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12.勝利の雄叫び

 ふぅ、シェリル達に怪我は無いみたいだ。よかった。あんなにでかい化物が出てきたときは肝を冷やしたけど。


 にしても遠くの方がやけに騒がしい。ああ、騎士たちの声か。まぁ、大量に出現した化物から王都を守ったんだ、そりゃ勝利の雄叫びをあげたくなるよな。


 あれ、シェリル達が驚いた顔でこちらを見ているぞ。離れているイザナ達も騒然とした顔をして。

 特にルルナは口をパクパクしていて何か言いたそうな顔だ。


 彼女の言いたいことは分かる。無理もない。『神器』でない通常武器で『異界』を倒してしまったのだから。というか俺が訳を聞きたいくらいだ。


 イリカ村で俺は『異界』を二之型で攻撃したが、その時はまったく効いていなかった。

 相手の注意を引くくらいにはなるだろうと思ったのだが、それが今は俺の攻撃が通用したのだ。

 やはり考えられるとしたら『生命の木セフィロス』が関係しているのだろうか。


 宝石弾けちゃったけど。


 あれこれ考えていたら救世主の皆が俺の周りに集まってきた。その説明しろといった表情は勘弁してほしい。俺もなんて説明したらいいか分からない。

 さてどうしようか。


「カ、カズマ君! ちょっとどういうことなのか説明して! なんで『神器』を持っていない貴方が『異界』を倒せるのよ!? てか、何その能力は!!」


 ルルナ、そんなまくし立てながら胸ぐらを掴まないでくれ。揺れが激しすぎて吐きそうに……うっぷ。

 王の謁見の時はお淑やかで如何にも皇女様って感じだったが、この砕けた態度が彼女の地なのだろう。年相応の女の子。


「落ち着くんだルルナ姫。私も同じ気持ちだが、今は早くこの場を撤収するのが最優先だろう。もうじき陽が沈む。それまでに負傷者を救護し結界を張らなくては」


「うっ……。確かにシェリルさんの言う通りね。いい? カズマ君。後でちゃんと説明してよね?」


 いや、説明も何も俺もわからないんだけど。


「すまないがイザナ、3人を安全な場所へ連れて行ってくれ。ルルナ姫は負傷者の救護をお願いしたい」


「了解っすー! さ、ちゃちゃっと王都へ戻りますよー!」


「あれ? シェリッチはどうするのよ。一緒に戻らないの?」


「ああ、一応念のため撤収作業が終わるまで警戒をしている。なに、心配するなイオリ。あれほどの『異界』を倒したのだ。暫くこの付近は大丈夫だろう」


 シェリルの優しく微笑む姿に見とれてしまう。俺たちを心配させないように振舞う姿は正に騎士の鏡だ。未だシェリルの握る『神器』は黄金色に光り輝いている。


 皆の不安を払うかのように。


「そういうことよイオリさん。ここは先輩であるシェリルさんに任せて貴方たちは戻って休んだほうがいいわ。実際、初めて『神器』を使っての戦闘で精神エネルギーを相当消費したはずよ」


「ふむ。実は拙者、ルルナ殿の言う通りかなり疲れているでござる。話を聞いていた以上に、これ程までとは思わなかったでござるよ。肉体強化されるが精神は摩耗する。正に諸刃の剣でござるな」


 ぺたりとその場に座り込む久遠。腰から生えている尻尾がこうべを垂れるようにシュンとしている姿は正に犬のようだ。

 そういえば先程イザナも同じようなことを言っていた。


「わかったわ。なら先に戻っているわね。ほら、くーちゃんしっかりして」


「ううぅー、かたじけないでござる伊織殿」


「さ、出発っす! ほら、カズカズも!」


 久遠は姉貴に肩を貸してもらいながら歩き、イザナに関しては流石というべきかケロッとしている。


「じゃ、私は先にいくわ」


 おーい、ルルナさん、そんな短いスカートで空を飛んでいたら……いや、やめておこう。


 姉貴たちの後を追う。

 暫く歩いたあと、ふと足を止め振り返る。


 振り返った先には、黄金色に輝く『神器』を携え暗闇の先を見つめる少女がいる。

 力強く立っている後ろ姿は安心感を与えると共に、何処となく寂しさも感じ取れた。


「おーい、和馬? どうしたの、早くいくよ」


「あ、ああ。わるい、姉貴。先に言っててくれ」


「えっ? ちょ、ちょっと和馬!?」


 背中越しに姉貴の声を聞きながら、俺はシェリルの元へと戻っていった。


 

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