるほど、どうやって円状なんて作ってるんですか?やって貰っても良いですか?」


そう言うとバイエモ島3部族の族長達の妹達3人は誇らしげに作り出したが、実に適当であっちこっちに歪になり、みすぼらしい楕円形であった、然も杭を打ち縄を使うから完全な円ではないのに・・・・・・


「やっぱり『3人のアホのブサイク戦士』の子孫だな!我らのようにキチンと計算された正四角形で作れないらしい!」


「なんだと殺すぞ!」


再び6人が掴み合いになりそうになったの止めながらも思った。


俺がテアラリ島で戦った武闘祭の時は正四角形ではなく歪な四角形であったとは言えない・・・・・


そんな6人を尻目にフェリスとかいう女は何故か俺を睨み怒っている。


「あの~、戦う事になるから睨まれても別に良いんですけど、俺の何がムカつくんですか?」


「いや・・・・・何故だろう。悪気は無いのだが貴方を見た瞬間からムカついて仕方ないのだ。こんなムカつきはアイツ以来だ。」


「アイツ?」


「ああ超クズ野郎だ!」


「なるほど・・・・理由は判りませんが、かなり嫌な人だったんでしょうね。」


そんな話をしているとリーゼがやって来た。


「兄ちゃん、アルベルタ陛下が受けるって伝えろって。」


「そうか、取り敢えずは仕方が無いさ。」


俺はバイエモ島3部族との戦を避けるために、このような手段を獲らざるえなかったが、これはアルベルタにもアニータにも予想外の展開だったのだ。

まずアルベルタも200年前のテアラリ島3部族とイグナイト帝国の逸話を知っており、その部族と同等の力を持つ可能性のあるバイエモ島3部族との対決は避けたいのだ。

そしてアニータも期待したバイエモ島3部族が自らの祖先の名誉の為に戦うという当初の彼女を助ける義侠心!?とは違う方向に流れ出した為、エスポワール帝国軍壊滅が難しくなったのだ。


そこで一時、互いに戦を休止する事になったのだ。


要は俺達のどちらが勝つかで互いの命運が決まるのだ。


そんな話をしているとフェリスがリーゼを観ている事に気が付いた。

いやリーゼというより帯刀するレイピアを見ているのだ、そういえばフェリスが帯刀するレイピアによく似ている。


「そのレイピア・・・・・ミチエーリをどうなされたのだ?」


「どうなされたって・・・・・頂きました。」


「もしかしてナタシャー・リードにか?」


「ええ、そうですけど・・・・・ナタシャーさんを御存じなんですか?」


「いや・・・・・」


「もうすぐ、ここに来るって言ってましたよ。」


「・・・・・え!?」


そして時を合わせた様に、その噂の本人であるナタシャー・リードが最近太鼓持ちのように『ナタシャー様!』と呼び諂うクオンに案内されてやって来た。


だが、そのナタシャーもフェリスを見た瞬間に固まり怒り出した。


「フェリオ!今までどこに行ってた!」


「お前に言われたくはないわ!」


そう叫ぶとフェリスがナタシャーに馬鹿!馬鹿!と言いながら逃げ出ていった。


「ナタシャーさん、あのフェリスと知り合いなんですか?」


「あいつの名はフェリオ・リード、知り合いも何も・・・・・私の息子でリード家の跡取りだ!」


それから理由を聞くと今は亡き貴族の男と恋仲になった時に出来た息子らしく鍛冶職人リード家の跡取りにしようと年少の頃から英才教育を施していたが鍛冶職人として少しくらいは剣の扱いを覚えさせねばと考え、父のワッツ・リードの古くからの親友のグレーデン王国の剣聖名高い老騎士に頼み剣術修行に出したらしい。

だが拙い事にフェリオには剣の才能が有ったのだ、剣聖の老騎士からも認められ更にはグレーデン王国からも是非騎士にと誘いがあったが大事な跡取りを獲られてはとフェリオの意思も聞かずに無理矢理に断りを入れた時から行方不明になり、それが5年前の出来事だったらしい。


「どのような理由があるか判らないが、まさか敵となったバイエモ島3部族と繋がっていたとは・・・・・」


愕然とした様にナタシャーが呟くと聞いていたのかバイエモ島3部族の族長の妹達の1人であるエンマが笑顔しかも自慢げに教えてくれた。


「我らがバイエモ島3部族共有騎士フェリス・リードの母様よ、安心なされよ!フェリスさんは立派にバイエモ島3部族に貢献してくれていますよ!何しろ我が姉バイン族族長サーガ・バインと互角の戦いをされた御人ですから!」


更に聞いてもいないのに話してくれたが5年前にグレーデン王国がバイエモ島に攻め入ったがボコボコにされ壊滅寸前状態になった時、たった1人で兵士達を逃がすまで殿を務め戦いバイエモ島3部族からも称賛され騎士に乞われたらしいのだ。

そしてバイエモ島3部族の初の騎士になったらしい。


聞いていて、かなりの強さだと思うと同時に疑問があった。


ナタシャーは『息子』と言ったのだ。


「ナタシャーさん・・・・・息子って言いましたよね!?でもミニスカートも穿いてどう見ても女の子・・・・・」


「いや、恥ずかしいのだが修行先の剣聖の老騎士にそっち系も仕込まれてしまったようで・・・・・・そこでフェリオをフェリスに改名させられたようだ。」


「ああ、なるほどね・・・・・」


母親のナタシャー・リード自体が、あっち系も兼ねているから影響を受けやすかったのだろう・・・・・


しかし・・・・バイエモ島3部族共有騎士って・・・・・

元テアラリ島3部族共通騎士の俺からすると複雑な気分だ。


そんな複雑な気分の俺を他所に再び6人が言い合いを始めた。


「共有騎士だって、ダサッ!やっぱり共通騎士の方が響きが良いね!ねえアベル!」


「何がダサッだ!それに共通騎士って何だ?」


「アベルは元テアラリ島3部族共通騎士だったのよ!」


「共通騎士って!?単なる物扱いだったのか、可哀想だなアベルとかいう奴!我らはフェリスさんを人として愛しみ共有するという意味で『共有騎士』としたのだ!」


「お前等馬鹿!?『共通騎士』ってのはな3部族と騎士の意志が通じ合うという意味だ!アホの部族には分かるまい!」


共通騎士って、そんな意味があったのか!?長いことやってたけど初めて知った・・・・・


「お前等こそ馬鹿!?『共有騎士』ってのはな3部族と騎士が共に有りたいという意味だ!ボケの部族には分かるまい!」


絶対嘘だ・・・・・今適当に考えて言い合いをしている・・・・・


「アベルの兄貴よ、似たような部族なのに仲悪いね!」


「あ、そうかクオンには彼女達の部族に伝わる御伽話を話してなかったな。」


だがクオンに教えると複雑な顔をし始め言ってきた。


「それさマヤータ族に伝わる御伽話と似通ったところがあるな。」


「ん、どんな御伽話だ?」


「いや・・・・・『6人の愚かな戦士』って話なんだけどさ」


クオンが話してくれたが1000年以上前に、とある島があり平和に暮らす7人の女がいた。

7人の女達は其々が美しく精強で島の住人達を魔物から守りながら仲良く暮らしていたが、ある時住む島に地震が発生し海に沈み始めた。

精強で美しい7人は話し合い3人は南に3人は北に新天地を求め旅に繰り出した。

残り1人は沈みゆく島に残り住人達を守る為に多くの魔物達と勇敢に戦う事を選んだのだ。

7人は住人達の命を救いたい、それだけを念じ自分の命を賭けたのだ。

そして数年後、島が沈む寸前に6人が同時に帰って来たのだ。

これで皆で新天地に行けると思った時だった。

南に向かった3人と北に向かった3人が言い合いを始めたのだ。


「南は気候も暖かく魚も豊かだった!」


「北は気候も涼しく魚も豊かだった!」


「南の方が良いぞ、北なんかに行ったら冷え症になるぞ!ほら見ろ3人の肌が病気になったように真っ白じゃないか!」


「北の方が良いぞ、南なんかに行ったら熱中症になるぞ!ほら見ろ3人の肌が火傷になったように真っ黒じゃないか!」


「南は服なんか着なくても生活できる暖かさだ!それに軽やかに過ごせるぞ!北なんかに行ってみろ、ゴツイ服ばかり来てなくちゃいけないぞ!」


「北は大量に毛皮と出来る獣がいたぞ、食糧にも出来るし服なんかもファッショナブルな生活だ!南なんかに行ってみろ、きっと虫刺されを気にしてなくちゃいけないぞ!」


言い合いが発展し武器を手に取り喧嘩を始めたのだ。


それでも何とか島に残った1人が場を収め住人達に問う事にした。


「このままでは埒が明かない。北に行くか南に行くか各々で決めよう!」


そして北に行く者達、南に行く者達に分かれたのだ。

単に寒いのが苦手とか暑いのが苦手などの理由からだ。


だが少数だが、どちらにも決めかねた者達もいた。

要は暑いのも寒いのも嫌なのだ。


そこで残った1人が、その者達を率いて改めて新天地を探す事にした。

辿り着いた大陸を苦労しながらも、ただ平穏な気候の場所を目指して立ち寄った地の知識を吸収しながら旅を続けた。

そして新天地が長い年月を掛け見つかった。

それが、マヤータ族の誕生の地となり、その島に残り守った1人がマヤータ族の族長になった。


後に、その始祖となったマヤータ族族長は6人を思い出し住人を守る思いは同じなのに何故仲違いをしたのだ・・・・・愚か者と言った。


・・・・・という御伽話だった。


聞いていて思ったが恐らくはテアラリ島3部族もバイエモ島3部族そしてマヤータ族も元は同じ民族だったのだろう。

島に孤立した形態をとったテアラリ島3部族やバイエモ島3部族とは違い、他の民族とも其れなりに交流も出来たマヤータ族のみは独自の変化をしたのだろう。

そしてテアラリ島3部族、バイエモ島3部族は多分だが互いに御伽話が伝承されていく中で中間派となったマヤータ族の始祖の事は消去され喧嘩別れした3人の事ばかりがクローズアップされていったのだろう。


「クオン、その御伽話で他にも思い出せるところがあったら思い出してくれ!」


もしかしたら何かあった場合に使えるかもしれないと思ったからだ。


そんな俺の想いを無視するかのように6人は今すぐにでも殺し合いを始めようとするかの睨み合いの真っ最中である。


その時だ!


「止めんか!レイシア、ラウラ、カミラ!」


ソニアが来てくれたのだ。


「戦いなら明日になれば直ぐに出来る。今は落ち着き精神を統一させ気迫の刃を心の中で研ぐ時だ!」


実に良い事を言う、さすがはテアラリ島3部族最強だ。


だが、そんなソニアにテアラリ島3部族の3人は黙ったがバイエモ島3部族の3人は挑発じみた事を言って来た。

そんな3人にもソニアは丁寧な言葉使いで諭していく。


「其方らもバイエモ島3部族の威信を背負っているのだろう。弱い犬ほど吠える!と言う。自らの部族を貶めるような真似は辞めろ。戦士の誇りが泣くぞ!」


そんなソニアの言葉にバイエモ島3部族の3人は黙った、これで厄介事は終了か!と思った時だった。


明日の戦いでソニアの相手になるであろう女がやって来たのだ。


「エンマ、サラ、ティーナ、こちらさんの言う通りだ。部族の誇りを陥れるような真似は辞めろ!」


話しが解る人だったみたいだ。


「明日は宜しく!正々堂々と戦おう!」


握手までソニアに求めている、実は良い人なんじゃないか!?と思ったが甘かった。


「だが、こんな言葉を知っているか!?吠えない犬ほど役に立たない!って言葉を。そちらの方が誇りを貶めるぞ!」


握手した瞬間からソニアの顔色が変わり凄い握力で握っているのだろうか。


「誰も吠えてはダメだとは言ってはいない、吠える時と場所を考えろと言っているだけだ!」


ソニアも握り返したのだろう・・・・・相手の顔色も変わった・・・・・。


そんな2人の額から汗が染み出て顔が引き攣り互いの手からギシギシと音まで聞こえ、どちらも言い合いをしていた6人よりも遥かに殺気立っている・・・・


「シレーヌ伯母よ・・・・・そろそろ姉様達が待っているかと・・・・・・」


バイエモ島3部族のティーナが焦ったように言って2人の握手が漸く終わった。


「明日は誇りに賭け正々堂々と戦おう!」


そう言ってシレーヌと呼ばれた女はバイエモ島3部族の3人を引き連れ帰って行った。

小声で『絶対殺す!』と呟きながら・・・・・


4人が帰ったのを見てソニアが叫び出した。


「ラウラ!『誇り』をもう一つ持って来ているか?あるなら明日貸せ!」


体格が近いラウラのビキニアーマーを借りて装備つもりなのか!?


「あいつ、明日ぶっ殺してやる!」


それからソニアの掛け声の元、明日戦う俺達5人は円陣を組んだ。


「明日はあいつら全員皆殺しだ!1人も生かして帰すな!」


「おおおおお!」


「おおおおお!」


「おおおおお!」


「おう・・・・」


まあ、気合が入った事は良い事だ・・・・・。












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