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不完全な精霊の歌  作者: 三毛猫プロジェクト
第一章 明るい未来へ
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出発します

 アレク達の通っている学校はスウセルア王国の首都ガゼルにある。その名をアルシオン学園と言い、幅広い人材を育成する為の学校のようで才能ある若者にのみ門扉を開くという。

 生徒達の才能を開花させることは勿論、幅広い分野を学ばせる為に八年間在学する。

 その為、卒業生は引く手数多なのだそうな。

 アレクの言葉をまとめるとこんな感じらしい。

 という事は、アレクもイルも才能を認められているすごい人なんだ。

 アレクは剣の才能。イルは魔法陣と魔道具を作る才能があるらしい。

 魔道具とは、魔力を通しやすい素材に魔法陣を仕込むことで、魔力を流すだけで発動する道具なのだとか。魔法陣は、羊皮紙や布に描いたものに魔力を通すと発動するらしい。

 魔道具は規模の小さい効果しか見込めない代わりに、周囲に分かりずらい特徴があり、魔法陣は大きく描けば描く程効果が見込めるものの消費魔力が多く、戦闘時の運用が難しいとイルが言っていた。

 思考の海から戻る。わたし達は今馬車に揺られてガゼルから離れている。

 いよいよ今日から演習なのだ。

 演習とは三年生から参加が義務付けられているらしく、集団で魔物を倒す実践訓練らしい。班に分かれて目的地まで、何日かかけて向かわなければならない。しかも学年混同の班なため、八年生であるアレク達が指揮して行かなければならないのだ。

 そのせいか皆がピリピリしていて、肌に突き刺すようだった。かなり居心地が悪い。

 よし、歌おう。そうしよう。どうせ聴ける人はアレクしかいないし構うものか。

『人生は当たり前だけの世界だけじゃない

 時には間違えたっていいさ

 自分の人生だもの

 好きなように生きてしまえ

 後悔してからじゃ遅い

 できるだけの力があるはずだから

 忘れるな己の情熱を』

 スッキリした。気のせいかチクチクしたものも感じなくなった。やっぱり歌うといいわ。

 この時エーテルは気づかなかったが、アレクは見ていた。

 湧き出した光がアレク達に吸い込まれて、それから顔が穏やかになったところを。

 思わずエーテルを凝視したが、本人は居心地が良くなったと呑気なものだった。

 それから数時間後、ようやく演習開始場所に着いた。

 先に来ていた教師によって整列され、三年生から八年生まで並んだ様は圧巻だった。

 皆練習試合のような革の胸当てではなく、防御魔法が練りこまれた戦闘用の制服を着ていた。しかも学年ごとに色が違う。

 そして次々と先生によって班を振り分けられて、決められた待機場所に移動して行った。

 アレクはC班みたいだ。着いて行くと十人いた。どうやら一学年二人ずつのようだ。

 とすると、八年生のもう一人は誰だろうか。イルだと良いんだけど。

 しかし現れたのは女生徒だった。正直がっかりしたことは許してほしい。

 イルがいたら心強かったのだけれど、決まった事だから仕方がない。

 まあわたしは参加できないから関係ないんだけれどね。

 女生徒の名前はウィーシャ・トルネ。黄色に近い淡い黄緑の髪をしている。確か若芽色と言った気がする。頭の上の方で一つに結った髪は肩に触れる位で、瞳は琥珀色。彼女の得物は小型の弓のようだ。肩に斜め掛けしている矢筒には何十本もの矢が入っている。後、腰のホルダーには大きめのナイフがぶら下がっていた。

「やあ、アレックスが一緒だと心強いね。よろしく。」

 ウィーシャはニッと笑って握手を求めた。

 アレクはそれに応じて、よろしくと短く返した。

 それから各々の名前と得意分野を順番に言わせて、アレクとウィーシャは相談し始める。

 アレクが先頭で、四年生から七年生の前衛職四人、今回初めて参加する三年生二人を真ん中にして、四年生から七年生の後衛職の四人、殿(しんがり)をウィーシャ。この隊列で進むらしい。

 敵発見時の隊列と合図、奇襲された時の対応、はぐれた時の合流の仕方などを確認していた。

 準備が終わると、あの中年の先生から人数分の携帯食料の入った大きめのリュックと地図を二枚渡された。

 リュックを全員に配布し、地図はアレクとウィーシャが持つ。

 山を越えて森を抜ければ終わるみたい。

 こうしてアレク達C班は日の高くない時間に出発した。



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