容疑者8
因みにまだまだ続きます。
琢磨は全員を集めた。
「犯人が解った。」
はっきりとそう言う。
一番始めと同じように
「犯人はここにいる」
と言う。
それは正解だった。
「誰だよ!」
日向が強張った表情で言う。
「ああ。でもその前に、、、いろんな説明からしなきゃならない。」
「は、はやく言いなさいよ!」
真姫が声をあらげる。
「焦らないでくれ、焦ったって何も変わりはしない。」
「わかったわ。ごめんなさい。」
「いいんだ。んでまずは、、、」
琢磨はあらゆる棚の扉を開く。
「な、何をしてるの琢磨」
荒木の声
「まぁいいから」
琢磨は一つずつ開けていく。
その表情は悲しみが含まれている。
そして、残りの棚は一つになった。
「ここに人間がいる」
琢磨はそう宣言した。
「えっ?」
全員が驚く。
「いいか、ここにいる人間。俺の問いにYESなら一回、NOなら二回ノックしろ。」
ノーリアクション
「お前はずっとここにいたか?」
コン。
一回、すなわちYES
「すべて知っているか?」
コン。
YES。
「その中は暑いか?」
コン。
YES。
「お前は犯人か?」
コンコン
二回。すなわちNO
「そうか、、、ならお前は」
琢磨は残酷な問いを投げ掛ける
「結衣子が好きか?」
コン。
YES。
「さて、開くか。」
そう言って琢磨は棚の扉を開く。
そして、汗だくでただただ眺めていて
泣いていた俺と目があった。
「時雨!」
全員が驚きを隠せないでいる。
俺は棚からでる。
「あんたがやったのね!」
真姫が睨んでいる。
「いや、こいつは犯人じゃない。」
琢磨はすべてを悟ってくれている。
「あぁ。俺は、俺は犯人じゃない。」
「じゃあ犯人は誰よ!」
その真姫の問いに言葉を詰まらせる。
琢磨を見る。
犯人を言うべきなのか?と目で聞く。
言うべきだ。と返される。
「じゃあ言うよ犯人は、、、」
全員の鋭い視線を受けながら
溢れる涙を抑え
ゆっくりと
聞き取れないことがないように言う。
「強いて言うなら綾瀬雄大本人だよ。」
「は?」
琢磨以外のみんなが目を丸くしている。
「嘘つくんじゃないわよ!」
真姫、、、
「琢磨、、、説明してくれ、俺じゃダメだ」
「ああ、そのつもりだ。」
俺は、綾瀬が死んだ瞬間を見た。
「さて、まずこの日までの経緯を推測だが、、、言うよ。
「雄大と時雨はこの日のために、俺たちにドッキリを考えた
「それは加織の叔父も仕掛人だろう。」
「だから、、、叔父さんの電話番号を聞いたのね?」
俺は頷く。
琢磨は続ける。
「加織の叔父は有名作家だからな、すべて彼が考えたんだろう。」
「うん」
俺は頷く。
「床にはケチャップ、トマト。トマトにはマジック用のナイフの柄を刺す。そして、それに向かって椅子から飛び降りる。そしたら万が一、すぐに誰かが来ても背中にナイフが刺さってるように見え、音も出て、痛みで本物のような叫び声も出し、全員が集まるってわけだ。」
その琢磨が言った内容は加織の叔父が立てた計画と一致している。
「この叫び声と共に時雨は走り出す。逃げている途中を俺達に見せるため。俺達が見たのを確認して、自分でナイフを抜いた。いや、あらかじめ用意していた本物とすり替えた雄大は、アイツを追いかけろ。と言う予定だったハズだ。」
俺は頷く。
「男は追いかける。女たちは雄大の手当てをしようとするはず。んで男が追いかけた後に女たちにはネタバラシ。そして、犯人を見つけられず帰ってきた俺達に更なるドッキリを仕掛けよう。的な魂胆だったハズだ。」
「うん。」
「しかし、問題は起こった。椅子から飛び降りた音は聞こえたのに叫び声が聞こえなかった。そして、心配になり、中を覗くと、マジック用と本物を間違えた雄大が死んでいた。そんなところだろ?」
「そうだよ。」
ほぼ完璧。
「でも、じゃあ何故、時雨は隠れてたのよ!犯人じゃないって言えば良いじゃない!」
「それは、、、」
「琢磨、これから先は俺が話すよ。これは雄大の提案なんだ。」
俺は息を整えながら話した。
「中をみたら息が荒く苦しそうな雄大がいた。最初は打ち所が悪かったんだって思った。でも異常な苦しみ方に気が付いた。
『俺はもう声がだせなくなる。今、みんなを呼んでしまうと明らかにお前は犯人とみなされ、殺されてしまうかもしれない。だから加織の叔父が明日来るまで隠れてろ。あと、、、俺きっと死ぬけどさ、真姫に好きって言っておいてくれ。』
『何言ってんだよ!』
『一応、自殺です。って血で書くから、、、はは、、、情けねぇ。』
泣いてた。俺もアイツも。
『しっかり隠れてろよ。』
『あぁわかったよ』
俺は隠れた。
そして、真姫が来て、ダイイングメッセージの血で足を滑らせた」
「だから消えていたんですね?」
「うん。」
それが真実。
俺のせいで死んだと言っても過言じゃない。
「真姫、アイツはお前のこと大好きだった。」
その言葉に泣きじゃくる真姫。
その涙はやっと昇り始めた朝日に照らされ、輝いていた。
は?意味わからんって思っていただいたあなたが正解かもしれません。