恋人廊下~white~
実話です、このお話。私の・・・。
でも両思いになったのは妄想ということで(汗)
なぜか、私の楽しみは塾だ。
でも勉強目当てじゃない。あいつに会えるから。会いたいから。
カタン。椅子に腰掛ける。その席は決まってあいつの一列前。
なぜかって?あいつにからかわれたいから。悪戯させられたいから。
この塾には私のほうが先に入った。あいつはその一年後ぐらい。
他の男子と仲良くなって、その男子が元々私と仲が良かったから私とあいつも仲良くなった。
最初はあんまり気になっていなかった。良いやつだな、と思うだけで。
でもだんだん変わっていった―――――――――あなたへのキモチ。
ねぇ、気づいてる?私からの想い。
でも三ヶ月したら会えなくなるんだよね。クラスが違ってしまうから。
どうしてこんな事になってしまった―――――――?
今はあいつと二人きり。私とあいつしかいないから。
なのに私は動けなかった。とても緊張してしまっていて。
あいつは私のことどう想ってるの?
そしてあいつの男友があいつの隣に座った。ちょっとだけホッとした。
しばらくすると、笑い声が聞こえた。まるで私を馬鹿にしてるような。
「何?」
きっとなり振り返ってみる。
椅子に掛けてある上着のフードに異変はない。
「髪になんか付いてるよ?」
はっとなり髪に触れてみる。でも何もない。
先生が入ってきた。すかさず質問する。
「先生、私の髪になんか付いてる?」
先生は私の髪から何かをとった。
「なんかニットの繊維みたいのものが付いてた(笑)」
先生はそう言った。
思ってみれば今日の私の服はニットのワンピースだ。
「こんにゃろ~・・・」
恨みをつけて二人を睨む。でも本当は嬉しいんだ、悪戯されて。
授業が始まった。まずはテストから。
・・・初鰹っていつだっけ?切れ字ってなんだっけ?
「はい、終わり。前に回して!」
「はい」
私は一裕からテストを預かった。こういうことがあるからいいんだよなぁ、前は。
そうそう、こいつの名前は一裕っていうの。
でもね、さっきも言った。一裕とは三ヶ月しかいられない。
中学にあがるとクラスが二分される。頭がいいクラスと普通のクラス。
私は頭がいいほうに行くことになっている。でも一裕は普通のクラスに留まったまま。
きっと会う機会も少なくなる―――――――――。
時間は過ぎていった――――――――――。
今日は小学校最後の塾。
この日境に私と一裕は会う機会が無くなるだろう。
いつものように教室に入ったらあいつがいた。
「よ」
「よう」
いつもどおりの会話。いつもの風景。なのに違う、何かが違う。
寂しい。もう君に逢えないなんて寂しいよ――――――――――。
「・・・なあ、ちょっといいか?」
一裕が言った。
「え、何?」
「いいから来いよ」
そう言って一裕は私を連れ出した。
「ここ・・・・・・」
ここは恋人廊下という塾でも名の知れた場所で、あるカップルの一人がもう一人に告白したことから
「恋人廊下」と呼ばれていた。今でもそこで結ばれるカップルがたくさんいる。
一裕は廊下のカーテンの中に私と一裕を入れた。これで私達の姿は見えないだろう。
「やっと二人きりになれた・・・・・」
掠れた声で言って、一裕は私の肩辺りに頭をこつん、とぶつけた。
「・・・・・・・」
「好き、だよ美奈」
一裕が呟いた。
「あっ・・・・・」
気づいたら涙が顔を伝っていた。
「もう、会えない、と思って・・・・・」
一裕もそのことは気にしていてくれたんだ。
「私も・・・・・・」
そして私達は唇を重ねた。それは優しく、儚くて今すぐ消えてしまいそうなキスだった。
この「break」版も書きます。