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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第8部 カルム王国旧領奪還編
109/219

ただいま

『ファ〇コンウオーズが出るぞ!!母ちゃん〇には内緒だぞ!コイツはどえらいシュ〇レーション

のめり込め!のめり込め!・・・・・・(昔の任〇堂のCMを想像してください!)』


今、オービスト大砦内に暮らす子供達には、この変な歌が大流行中である。

道を歩けば子供達が、この歌を歌いながら元気に走り廻っている。

成長促進に一役買ったようで親御さんには感謝されているだろう。


そして今も、その大流行中の歌を大声で歌いながら俺の目の前を下品な口髭を蓄えた禿げ頭の筋肉馬鹿を先頭に筋骨隆々な男達1200人がランニングの最中である。


「マンティス、この男達は最高だ!」


「・・・・・そう良かったね。」


ゲイシーは俺に上機嫌で話し掛け何故か男達からは『ゲイシー隊長』と呼ばれていた。


「ゲイシー隊長!これより馬術訓練を開始致します!」


「うむ槍術訓練と短剣術訓練も怠らぬように!」


「イエッサー!ではプレイメ〇ト達に御指導を仰ぎます!」


「うむ頑張るように!」


「イエッサー!」


このプレイメ〇ト達とはカミラとレイシアの事である


偶々、俺の募集した一軍の見学したいとやって来たカミラとレイシアを見て男達が叫び出したのだ。


プレイメ〇トだ!プレイメ〇トが慰問にやって来た!

そんな叫び声を上げ喜び始めたのだ。


「ねえエリオ、『プレイメ〇ト』って何?」


「自分の記憶が無くなり、はっきりした事は思い出せませんが前の世界の戦場で大胆に肌を露出した女達プレイメ〇トが慰問にやって来て楽しませてくれたような事は若干ながら覚えているであります!あ、本にも大胆に肌を露出し載っていたような気もするであります!」


「戦場で大胆に肌を露出した女性って・・・・前の世界にもテアラリ島3部族みたいなのがいたのか!?」


「イエッサー!ただ彼女達は兵士でなかったような気がするであります!」


ビキニアーマーを装備した2人を見て記憶が蘇ったのか!?

しかし転生しても若干でも覚えているくらいだからプレイメ〇トとかいう人たちは、かなりの強烈なインパクトを残したのだろう。


そんな感じに呼ばれ2人も何故か上機嫌に教官役として参加してくれている。


ただ、その『プレイメ〇ト』2人のおかげで可哀想な目に合った人がいる。


一応、彼らから『副司令官閣下』と呼ばれているソニア・コルメガである。


カミラとレイシアが『プレ〇メイト』と持て囃され出してから一応は敬意を払われるものの男達の何処か他所他所しい態度になったのが気になったらしく暫らく俺には気付かれないように落ち込んでいた。


しかし、そんな彼女も今は上機嫌で男達を訓練している。


「副司令官閣下、もう少しラフな格好をすれば良いと思います!」


不倫クズの片割れシラ・ビバロの助言であった。


単純な助言を受けたソニアは直ぐに『プレイメ〇ト』達にも負けぬ人気を誇り出したのだ。

胸のボタンを上から4つ開けただけでだ・・・・・


そんなソニアに『そろそろリーゼ殿の帰還の議が始まるのでは!?』と言われ俺はアルベルタのいる、そして重臣達が集う謁見室に向かっている最中である。


向かう途中の俺を見て街の人達は『パープルヘイズ』と指刺してくる。


男達が鎧の色を街の中で自慢したおかげで、その司令官たる俺の渾名が、そうなったようだ。


その『パープルヘイズ』は胃を抑え痛みに耐えながら向かっているのである。


妹リーゼがローヴェの援軍30000人と供してルシアニア公国から無事に帰って来たのだ。

勿論、帰って来た事は嬉しい。

だが果たしてリーゼは俺を許してくれたのだろうか?


そんな不安が頭から離れず胃の痛みを加速させた。


謁見室に入ると既に重臣達が並んでおり笑顔で挨拶をくれるが、1人だけ俺と同じように胃を抑えながら立っている奴がいる。

メリッサだ。


「リーゼは無事にやり遂げたな‥‥‥」


「ああメリッサ姉ちゃん‥‥‥」


姉弟で妹の無事な帰還は勿論嬉しい。


だがお互いにどのような顔をしてリーゼを迎えれば良いか解らなかった。


2人で胃を抑えながら並ぶ滑稽さに他の重臣達が心配してくれ女王アルベルタが微笑んだ時、リーゼがラウラとラシムハを後ろに従え謁見室に入って来た。


途中、リーゼは俺が重臣達の列に並ぶ事実に気が付き焦ったような顔をしたが直ぐにキリッとした顔に戻ったが後ろを歩くラウラとラシムハは何故か俯いた。

勝手にルシアニア公国まで同行した自分達が俺に悪い事をしたとでも思うのだろうか。


椅子に座るアルベルタに向かい一歩一歩とゆっくりと歩き、そしてリーゼが片膝を着いた。


「リーゼ・ヴェルサーチ、只今帰還いたしました。」


そのリーゼの姿は勇ましく輝きを放ち自信に満ち溢れ、大きな成長を遂げたと感じさせてくれた。


「リーゼ・ヴェルサーチ、どうでしたか?ルシアニア公国までの旅の感想は?」


「大変でした!」


「そうですか。今日のところは家族で積もる話もあろう、ゆっくりと話なさい。明日、ローヴェ軍に対し労いの晩餐会を執り行ないます、出席するように。」


「は、御気遣いありがとうございます。」


アルベルタの気遣った言葉は嬉しいが更に俺の胃痛は加速し隣のメリッサも更に前屈みになった。


そして謁見室には俺達ストークスの3人だけとなった。


兎に角、無事の帰還に対し労いの言葉を掛けなければ!


「リーゼ‥‥‥あの‥‥‥おかえ‥‥‥」


俺達がリーゼに言おうとした時だった。

リーゼが再び俺達に向かって片膝を着き帰還の文言を言い出した。


「姉上、兄上、リーゼ・ヴェルサーチ、ルシアニア公国から只今帰還致しました。御心配をお掛けしました。」


その礼儀正しい文言に俺は『やはり許されなかった』そう思った時だった。


「アベル兄ちゃん、おかえり‥‥‥」


「え‥‥‥⁉︎」


「アベル兄ちゃん、おかえりなさい。」


「おかえりなさいって‥‥‥それは俺のセリフで‥‥‥」


「ううん私言ってなかった、兄ちゃんがイグナイトに捕まってから苦労して生きて帰って来たのに‥‥‥馬鹿だ、私は!」


『おかえりなさい』は俺が生きて帰って来た事に対しての意味か‥‥‥。


「それから、ごめんなさい!私は自分の理想しか考えていなかった。

苦労した兄ちゃんの事なんて結局は考えてなくて自分の勝手な理想を求めてただけだった。」


理想か‥‥‥奴隷剣闘士にされた頃、生きて姉妹に必ず会う、それだけが俺の心の支えだった。

リーゼの言葉で改めて思い出した。


「アベル兄ちゃんが優しい顔をしながら包丁や鍋修理をして家族3人で穏やかに過ごしていく。そんな理想だった。

でも、そこには苦労し死ぬような思いをした兄ちゃんも、私を守る為に苦労した姉ちゃんもいなかった。

ただの身勝手な私の理想。

姉ちゃんと兄ちゃんが戦った時も自分の描いた理想が崩れるような気がして怖かった。馬鹿だよ。」


当たり前の事だった。

家族で普通に挨拶したり話をして笑ったり喧嘩したり食卓を囲んだり、そんな当たり前の生活。

その生活を俺達家族は出来なかった。

戦乱の世界で俺達だけではないだろうが。


そしてリーゼが語った理想は俺が奴隷剣闘士時代の原動力、俺が支えとし思い描いた生活そのままだった。


「ごめん‥‥‥リーゼ‥‥‥謝るのは俺だ。

リーゼの話した理想、奴隷剣闘士として戦っていた時に思い描いた生活と全く一緒だ。

だが俺は自分の理想を忘れていたかもしれない。

俺は自分の事ばかりだった。

生きていると信じて待ってくれたリーゼやメリッサ姉ちゃんを蔑ろにしていたのかもしれない。」


「あのねアベル兄ちゃん‥‥‥1つだけ教えて。」


「なんだリーゼ?」


「どうして姉ちゃんと戦っていた時に笑っていたの?」


あの時、俺は笑っていたのか‥‥‥⁉︎


「‥‥‥‥解らない‥‥‥癖かもしれない。もしかしたら戦いを楽しんだのかもしれない。

ただ答えにならないけど奴隷剣闘士として戦う時、何時も思った事がある。それが関係あるのかもしれない。」


「思った事?」


「俺は生き抜いて必ず家族に会う!

それだけが俺の支えだったから‥‥‥‥だから命乞いした奴も、俺と同じように家族が待っていると叫んだ奴も‥‥‥全て容赦無く殺した‥‥‥」


その時だった、不意に俺に強烈な吐き気が襲い掛かり床に這い蹲り吐いた。

そして頭の中で誰か複数の声が聞こえてきた‥‥‥


「‥‥‥どうしてお前だけだ?」


「俺達を殺して、お前だけが家族に会えたんだ?」


「俺を無惨に殺した‥‥‥」


「俺達を見捨てて自分だけが生き残ったんだ‥‥‥」


「どうしてお前だけが‥‥‥」


「お前が希望を奪った‥‥‥」


何だ、これは‥‥‥そして誰だ?


突然の俺の変調でメリッサとリーゼが慌てふためく中、顔を上げると2人の後ろに朧げな数人の男達が立っていた、俺達3人しかいないはずの謁見室の中で‥‥‥


誰だ?いや‥‥‥俺は彼らを知っている⁉︎


あ‥‥‥‥ハヌマーン‥‥‥ベンツ、ゴーギャン、ソレック、除胡兵‥‥‥‥‥それからジョン・ヴェルデールか⁉︎


全員が俺が奴隷剣闘士時代に殺したり俺だけが生き残った戦いを供に戦い死んでいった者達だった。

全員で15人が恨めしいような顔をして立っていた。


「お前は俺を殺した‥‥」


「お前は俺を見捨てた‥‥‥」


「お前だけが生き残った‥‥」


「お前だけが家族に会えた‥‥」


「どうしてお前だけだ‥‥‥」


「お前は俺達の命の喰って家族に会ったんだ‥‥‥」


気が狂いそうになった。

それは俺の自身の妄想と罪悪感が生んだ幻。

そう判っていても全身がガタガタと震え止まらなくなった。

俺は彼らの犠牲にして生き残った。

俺は彼らの命を喰って生き残った。

だが奴隷剣闘士として当たり前だと思っていた。

リーゼからの質問で奴隷剣闘士時代にリューケから教えられ実践し思い込んでいた事が弾け飛んだ。


『人を殺す時は相手を人形だと思え!』


現実は俺は人形ではない同じ立場の同じ願望を持った人間達を殺し自分の人生と命を繋いでいたのだ。

恨みがあるとか戦争や決闘でもない。

強制されたとはいえ人々の娯楽の為に人の夢や人生、命を奪った、まして彼らを待つ家族の希望を奪った。

そんな当たり前の現実に漸く直面した‥‥‥もう何年も経っているのに。


「許してくれよ‥‥‥‥俺だって家族に会う為に必死だったんだ!」


「殺したくて殺したんじゃないんだ!」


「家族に会いたかったんだ!

リーゼやメリッサに生きて会いたかったんた!許してくれ、許してくれよ!」


突然泣き出し頭を抱えた俺にメリッサもリーゼも慌て声を掛けてきた。


「どうしたアベル⁉︎」


「兄ちゃん⁉︎兄ちゃん⁉︎」


「本当は誰も殺したくなかった‥‥でも殺さないと闘技場から出して貰えなかったんだ!

死にたくなかった‥‥‥メリッサやリーゼに会えないまま死ぬなんて‥‥‥。」


それから意識が無くなった。


気が付くと俺は何故か白い靄が立ち込める場所にいた。


隣にはハヌマーンとジョン・ヴェルデールがいた。


「小僧ありがとうな!約束を守り俺の言葉をチャンドニーに伝えてくれて!」


そう言うとハヌマーンは俺の肩を叩いて靄の中に消えて行った。


「少年、娘達に私と妻の死を伝えてくれてありがとう。それと元気でな!と伝えてくれ。ではヒラリーが待っているんだ。」


そう言うとジョン・ヴェルデールも靄の中に消えて行こうとしたが、改めて振り向き言った。


「少年、家族や仲間を大切にしろ!守ってやれ!」


ジョン・ヴェルデールは消えた、その奥にはベンツ、ゴーギャン、ソレック、除胡兵、俺が殺した残りの9人が俺に笑って手を振り消えていった。


・・・・・俺は彼らに許されたのか!?


そんな疑問の中、俺は靄に包まれた。


再び気が付くと俺はベットに寝かされていた。


ここは・・・・・診察室か!?


そう思い周りを見渡すが誰もいない、ただ隣の部屋からメリッサの声が聞こえて来た。


「先生、アベルの症状は如何か?」


そんな質問をするメリッサの声と泣くリーゼの声、心配するラウラ、カミラ、レイシア、ラシムハ、ゲイシー、おまけに駆け付けてくれたのかアルベルタやシェリーとジュリアの声も聞こえた。


「ずっと心に溜め込んでいたものがリーゼ様に会われた事で安心して顕著に出現しただけでしょう。ゆっくり休めば大丈夫ですよ!しかし、かなりリーゼ様を御心配されていたのでしょうな、心配し過ぎて胃もストレスで荒れているでしょう。薬を出しておきますよ。あ、メリッサ様の分も。」


そんな説明を受けた面々が部屋に入って来て目覚めていた俺を見て驚きの声を上げ、そしてリーゼが抱き付いて来た。


「私のせいだ、私が馬鹿だったんだ!」


「リーゼ、自分を馬鹿なんて言うな!それから・・・・・」


「うん・・・・・兄ちゃん。」


「リーゼ、メリッサ姉ちゃん・・・・・ただいま。

俺は本当意味でイグナイト兵に捕まってから漸く家族の元に帰って来れたような気がする!ただいま!」


「アベル兄ちゃん・・・・・おかえりなさい。」


「アベル・・・・おかえり。」


あれは妄想だったかも知れないが、あの俺が殺したり供に戦い死んでいった15人は本当の意味で家族に会わせる為に恨み言を言ってきたのかもしれない。


彼らが出て来なかったら俺はリーゼに血生臭い過去を無意識に引きずったまま『奴隷剣闘士アベル・ストークス』で2人に再会したかもしれない。

それは単なる綺麗事、願望、罪悪感、そういった類かもしれないが少なくともリーゼから『おかえりなさい』と言われ『ただいま』と言えたのだ、俺は家族の元に帰れたのだ。

彼らに感謝しよう、俺をメリッサの実弟でありリーゼの実兄アベル・ストークスに戻してくれて。


「シェリー様、ジュリア様、先程ジョン・ヴェルデール様に御会いし伝言を頼まれました。」


一瞬2人は不可解な顔をしたが聞いてくれた。


「父は何と?」


「御2人に、元気でな!と。」


泣く2人を見て、やはりジョン・ヴェルデールやハヌマーン達が俺のところに来て言ってくれたのだと思った。


『少年、家族や仲間を大切にしろ!守ってやれ!』


改めて心にジョン・ヴェルデールの言葉を刻み込んだ。


「リーゼ、ルシアニア公国での旅の話を俺に聞かせてくれ!どんな経験をしてどんな人に出会ったのか俺に教えてくれ!」


「うん!兄ちゃんや姉ちゃんには、たくさん話したい事があるよ!」


笑顔のリーゼを見て改めて家族の元に帰って来れたんだという実感に包まれたが、このリーゼの旅の話が俺とメリッサを不快にさせるとは思わなかった。





















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