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不完全な精霊の歌  作者: 三毛猫プロジェクト
第一章 明るい未来へ
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友達になってください

 初めて見る男の人の部屋は散らかっておらず、必要な物しかないような印象を受けた。

 部屋の広さは七畳程だろうか。わたしの部屋より広い。

 テーブルに椅子、ベッドに本棚。クローゼットにベッドの脇に大きめの剣が立て掛けてあった。後は用途不明の小物があるが、可愛らしさの欠片もなかった。

 男性の部屋に可愛らしさを求めるのは酷だが、遊びはあってもいいと思うのだ。

 弟はわたしが作った不細工な熊のぬいぐるみを反抗期になっても隠してはいたが、大事にしていたのを知っている。なんて可愛い弟なんだろう。

 わたしが弟を妄想の中でわしゃわしゃと可愛がっていると、いつの間にかアレクの部屋は散らかっていた。

 犯人はイルだ。

 木箱から物を出して、これがーーの部品になるんだ。ここにはーーとーーの魔法陣を描いて…とか言っているが、わたしには意味が分からず、聴いていると頭が痛くなるので聴き流した。

 アレクは呆れながら話しを聞き質問していた。アレクはこの難解な言葉が分かるのか。

 どちらも学があるのか。その会話はどこか知らない外国語のように思えて、疎外感を感じた。

 悲しくて悔しくて、でもそれは自分が勝手に思っているだけで、彼らには非がないのに仲間外れにされた気がした。

 わたしが勝手に入ってきたのにね。イルはわたしの事見えないし、しょうがない事なのに。

 自分が嫌になった。




 気づけばイルが部屋を出ていくところで、わたしもいい加減に出てった方がいいのかもしれない。でも、アレクと話したかった。そしてできれば友達になりたい。

 アレクに出て行けとオーラが発せられても、気にしない。会話をしたかった。

「わたしね、小さい酒場で歌を歌ってたの。」

 アレクはなんだこいつと表情に出てたが、無視した。

 止めるつもりはさらさらなかった。聞いて欲しかったのかもしれない。

「でもね、突然スパイだって捕まって処刑されちゃったの。あ、勿論スパイじゃなかったよ。誰も聞いてくれなかったけど。」

「それからわたしこんなんになっちゃって、何十年何百年も家族を捜したけど見つからなかった。」

 チラリとアレクを見たが、気まずそうにしている事からちゃんと聞いてくれてるんだなって思って嬉しかった。

「寂しかった。だから、アレクと会えて嬉しい。会話したい。友達になりたい。駄目、かな…。」

 駄目だと言われてもくっつくつもりだけれど、良いと言って欲しい。

「駄目だと言ってもつきまとうんだろ。だったら話しぐらいは聞いてやる。」

 顔が輝くのが自分で分かる。彼には分からないであろうこの喜びは。なんたって、今まで孤独だったのだ。

 それを紛らわす為に歌ってきた。

 それから一方的に家族の事から歌の仕事。当時の帝国の流行りものなどを話して満足した。

 そして我にかえって、一方的に話していた事に気付いて慌ててアレクに話しを振るが、考え込んでいるようで返事がこなかった。

 やがてようやく口を開いた。

「お前二百四十年前の人なわけ?」

 どういう事か聞いてみると、今は聖暦千八百五十九年で、帝国対王国と周辺国の戦争は聖暦千六百十二年から六年後に終結したらしい。

 ちなみに聖暦とは人類が神から知恵を授かった年から数えてきたらしい。

 素直にアレクの知識に感心した。

「アレクは学び舎に行ってるの?」

「今通っている」

 他にも聞いてみるとアレクは十八歳であるとか、学び舎ではなく学校、学園と今は言うらしい。ジェネレーションギャップすごい…。

 イルの事も聞いてみた。どうやら親同士が仲良くて知り合ったらしい。また発明馬鹿で、アイデアが湧くと止まらないだとか。

 なんだか今日だけで大分打ち解けた気がする。もう友達のような気がする。友達と言っても良いはずだ。

 なぜか自信満々に決めつけて、今日はもう部屋を出ることにした。

 久しぶりに気分が良い中で歌おう。

 外に出ると夜の帳が降りていた。

 ちょうどいい木があったのでフワリと浮いた。

 木の枝に腰掛けて、月を見上げて歌う。

『嗚呼太陽が眩しくて

 遠くて

 追いかけても追いかけても

 届かなかった君に

 やっと届いた気がする

 君はいつも光を届けてくれていたのに

 気づかなかった

 愚かな僕を許して

 何も返せない僕だけれど

 君のそばにいる許しをください』

 恋歌だけれど、ようやく見える人に会えた今日にちょうどいいかもしれない。

 嗚呼、今日も月が綺麗だ。




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