四話
クラス
(元気のいい連中)
[そういえばさ、この夏にWBCあるよな]
[野球のか?]
俺が質問すると、ソイツは、そうそう、と頷いた。
[というか、野球以外WBCなんてあんのかよ]
[ほら、たしかボクシングでもあったはずだぞ]
[知らないよ、そんなの]
するとソイツ2が
[前は日本勝ったんだっけ?]
と、言った。
[そうそう、あんときのダルビッシュの投球よかったよな]
[そうなのか?]
[ヤバかったね、ビューって球走ってたしさ]
ソイツは俺の質問に興奮気味に答えた。
ソイツはいきなり立ち上がると
[こうさ、構えて]きっとダルビッシュの投球フォームのつもりなのだろう。足を上げるとシュッと腕を降り下ろした。
[あーやばい野球したくなってきた、やりにいかね?]
[はぁ今からかよ]
[いいじゃん昼休みまだあるんだし]
ソイツは俺とソイツ2を立ち上がらせるとクラス全体に
[野球やろうぜ!]と、声をかけた。
なんという行動力。その声にクラスメイトの大半が反応して、そしてソイツと共に教室を出ていった。
そのときふとクラスの中央を占拠している女子等に目を向けた。その女子等は明らかに、出ていく男子に嫌悪感むき出しの表情を浮かべている。
俺はそんな女子に蔑む目を向けた。
コイツらは、こんなクラスで喋るだけで楽しいのか?
学生の内にバカしないといつするんだろう
背伸びの恋愛ばかりで、それが社会に出た時に
誇れるものにはならないはずだ。
[なにやってるんだよ、お前の居場所はクラスじゃないだろ。野球しようぜ]
と、ソイツから声がかかったので
[そうだな]そう言ってクラスを出た。




