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三話 3
(長男)
刑事の事情聴取が終わって、リビングから出ると、廊下を摩るような音がした。振り替えると、そこには犬がいて、俺に向かって牙むき出しで威嚇していた。
一歩、犬に近づくとそれだけで何度も何度も吠えてきた。
俺はその様子を鼻で笑った。
コイツは本当に父に似ている。特に人の性格を修正してこようとするあたりが飼い主に似ている。
俺はおもいっきり蹴りあげると「キャン」と悲鳴をあげた。いいきみだった。
アイツを刺したときも同じように快感だった。声も出せないのにのたうち回る姿は動画に残しておきたいほどだった。
もともと勉強を強要した父が悪いのだ。殺されても文句は言えまい。
そのとき犬は起き上がってきてまた吠え始めた。俺は蹴りあげる。悲鳴を出す。
快感だった。俺の笑い声が廊下に響いた。
本当にコイツは父に似ている。何度も言ってくる辺りがアイツの片鱗だ。
俺は犬の首根っこを荒々しく掴むと家を出た。
三話 完




