二話1
ニコニコスーパー
(人)
「やったのはお前だろ」
店長は俺に疑いの目を向けた。
「違いますよ」そう言ってもその視線から免れることができなかった。
「じゃあ五時頃、どこにいたんだ?」
「その時間帯は休憩室でタバコ吸っていました、ただそれだけです」
「ほんとうかい?」
「本当ですよ」
給料袋が盗まれたのは、つい一時間前だった。
俺と違う人の休憩時間の間に行われた犯行だった。
どれだけ俺が人相悪くてもそんなことはたらかない。
店長は腕を組む、ニコニコスーパー店長、と書かれた腕章が手で見えなくなった。
「あの時間、犯行は君以外分からないんだ、君は人相も悪い。認めたらどうだ」
「そんなので決めないでください、僕はやっていません。それに他はいないんですか?」
俺の質問に店長は首を傾げた。
「他? 考えてみてくれよ君。君の前に入っていた前田くんが休憩しているときには誰も来ていないんだよ?ということは私が事務所の電話を取った以外にこの裏側には誰も出入りしていないんだよ」
「やってません、それに給料袋がどこにあるかも知りませんでした」
店長は薄ら笑いすると「嘘つくな」と、言った。
「君が昼来たとき真っ先に、ロッカーの上にあると話しただろう」
休憩室とロッカーは場所が離れている。ロッカーは搬入口近くにあって、休憩室はその奥にあるのだ。
「とにかく、給料袋が見つかれば君が犯人だ。警察が来るまで待っていなさい」
「待ってください」
そんな俺の言葉を聞かずに店長は休憩室を出ていった。




