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キモオタの俺を殺そうとした黒髪美少女は異世界では俺の可愛い妹  作者: 伊津吼鵣
第7部 ケンゲル王国侵攻戦~テアラリ島3部族同盟交渉編
102/219

最強と絶対的強者

「そりゃ、こんなのが姉にいたら卑屈にもなるよな・・・・・。」


その女の身体を間近に見た俺の最初の印象だった。

レイシア・テリクの姉であり現テリク族族長ケイト・テリクである。


前にテアラリ島にいた時はケイトはテアラリ島3部族特有の『普段着』の時が多く、それだけでも十分エロさを醸し出していたが、今は違う。

ビキニアーマーを身に纏い勇壮を感じさせ天然と鍛え上げられたの筋肉のハーモニーに覆われていると一目で解る、謂わば『テアラリ島3部族の理想像』がそこにいるのだ。

俺だって、もう1人の『テアラリ島3部族の理想像』のラウラと常に一緒にいた訳だから慣れているはずなのだが、ラウラには悪いが俺の印象では遥か上に感じた。


そんなケイトを意識してか、それとも『これはテリク族内の事』と位置付けているのかテリク族の者達はビキニアーマーを身に纏い、前族長エリデネでさえ今は普段の薄手のコートような服でなくビキニアーマーだ。

こちらも熟女の色香を醸し出し十分にエロイ。

それに対して他の2部族の者達は遠慮してか何時もの『普段着』だ。

リラやホリーでさえ『普段着』である。


どことなく重苦しい戦いの場と位置付けられた一騎打ちの仕切りを依頼されたリラ・テアナにより設定されたテアナ族族長宅前の砂浜に、もう1人の今日の主役が両脇を抱えられ到着した。

ソニア・テリク又の名をソニア・コルメガである。


「伯母ソニアよ・・・・・『誇り』を纏わなかったのか。」


ケイトはソニアの為にビキニアーマーを用意していたらしいが着てこなかったようだ。


「もはや誇りを捨てた身、私が纏っては先人の戦士達に失礼ではないか。」


約1ヵ月飲まず食わずで更に不眠不休で幻落丹に蝕まれた戦士達の治療に取り組み痩せ細ったカルム王国の一般的な軽装姿のソニアが力ない笑顔で言った。


「そうか・・・・・是非に及ばず。」


諦めのような顔を浮かべたケイトに対しソニアが無理矢理の笑顔を作り優しく言った。


「さあ、私に新しいテリク族の族長の力を見せてくれ。」


そんなソニアの言葉のせいかケイトはゆっくりと立ち上がると傍らにいた自身の主武器である同族に持たせたクレイモアを引き抜いた。


テアラリ島3部族武闘祭のように砂浜に50M四方に杭を打ち縄を張り巡らせただけの簡単な作りの決闘場にソニアが入る前に自身の主武器である奇しくも同じクレイモアが渡された。


幾つもの戦場を供にしたであろうクレイモアに感謝でも述べるようにソニアがキスをした

、これが最後の戦いだと考えているのだろう。


「伯母ソニアよ、まずは戦士達を救って頂いた事に感謝する。そして今これより始まる戦いに最初から自分の持てる力の全てを出す!」


そのケイトの丁重な言葉にソニアは微笑みリングに入ろうとした、その時だった。


「立会人殿、悪いが3分で良い。時間を頂けるか?」


俺の隣りにいたメリッサの声が固唾を飲む集団の中で響き、その願いは立会人のリラに許されソニアに近づき丸い皮製の水筒と紙に包まれた小さな物を渡し言った。


「お前は私の後を走る者だ、だから私より先に死ぬのは許されない。」


そう言うとリラに一礼し俺の隣りに戻って来た。


「姉ちゃん、何を渡したんだ?」


「カルム王国の葡萄酒とチーズだ。航海の楽しみにしてたのに船酔いだったからな。食べられなかった。」


「初めから、この瞬間にならないとソニアさんは食べないと予想してただろ!」


メリッサの気遣いと言葉に感じ入ったものがあったのか暫らく祈るように目を閉じていたが開き一気に食し飲みケイトに向かい叫んだ。


「ケイト、そう簡単には死ねなくなった!抗わさせて貰うぞ!」


そう言われたケイトも応えるように叫んだ、少しは安心したような顔をしてである。


「その言や良し!」


リラから頼まれたのであろうアン・テアナの合図の言葉を皮切りに一騎打ちが始まった。


2人のクレイモアが火花を散らし激突し真正面からの撃ち合いから始まったが、やはり明らかにケイト有利は覆らず圧倒的な攻撃にソニアがやっと防御する展開になったが暫くして、その場にいる誰もが気が付いた。


確かに圧倒的にケイトがパワー押しで攻撃に出ているが一度としてソニアに当たらず体勢も崩れないのである。


「ケイトの剣を受け流している。」


リラが呟き説明してくれたが剣を受けた瞬間に力の方向を自分の剣で変えている、武闘祭でリラがやった方法をクレイモアでやっていると教えてくれた。


「さすがは『テアラリ島3部族最強』だけど、ケイト相手に何時まで保つかな。」


そのリラの言葉通りには、受け流していたソニアだったが段々と体勢が崩れ、やがてケイトの一撃を受けた瞬間に吹っ飛ばされ砂の上に這いつくばった。


「受け流されてもケイトは自分の力で切り崩せると分かっていたから続行した。ソニアも分かっていたけど続行せねば殺られると踏んだ。せめて万全な状態だったら隙を見てケイトに攻勢にも出れたのだろうけど‥‥。」


惜しいというような顔をしリラが呟いた。


「さすがは我が伯母ソニア。せめて万全な状態で戦いたかったが。」


「ケイト、戦いにおいて敵は自分の状態など考えてくれないと教えたはずだ。」


ソニアはケイトにも教えた事があるのかと思った瞬間、ケイトが応えるように俊速の速さで襲い掛かった。


一撃一撃が確実に重く激しく放たれ嵐のような剣撃にソニアが抗えず急所はなんとか躱すが全身に傷を負っていった。

そしてケイトの横一線の一撃が放たれた時、受け止めはしたが10Mは吹っ飛ばされ倒れた。


「嵐のような攻撃、見事だ。」


「伯母ソニアよ、これで終わりにしましょう。」


そう言ってケイトが腰を屈め最大の力を込め構えた時、ソニアが少し笑い腰をどっしりと屈め上半身をユラユラと動かせる奇妙な構えをした。

その体勢の構えを俺は見た事も戦った事もある。


俺と一騎打ちした時のメリッサがやった構えだ。

あれをソニアにも出来るのか⁉︎


ソニアがユラユラと上半身を動かせながら一瞬だけメリッサの方を見た。

まるで別れの挨拶をするかのように。


「ソニア‥‥‥ここではダメだ、それに今のお前では‥‥‥」


メリッサの唸るような呟きが俺に聞こえた瞬間、揺らめたソニアがケイトの視界から姿を消した瞬間を捉え攻勢に転じた。

その一撃はケイトの右肩を僅かに掠る程度だったが出血を伴い体勢を僅かに崩す事には成功した。


だが、これはメリッサから言わせれば失敗だった。

足場が砂地の為に瞬間的な踏み込み動作に遅れ且つ今のソニアの体力では技に対する動きを完成させられないのだと俺に教えてくれた。


しかし、これが最悪だがケイトの『本気』を呼び起こす結果となってしまった。


「アベルさん、以前に私達が『絶対的強者』だって言ったのを覚えていますか?もうすぐ理由が分かりますよ。」


突然だった。

ケイトの小麦色の肌が熱を帯びたように赤くなっていき

身体の中の何かが燃えている⁉︎そんな感じだ。


「これ‥‥‥ラウラと一緒だ!」


ムフマンド国でラウラがマンティコアを、たった1人で倒した時も鬼気を放ち小麦色の肌が赤くなっていた。

あの時のラウラと同じだ。


その事をリラに話すと驚く顔を見せたが直ぐに俺が更に驚く結果となった。


「ラウラも『獣化』したんですか!それは凄いですね。」


「『獣化』って言うんですか⁉︎これと間違いないです、同じように赤くなって‥‥‥」


「凄いとは思うけど、私達とは質が違うんですけどね。」


「質⁉︎」


「前に話した『絶対的強者』の続きですが、どうして族長に長女しかなれないのか、それは長女には『獣化』の力が理由は分からないけど確実に遺伝するからです。でも偶にいるんですよ、次女なのにラウラみたいに『獣化』する事が出来る子が。でも幾ら『獣化』出来たとしても時間が違うんです。」


「時間?」


「アベルさんは聞いた事ないですか?私とケイト、ホリーとケイトが決闘した話を?その決闘を行なったのは3日間です、つまり私達は『獣化』を3日間維持出来るんです。

対してラウラは恐らく4時間程が限界でしょう。

まぁそれでも凄いんですけどね。」


「じゃあケイト様は今まで本気じゃなかったって事ですか?」


「いえケイトは真面目ですから本気だったでしょう。

しかし『獣化』は自分の中で鬼気が生まれ敵を強者と認めた時、そんな敵を確実に葬りさると決意した瞬間しか出現しないんですよ、私達でも無闇矢鱈には出現させられませんから。」


なんて事だ。

ラウラがマンティコアを倒した時の力を3日も維持出来るなんて‥‥‥。

そりゃ族長に長女しかなれないはずだ。


『獣化』したケイトが反射神経、力、技、速さなどでは言い尽くせぬような、敢えて言うなら潜在能力が3倍にも4倍にも桁違いに増加したような動きを見せ襲い掛かり、最早体力も尽き気力だけで戦うソニアを容赦無く傷付けていった。


そしてソニアが俯せにゆっくりと倒れた。


「我が伯母であり、テアラリ島3部族最強と呼ばれたソニア、さらば!」


そう叫んだケイトが自身のクレイモアを高々と振り上げた時だった、この場にいた誰もが言葉を発せぬ中で突然メリッサが叫び始めた。


「敵を薙ぎ払え。我ら血色の鎧を纏う者達の恐怖を敵軍に刻み込め、殲滅せよ!」


一瞬、何だそれ⁉︎と思ったが、それはメリッサ直属軍が出陣する際にソニアが叫んでいた言葉だった。


今、何故そんな事を言ったんだ⁉︎

そう思った時だった。


「天よ照覧あれ!カルム王国と女王アルベルタ陛下に栄光あれ!いざ出陣!」


メリッサの言葉に応えるように出陣の際の締め括りの言葉を呟きながらソニアが立ち上がったのだ。


そして信じられない事が目の前で発生した。


ソニアの肌が赤くなり始めたのだ。

『獣化』したのだ。


「テリク族を裏切った時から決して使わぬと誓った力。しかし戦友は私に生きろと言ってくれた。戦友の為に今一度抗わさせて貰うぞ、ケイト!」


「さすがテアラリ島3部族最強!これに応えずに何がテリク族族長だ!」


だが、いくら『獣化』出来たとしても万全な状態でも4時間、俺は今の状態では保っても良いとこ5分だと思ったがリラも同じように思ったのか5分だと言ってきた。


『獣化』した者同士の剣撃が繰り広げられ、そして剣と剣がぶつかり合い、火花を散らした。

しかし、ソニアがケイトの剣に合わせるように剣を振りかぶり、ぶつかったと同時に俯せに倒れ気絶し勝負がケイトの勝利で終わったと分かった。


「とどめを刺しテリク族の恥を注ぎなさい。」


そうエリデネが言うとケイトが遣り切れない顔を見せクレイモアを持ち上げた時だった。


パキッ!そんな音を立ててケイトのクレイモアが折れたのだ。

ソニアは最後の力を振り絞りケイトのクレイモアを狙い折に掛かっていたのであった。


それを見たケイトがニヤッと笑うと母であるエリデネを見て言った。


「母様、いや前族長エリデネよ、これでは私は最早戦えぬ。」


「何を言うケイト!それではテリク族の恥は注いでいないではないか!」


「現族長の私が戦えぬと言っているのです!お分かりか⁉︎それとも自分の妹を余程殺したいのですか?」


「ケイト‥‥お前、誰に向かって、その言葉を言っている⁉︎」


「はっきり言う貴女にだ。伯母ソニアは私と立派に戦いテリク族の名に恥じない戦いをした、そして私はソニアの罪は消えたと判断した。現族長としてだ!」


それからケイトとエリデネの母子の睨み合いになり更にはテリク族の戦士達の間でも言い合いが始まったのだ。

これは共通騎士としての俺から見ても異常事態であった。

子が親に逆らい歳下の者が歳上の者に逆らう、他の国なら普通の事なのであろうがテアラリ島では許されない事なのだ。

まして実直な性格で知られるケイトがエリデネに逆らい反抗し自身の主張を曲げず、母を批判したのだ。

歳上を敬い尊敬する、それが当たり前で常識のテアラリ島でテリク族の前族長と現族長が互いの立場から反目したのである、それがテリク族の戦士達にも伝染したのだ。


ケイトの意見に賛成した者は若い戦士達が中心であり、エリデネのように納得出来ないと考えるのは比較的壮年の部類の戦士達であった。


口々に主張を叫び、それが互いに受け入れられないと判ると剣や槍を構える者まで現れたのだ。


そして、より最悪な事態になりテアナ族やテラン族の者達まで感化され言い合いを始めたのだ。


リラやアンそしてホリーが懸命に止めようとしたが3部族の戦士達は言う事を聞かず一触即発寸前になっていった。


「ケイト・・・・・今直ぐ私の首を刎ねろ・・・・・今直ぐ。」


騒ぎで気絶状態を脱したソニアが必死に叫ぶが、最早彼女だけの問題ではなくなっていたのだ。


どうしたら良いんだ!?


そんな焦った俺は思い出した。


「どうしようもないと思った時、これを族長達に見せなさい。」


カルム王国女王アルベルタが俺に言った言葉であり封筒の存在であった。


「リラ様!これを見て下さい!」


この状況で何を!?とあからさまな顔をしながら封筒を開け見てくれたリラが一瞬にしてギョっというような顔になり、アルベルタの手紙をアンに渡し、アンからホリーへ、ホリーからケイトへ、ケイトからエリデネと渡り一斉にギョっとした顔をしてメリッサを見た。


見られたメリッサも何故見られているかに理解出来ず、当然俺にも理解出来なかった。


「メリッサさん・・・・・貴女の女王は本気でこれを書いたのですか?」


リラが代表したかのように言ったが、一体どういう意味だ?


アルベルタが書いた手紙を見せて貰うととんでもない事が書いてあった。

だがメリッサはニヤッとし笑い出した。


「さすがは私が忠誠を誓う女王アルベルタ陛下、良く判っていらっしゃる!」


『全ての件で文句があるなら我が臣メリッサ・ヴェルサーチに勝ってから言え!負けたらテアラリ島3部族の誇りに賭けてガタガタ言うな!』


無茶苦茶だ・・・・・・。










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