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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第7部 ケンゲル王国侵攻戦~テアラリ島3部族同盟交渉編
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共通騎士解任

俺が歩けば後ろには多数のテリク族とテアナ族の美女が連なり着いてくる。


そんな俺を追う美女達に怒鳴る筋肉馬鹿がいる。


勿論、ゲイシー・ロドリゲス。


「ぶっ殺すぞ、汚物が!」


久しぶりに聞くゲイシーの汚い言葉に少しの安心を覚える俺である。

そして、ここはゴウトの店だ。


「アベルも大変だなあ、姉さんのおかげで・・・・・」


そんな事を言いながら俺を慰めてくれるゴウトがジュースを出してくれた。


「そうなんだよ・・・・俺だってミザリーと戦って頑張ったのに・・・・・」


「でも・・・・汚物・・・・いやホリーと互角の戦いをした姉さんには霞むよな・・・・・・可哀想だけど。」


ゲイシーが仕方なしという顔して酒を飲みながら申し訳なさそうに答えた。


「お前が面白おかしくアン様に、ラウラと裸で抱き合ってキスしていた!なんて話すから加速したんだろうが!」


「僕は少しでもマンティスに汚物が近寄らないように正直に話しただけじゃないか!」


あのメリッサとホリーが一騎打ちをして以来、俺はテアラリ島3部族の戦士達いやテリク族・テアナ族の戦士達から羨望の的である。

要は俺の『種』が欲しいのだ。


あのアベルは『獣化』したホリー様と互角の戦いをしテリク族族長の血筋である『テアラリ島3部族最強』の異名をとったソニア・テリクを部下にしているような『血塗れの女神』の弟だ!

アイツの子種を貰えば『血塗れの女神』のような戦士が生まれるかもしれない!・・・・・序でに言えばにアイツはテアラリ島3部族共通騎士でもあるし・・・・・。


そんな話がテアラリ島では蔓延し、序での俺は貞操の危機の最中である。


テアナ族族長宅では夜寝ようするとテアナ族の戦士達が全裸で俺のベットサイドで子種を得ようと順番待ちし、ハロルドの街中を歩けばテリク族戦士達が誘惑してくる。


ついさっきも強姦される寸前であった。

いきなりテリク族の戦士達に後ろから頭を殴られて意識が朦朧としたところをズボンを脱がされて犯される寸前を偶々ゲイシーが通りかかり貞操は守られたが、もう少しで穢されるところだった・・・・・。


だがテラン族の戦士達は、アイツはラウラ様の物だ!手を出すと殺されるぞ!とゲイシーの話を伝え聞いたのか、そんな事を言って絶対に手を出してこないのだが・・・・・。

その分だけ『血塗れの女神の血をテラン族だけに独占させるものか!』とテアナ族・テリク族の戦士達には狙われる事になった訳だ。


そんな俺はゴウトの店を出てゲイシーをボディガードにし同盟交渉の話を詰める為に3部族合同会館に向かう。

だが途中でゲイシーが真顔になって言ってきた内容に絶句せずにはいられなかった。


「なあマンティス、この同盟交渉が終わると君はどうするつもりだ?」


「どうするって、何がだよ?」


「この同盟が完全に成立し君が女王ママに報告すればカルム王国は北西部の旧領奪還を直ぐにでも開始するだろう。その時、君はテアラリ島3部族共通騎士のままで良いのかという事だよ。

北西部に攻め入れば、いくら現在のイグナイト帝国に余力が無くても援軍には必ず出てくるじゃないか。

君はイグナイト帝国と同盟国の騎士だ、今の立場じゃ戦えないだろ!?」


その通りだ。


俺がテアラリ島3部族共通騎士である以上は援軍が予想されるイグナイト帝国とは戦えないのだ。

俺自身イグナイト帝国にはアルやヘレンを殺された恨みもあり戦いと思う。

しかし奴隷剣闘士から騎士にまで叙任してくれたテアラリ島3部族の事を考えると自分の恨みだけでは動けないのが現状だった。


個人的には戦ってアルやヘレンの仇を討ってやりたい、テアラリ島3部族の役目上は許されない。


そんな葛藤が俺を絶句へと導いた。


「結論を急がせるつもりは無いけど、よく考えた方が良いぞ。」


この筋肉馬鹿が、こんな事を言う時は常に俺の人生の転換期に入る時である。

忠告通りに、よく考えた方が良さそうだ。


それから3部族合同会館に着き俺は3部族の外交を担当する副官達と今回の同盟について話し合う訳だが、ここでもテアラリ島3部族は随分変化したんだなと思わざるえない。


前回テアラリ島にいた時は確かに副官達も頑張って動いていたが、それでも族長達の権限内での話だった。

それが今は副官達の意見や主観の中で、ある程度の権限も認められ独自の判断で動く事もあるらしい。

勿論、最終判断は族長達が行う訳だが、それでもかなりの進歩を示してはいたのだ。

そしてテアラリ島の男達の地位の向上である。

謂わば副官の副官に男達が採用され活躍している事実もあったのだ。


だが、こうなってくると俺が恐れた『猛毒』が台頭してくる恐れもある。

『猛毒』とは一部の者が金や権力を背景に台頭し国を凋落させる事である。


しかし、そんな心配も副官や男達の提案で前族長達を長とする監視組織が作られ精査されているらしい。


もうテアラリ島は俺の範疇を超え未来に向かって問題なく走り出しており心配ないのかもしれないと思わせた。


「アベル様が旅にて御調べになった各国の情報からも精査し検討課題にしたいので発表宜しいでしょうか?」


こんな質問までされる始末である。

然も報告すると即座に質問と議論が始まり対応するチーム編成も決められ、更に貿易・外交・情報・防衛などの課題が次々と列挙されていった。


もう俺必要ないじゃん・・・・・・。


そんな一抹の寂しさを感じさせた。


それから俺はボディガード役のゲイシーがアン・テアナの元に遊びに出掛けてしまった為、食事に誘われていたテラン族族長宅までハロルドの街を歩く事になった。

一応護衛代わりではないがテリク族族長副官ナンシー・マカロンとテアナ族長エビータ・ピクルスに送って貰う事にした、2人がいると貞操の危機が免れるからだ。


3人で歩いていて驚くべきモノを見た。


ハロルドの街に3人だけだがコソベがいたのだ!


「あの3人最近よく見かけますよ、どうもエルハラン辺りから来たようで路上で色々見世物をしてくれるんですよ!」


「見世物?」


「ええ彼ら曰く『コント』っていうらしいのですが、これが面白くて皆が楽しみにしているんです!」


そう2人は教えてくれた、確かに3人のコソベ達を見ると服装は相変わらずボロだが顔は笑顔で通りかかる人達にも手を振ったりしており、次は何時やるの?なんて聞かれたりして人気者のようだ。


「ごめん、少し彼らと話をしたいから待っていてくれないかな。」


2人に告げ俺は彼らに話し掛ける事にした。


「なあ君達、ちょっと良いかな?」


勿論、日本語で話し掛けたのだが彼らは普通のコソベ達のようなオドオドした態度ではなく緊張しながらも返事を返してくれた。


「日本語・・・・・あんた転生者か!?」


「ああ君達と同じ転生者だ!ちょっと聞きたいんだけど何故『コント』とかいう見世物をしているんだ?」


それから彼らに聞いたのだが、やはり最初は他のコソベ達と同じように恐怖心から冒険にも出れずロイカの街で乞食のような生活を送っていたが、突然現れた10人の元コソベ達に影響され転生前の記憶を生かし『コント』とかいうのを始めたらしく各国を周りながら芸修行をしていく予定だと教えてくれた。


「その10人のコソベ達って何者なんだ?」


「それは判らないけど彼らも転生前の記憶を生かして演劇をしたりしているんです!それをロイカの街で観て感動して俺らも『コント』を始めたんですよ!」


「へえ凄いね!」


「彼らが俺らに教えてくれたんです、冒険だけが転生した意味じゃないって!

どんな事でも頑張れば新たな自分にリセット出来る事を教えてくれたんです。

おかげで最近は前の世界の記憶も殆んど消えて新しい人生を謳歌しているところですよ!

ただ記憶にあったネタまで忘れちゃったんで自分達で考えるのが苦労ですが。

まあそれも楽しいんですけどね!」


「そうか良かったね、でも10人の名前とか判らないの?」


「1人1人判らないです・・・・・ただ自分達を『劇団ニート』と名乗ってましたけど。」


「劇団ニート!?」


「ええ劇団ニートです。

でもカッコ良かったな!絶対に権力者には媚を売らずに路上で公演するスタイル。

実際エルハラン帝国の貴族からも屋敷で公演してくれって頼まれたらしいけど断ったって話だしね!」


そんな気合いの入った奴らがいるのか!

今まで旅や戦いばかりで『コント』とかいうのや『演劇』なんていうのは考えも付かなかった。

世の中、そんな発想を考え付く奴もいるものだ。


それから俺は3人に『コント』とかいうのを絶対に観に来ると約束し別れテラン族族長宅に向かう事にした。


テラン族族長宅に着くと既に3人の族長達そしてメリッサとソニアが待っていた。

俺がテリク族・テアナ族の副官1人ずつを連れていた事もあり急遽2人と偶々漁で獲れた魚を持ってきたテラン族の戦士1人を交え食事が始まった。

急遽参加する事になった3人は緊張し食事が進まない様子に笑いそうになった時、リラが重苦しい表情を浮かべながら俺に言ってきた、予想だにしなかった内容だった。


「アベル・ストークス、現在協議中の同盟交渉が終わり我が国の使者としカルム王国女王アルベルタ殿と謁見次第、貴方をテアラリ島3部族共通騎士の任から解きます。」


「え・・・・!?俺不都合な事をしました・・・・・・?」


「いえ十分にテアラリ島3部族共通騎士の任ばかりか、それ以上の事をテアラリ島にもたらしてくれました。

感謝しかありません。

後は、実姉メリッサ・ヴェルサーチ殿や妹御と供に自分の意思を尊重し思うが儘に戦われるが良い!」


イグナイト帝国の名は出さず俺にアルやヘレンの仇を晴らせと言ってくれているのだ。


「しかし・・・・・。」


「貴方がもたらしてくれた新たな風のおかげで私達族長も戦士達も変わりました。これが、これからのテアラリ島にとって良い結果悪い結果になるのかは私達次第、後を私達に任せては頂けませんか?」


涙が出た。

初めは戦う事しか知らなかった戦闘民族が他者を思い遣り、まだ見ぬ異文化や異国に自分達の力だけで堂々と渡り合っていこうとしているのだ。


もうテアラリ島ではテアラリ島3部族共通騎士は役目を終えた存在になったのだ。


「このアベル・ストークス、族長達の恩義を忘れず自身の存念に忠実に生きていく事を御約束します。」


「これより先、アベル・ストークスの未来に幸ある事を。」


そして5日後、同盟交渉を完了させた俺とメリッサそしてソニアとゲイシーは旧ケンゲル王国領に向け出発する事になった。


これより3日前、一応『コント』をメリッサと観に行ったのだが厚手の紙を折りたたんで作った扇子のような物で殴り合ったり訳の分らない言葉で叫んだりと、そんな異様な芸風だったが俺達には何が面白いのかさっぱりと理解出来なかったが周りの観客達は腹を抱えて爆笑していた。

きっと転生前の俺達なら爆笑していたのかもしれない・・・・・。

そして彼らも、他の国に移動したいというので同行する事になった、船賃が浮いたと感謝された。


「これを親書とは別にアルベルタ殿に御渡しください、ちょっとした嗜好返しです!それと、この手紙は妹達に!」


そうリラから言われ親書とは別に4枚の封筒を預かった。

少しニヤニヤしていたのが気になったが。


多くの人が前回旅立った時のように見送りに来てくれ、俺は泣いた。


俺は必ず、いつかまたテアラリ島に帰ってくる。


テアラリ島は俺の第二の故郷なのだから、必ず帰ってくる。


そんな想いから、しんみりと涙を流しているとメリッサが慰めてくれた。


「良い島だったな、またいつかリーゼを連れて来よう!」


「ああ、そうだなリーゼも必ず気に入ってくれるさ!」


姉弟のしんみりとした会話が終わった時、船が俺達の気持ちを意識したように出港した。

指揮を執るのはテラン族の戦士2人、あの旧ケンゲル王国に遭難した2人だ。

2人は、新たに設けられたテアラリ島~旧ケンゲル王国までの航海責任者に抜擢され張り切っている。


「アベル様のおかげで思わぬ出世が出来ました、感謝します!」


俺の方が感謝すべきなのだ、彼女達のおかげで自分の新たな目標、アルとヘレンの敵討ちが出来るのだから。


さよならテアラリ島、そして俺はいつかまた帰ってくる。


ソニアも今まで苦しめられた過去を脱し考え深げにテアラリ島を眺め目には涙が溢れだそうとしていた。

人それぞれ色々な事があったテアラリ島への帰郷であった。


だが・・・・・。


「ママ行ってくるよ!僕は旅立つよ!ママ、ママ、ママ―!愛してるよ!」


俺達のしんみりした気持ちは、この筋肉馬鹿が手を振るアン・テアナに向かい泣き叫んだ事で呆気なく壊された・・・・・・。





さよならテアラリ島、またいつか。


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