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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第8部 カルム王国旧領奪還編
108/219

疑似コソベ達

ここはオービスト大砦の中央部の広場、俺の目の前に悲観した顔をした奴ら、ざっと見て約4000人程が並んでいる。


俺がオービスト大砦内を日本語で叫びながら集めたコソベ達だ。


「よく集まってくれた!私は君達にチャンスを与えたい。

これを期に転生者諸君には望んだはずの世界を思い出して頂きたい!

どうだろうカルム王国の為、そして新たな転生した自分探しに勇気出して前に進んでみないか!」


そんな俺の気合いの入った日本語での文言を聞いてコソベ達1000人が帰っていった‥‥‥。


まだ説明もしていないのに‥‥‥‥


上から目線で話しやがって!


そんな呟きをしながら‥‥‥。


そして俺が説明を始めると更に半数が帰っていき、更に説明を続けると半数が‥‥‥結局残りは200人だった……。


俺が思った以上にコソベ達の『やる気』は無かったのだ。

帰った連中の大半が口々に呟いた言葉があった。


出来る訳ないじゃん!


嫌味か、勝ち組が!


など完全に諦め顔で帰っていったのだ。


それでも200人は残ってくれたのだ。


さすがにコソベ達全員に導びけるなど甘い考えなど持っていなかったから落ち込むなどはなかったが『明日から、まずは体力作りからだ!』と言った途端に150人が帰っていった。


怠そう‥‥‥。


そんな呟きを残して‥‥‥‥。


結局4000人集まって残ったのは、たった50人だった。


その50人も内47人が次の日にランニングを3KMしただけで来なくなった。


ここまで酷いのか⁉︎そんな現実に落ち込む俺に意外だが残った3人は次に何をしたら良いかなど色々と聞いてきたりする。


そんな変わり者⁉︎コソベ3人に色々聞くと、この3人は帰った連中に比べるとコソベ落ちした期間が短く若いコソベ達で転生前はエリートと呼ばれる部類の者達だったのだ。

単に3人とも、この世界に馴染めず何をして良いか解らなかったと言うのだ。

しかも1人は俺が日本語で話しても殆んど理解していなかったのだ。

頻繁に、この世界の言葉で話して来る。


もしかして、この人は転生者じゃないのか⁉︎間違えて来てしまったのか?


そんな疑問が湧き、こっちの言葉で聞いてみた。


「あの‥‥‥転生者じゃないの?」


「自分でもよく解りませんが、恐らく転生者です。」


「でも日本語を喋ってないですよね⁉︎」


「いや母国語が英語だったもので、後はフランス語は話せます。それから日本語は少しヒアリングが出来る程度で‥‥‥」


「え‥‥‥もしかして転生前は日本人じゃないって事ですか?」


そう聞くと彼は突然に警備兵がするような敬礼を始め俺に名乗り始めた。


「イエッサー!私は国籍はアメリカ合衆国、アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレー所属デビット・ナッシュ少佐であります、軍司令官閣下!あ、この世界の名前はエリオ・パカーレであります!」


アメリカとかいう国があったような気がする‥‥‥もうはっきり覚えていないけど。


聞けばベトナム戦争とか湾岸戦争とかいうのに参戦し活躍したらしいが70歳で病気で亡くなった後に転生してきたらしい。


「よく解らないけど、それってエリートですよね⁉︎なんで転生なんかしてきたんですかね⁉︎」


「自分も理解出来ておりません、申し訳ありません軍司令官閣下!ただ自分は何時も思っておりました!」


「何をですか?」


「また戦争に参戦したかったであります!」


なるほど‥‥‥メリッサと同タイプの転生者か‥‥‥危ないタイプだ。


それから残りの2人の男女にも聞いてみると、どちらも転生前は大きな組織で働いていたらしく、しかも2人は上司と部下の関係であったらしい。


どうして、この2人が転生してきたんだ⁉︎と不思議に思い聞いてみると男の方が答えた。


「お恥ずかしい話ですが転生前の私達は不倫関係でして私の嫁とコイツの旦那にラブホテルから出てきたところを見つかって刺し殺されたんですわ!それから気が付いたら2人とも転生したんです、いや〜コイツと近所同士で生まれてなかったら危なかったですわ!」


なるほど‥‥‥クズはクズでも一般的なコソベとは違うタイプのクズか‥‥‥


だが、そういった転生事情なのに2人とも明るい顔をしている。


また理由を聞いたが途中で辞めた。


要は転生前は50歳代と40歳代だったが、転生してからの体力豊富な若い身体で楽しんでいるらしい‥‥‥


そんなクズらしい理由だったから聞くのを辞めた・・・・・


それでも3人は残ったのだ。


これから少しずつコソベ達を集めれば良いさ!と思った時だった。


エリオが俺に『日本語の話せない』コソベ達が自分の他にもいると言ってきたのだ。

一般のコソベ達の主言語が日本語の為、彼らとは交流の無い別のグループになっているらしいのだ。


「私は若干ながら日本語が理解出来て募集の意味が解りましたが、彼らは未だ軍司令官閣下の募集の存在すら知りません!」


「なるほど、確かに日本人だけが転生しているってのも非合理だよな。

エリオ直ぐに彼らを集めてくれないか!」


イエッサー!敬礼してエリオが集めに行くと500人程のコソベ達が直ぐにやってきたのだ。


少し話すと全員が前はアメリカとかいう国の人間で軍隊経験がある転生者達だった、しかも転生した理由も、エリオと同じ戦争に参戦したかったであった。

全員が危ないタイプの転生者でコソベになった理由も一般的なコソベとは大きく違ったのだ。


全員が前の世界を主眼に考え、俺にはよく解らないが『ここは中世ヨーロッパの世界⁉︎』と思い転生の意味が理解出来ず警戒しコソベとして生きていたと口々に話した。


それから俺は彼らの疑問を解消する為に転生の事実と現在いる世界の事を全て話した。


すると直ぐに理解し全員が俺の一軍に入る事を了承しソニアが組んだ訓練プログラムを今直ぐに受けると言うのだ、この世界の事を理解し直ぐにでも行動を起こしたかったのだろう。


その日直ぐに訓練を開始し鍛え始めたが俺は3日程で勘違いに気が付いた。


元が軍隊経験者達でやる気も溢れ理解力に富む彼らは本当の意味でのコソベではなかったのだ。


訓練にも弱気も見せず貪欲な彼らは、はっきり言って後は体力さえ付けば今直ぐ戦いに参加出来る戦士達だった。


俺の目指す趣旨とは大きく違う・・・・・。


だが生きる道を新たに見つけた彼らを見捨てる事も出来ずソニアと相談した結果、近日に迫った奪還戦も考慮し彼らの訓練は続けることにしたが・・・・・・。


「アベル・ストークス軍司令官閣下とソニア・コルメガ副司令官閣下に敬礼!」


「イエッサー!」


元が軍隊経験者達らしく整列する彼らに一糸乱れぬ敬礼を受ける俺とソニア・・・・・敬礼が終わると直ぐにランニングを始めた。


『ファ〇コンウオーズが出るぞ!母ちゃん〇には内緒だぞ!コイツはどえらいシュ〇レーション!

のめり込め!のめり込め!・・・・・・(昔の任〇堂のCMを想像してください!)』


そんな感じに聞こえる訳の分らない歌を歌いながらランニングに勤しんでいる・・・・・。

エリオに聞くと転生前の軍隊でやっていたランニング方法らしく肺活量アップに繋がるらしいのだが。


「アベル殿・・・・・申し訳ないが彼らに何を教えろと言うのだ・・・・!?」


「ソニアさん聞かないで下さい・・・・・俺の趣旨と大きく違うんです・・・・」


「しかし優秀な戦士を集められた事はアベル殿には幸運ですぞ!」


「まあ確かにそうなんですが・・・・・」


そんな俺とソニアを尻目に彼ら独自のコミュニティーがあったのだろうか更には前の世界ではイギリス人というのかカナダ人とかなどの同じような事情の奴らが噂を聞いたのか700人程がやって来て気が付けば1200人の軍に成長していたのだった。

そして食事なども大きく改善すると4週間ほどで筋骨隆々な戦士と化してしまったのだ・・・・・・。

そして転生前の記憶もあっさりと消えてしまったらしい。


俺の目指す趣旨とは大きく違う・・・・・。


そしてだが、あの不倫クズの2人である。

2人は英語とかいうのが話せたらしく彼らと親しくなった関係から面倒と事務や軍の会計などを取り仕切って貰っていた。


「あ、申し遅れました!私こっちの名前がドミニク・バルディです、それと彼女がシラ・ビバロです!

軍司令官閣下、こちらの書類に目を通し納得して頂けましたらサインを願います!

鎧や武具などの発注書です。

商人達との交渉の末に70%の値引きにも成功しました。

納期も十分に奪還戦には間に合います!」


「あ、そう・・・・・70%も値引きって凄いね。」


勿論だが彼らも転生前の記憶など速攻で消えたらしい。


はっきり言って、ここに集まった連中は切っ掛けさえあれば独自の判断で行動する『疑似コソベ』だったのだ。

俺の目指す趣旨とは大きく違う・・・・・。


噂を聞いてかアルベルタ自身が視察にやって来てしまった・・・・


「アベル・・・・・テアラリ島3部族は其方を手放した事を後悔するだろうな・・・・・」


難しいぞ!と顔した手前、アルベルタが自身の理解を越えた光景に素直に俺を褒め称えてくれたが・・・・・

俺も引き攣った笑顔で返事していたらしい。


「だがアベル、最終的には後1800人程は集めてくれないかな!?そうすれば作戦にも組み込みやすいのだけど。」


そこだ、せめて後1800人は欲しいところだ。

あの萌黄にしても回復した西南の領土や旧ケンゲル王国領から集め現在3000人に膨れ上がりクオンやキッカも忙しく走り回り、現在は野営行軍訓練中である。


俺も負けてなどいられない!

やはり当初の目的通りにコソベ達を補充しなければならない!


だが、それまでも5回ほどコソベ達を集め話をしていたのだが成果は上がっていなかった。


コソベ達も呼びかければ来てくれるのだが参加しようとはしないのだ。


やはり怖いか・・・・改めて今まで自分が感じていたコソベへの印象に包まれた。


しかし5回もコソベを集め話していると次第に彼らの事が判って来た。


壮年層のコソベ達は来ても直ぐに帰ってしまうが若年層のコソベ達は比較的最後まで俺の話を聞いてくれるのである。

壮年層は未練は感じているが、もう諦めておりコソベの生活にも慣れ親しんでしまっているのだ。

逆に若年層は、未だに憧れた冒険生活を諦めきれず勇気がなく踏み出せない。

まだ完全には『コソベ』にはなり切れてもいないのだ。自身に自信が無いだけなのだ。


どうやったら若年層のコソベ達を救えるか?自信を与えられるか?そこから考えないと先には進まない。

勿論、壮年層のコソベ達も救ってやりたいが彼らについては、無理かもしれない、もう手遅れなのかもしれない・・・・・・というような考えが支配し始めた。


一度味わった甘い蜜の味は忘れられないものである。

彼らはコソベでも気兼ねの無い気楽な生活を持っているのだ。

慣れ親しんでしまっているのだ。


俺のやっている事は押し付けで彼らからすると迷惑でしかないのかもしれない・・・・・。

そんな考えが俺を支配した。


「アベル軍司令官閣下!兵士達の防具と武器が到着しました!」


悩んでいた俺にドミニクが報告して来たので見に行くと既に鎧を纏い剣や槍を装備した元『疑似コソベ』達が整列し敬礼してきた。

全員が深紫色の鎧を装備し顔には笑顔がこぼれていた。


「紫色って、何で紫に?」


「いや交渉している時に、色の発注間違いをした商品なら大量にあると言ってきたので、それを買うから値下げしろと言ったら紫になった次第です!どうやら本当は緑色だったらしいのですが。」


「萌黄のところのか・・・・・だから70%も値引いてくれたのか。」


だが、この紫色が兵士達には気に入った様で口々に『パープルヘイズ!』と叫んで喜んでいる。


「ねえエリオ、『パープルヘイズ』って何?」


「自分の記憶が無くなり、はっきりした事は思い出せませんが前の世界の唄の題名だったような気がします!」


「唄ねえ・・・・・気に入ってくれたなら良しとするか!」


後に、この兵士達が装備する鎧と『パープルヘイズ』と喜んで叫びまわった事でリーゼを含むヴェルデールの4女神の色にちなんでか俺の一軍は紫色とカルム王国内で認知されてしまう事になる。


そんな感じ1月が瞬く間に過ぎ、オービスト大砦にスノー・ローゼオ率いるローヴェ軍30000人の援軍が到着したと報告が入った。

しかもリーゼやラウラとラシムハも一緒に帰還したらしい。


無事に帰還したリーゼ達に喜びが隠せない一方で、未だコソベ達を導けず説得も出来ない自分が恥ずかしかった。


リーゼ達は立派にやり遂げて帰還したのに、俺は何も出来ていない・・・・・。


それに俺は、どんな顔してリーゼに会えば良いのか未だに分かっていなかった。


俺はリーゼに許されたのだろうか!?




























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