深夜の襲撃
これは、昨年の初夏に実際に我が家に起きた出来事です。
昨今、田舎ならどこでも同じ問題を抱えていると思いますけど、私の住む町も外国人が非常に増えました。それに伴って非常に日常生活にストレスがかかるようになってきました。
畑にビニール袋に入れたゴミを捨てたり、夜中の二時に大声でサッカーを始めたり、家の塀に車をぶつけて壊しても謝りもしないし、猫を放し飼いにするせいで家庭菜園は定期的に滅茶苦茶にされるし、犬の糞を片付けないので、あちこちに糞が散乱してしまっています。
ですけど、これを元から住んでいる我々が我慢をし続ける事が、政府やマスコミのいう「共生」だそうですので諦める他無い。近所のお爺ちゃんお婆ちゃんたちはそう言って我慢し続けているようです。
そんな私の町なのですけど、何年か前からやたらと廃品回収車が巡回に来るようになりました。
「こちらは廃品回収回収車です。古くなったパソコン、コンポ、どんな物でも構いません。動かなくても構いません。気軽にお声かけください」
何でこんなに頻繁に来るんだろう、何度も来たって廃品がそうそう出るわけじゃないのに、何だか気味が悪い。家族たちはその廃品回収車の事をそんな風に言っていました。
ある時、私が庭先で作業をしていると、廃品回収車は私の家の前で停まり、じっとこちらを見ていました。運転席にいたのは恐らく六十代くらいの日本人男性でしょうか。
「何か御用ですか?」
「廃品はないかね?」
「ありません」
ちっと舌打ちし、廃品回収車は行ってしまいました。そもそも客商売なんだから、「ないかね?」じゃなく、普通は「ございませんか?」だろうが。なんだあいつ。ただただ気味が悪い。それがその時私が感じた事でした。
この事を家族に話したところ、もしかして留守家を探っているんじゃないだろうかという意見が。
母親の話によると、以前、玄関先に何やら落書きされていた事があったのだそうです。気付いてすぐに消したそうですが、もしかしてその一環なんじゃないかと言っていたんです。
この廃品回収車が非常に胡散臭いと感じたのには、実はもう一つ理由がありました。
ある時、近所のおじさんがこの廃品回収車にPCの回収をお願いしている声が聞こえてきたんです。スピーカーからは「回収費用はかかりません」とアナウンスしていたんです。ところがこの廃品回収車、近所のおじさんに何だかんだと言い訳して回収費を請求したんです。
という事は、この廃品回収車が巡回しているのは、間違いなく廃品の回収が目的では無いという事になると思うんです。
そして月日は過ぎ、昨年の晩春。
家のブロック塀がかなり老朽化してきて、それを修理しようという話になったんです。その頃、セメントが非常に高騰していたようでして、費用がかなりかかると言われてしまいました。そこで本来予定していた高さの半分だけ交換し、そこから下は既存のブロック塀を残す事になったんです。……それでも非常に高額だったのですけど。
その工事は休日に行ってくれたのですけど、できれば家にいて欲しいと工事の業者に言われ、誰かしらが家に残るという状態にしていました。すると……
「こちらは廃品回収回収車です。古くなったパソコン、コンポ、どんな物でも構いません。動かなくても構いません。気軽にお声かけください」
例の廃品回収車が来たんです。そして、少し離れてはまた我が家の近くを通り、また少し離れては、また我が家の近くを通る。そんな非常に怪しい行動を繰り返していたんです。
セメントを使った作業ですから、一回工事をするとセメントが乾くまで工事はストップ。思った以上に工事期間はかかりました。
そして工事をしている時に廃品回収車が近所を通り、塀の修理を見ると我が家の近くをぐるぐると巡るんです。
そして初夏。
無事工事が終わり、工事業者も工事の道具を片付けて、ブロック塀も上半分だけですがひび割れや大きな欠けも治り、非常に綺麗な状況になったんです。
風呂から上がると、そこからが私の執筆作業の時間です。いつものようにPCの前に座り、キーボードに手を置き、カタカタと物語を作り込んでいきます。プロットを見ながら、ここの詳細はこうしよう、ここはああしよう、そんな事を考えながら打鍵を繰り返して行きます。
だいたい作業が終わるのは日付が替わって一時くらい。
執筆で凝った肩と首をストレッチでほぐし、腰痛防止で布団に横になってストレッチ。すると、外から何やらパタパタという足音が聞こえてきたんです。しかも、どうも我が家の前でうろうろしているかのように、足音の大きさが変わらない。
こんな時間にどこのどいつだだろう?
窓から外を見てみると、誰もいないんです。恐らくはカーテンを開けた時に漏れた光で、すぐに逃げ去ってしまったのでしょう。
翌朝、昨晩足音がした辺りに、煙草の吸い殻が落ちていました。ちゃんと形状を保っており、フィルターがあまり汚れていない事から、それが昨晩来た人物の物である事が推測できました。
家族に煙草の吸殻を見せ、昨晩あった事を話し、なるべく早めに戸締りをするように注意喚起。両親も物証を見てしまったからには疑う余地がありません。勝手口に通じる通路に鍬を刃を上にして置き、さらに上からも鍬を刃を下にして吊っておいたんです。もし来るとしたらここからだろうと言って。
それから三日後。
我が家の裏の道路から突然複数の話し声が聞こえてきたんです。最初は近所に住む外国人だろうかと思っていたんです。ですが、どうも喋り方の調子のようなものが違うんです。近所の外国人はスペイン語のような感じ。ですけどそれとは明らかに違う調子なんです。
ピッ
短いですが、ホイッスルの音が聞こえました。妙に甲高い音ですから、恐らく細長いホイッスルだと思います。
ガチャガチャ! ガンガンガン!
勝手口のノブが乱暴に回され、ドアを無理矢理引いて空けようとする音が!
その中に叫び声のようなものが混ざる。さらに玄関の方から何やら注意するような声。この喋り方の調子は東南アジア系の調子っぽい。もしかしてテレビなんかで言われている押し込み強盗団?
やばい! このままだと雨戸の閉めていない私の部屋に来られてしまう。どうしよう、どうしよう!
周囲に何か武器になりそうなものは?
今からスリングショットのような物が作れたりしないかな?
無理! そんな物常備しているわけがない!
と、と、とりあえず、け、け、警察に連絡しないと!
携帯電話を手にしたまでは良かったんです。ですけど、私、警察によって精神的に追いやられた過去があるんです。警察に連絡している間に、また前みたいにグダグダと言われて、その間に窓ガラスを割られて殺されるんじゃないか、そういう考えが脳裏を過ぎったんです。
ガタガタガタ
その間にも窃盗団は裏口から物置小屋に上ろうとしています。総勢何人なのかはわかりません。わかりませんが、五人以上いる事は確かです。
……そうだ! 先ほどから見えている外の煙草を吸っている首謀者を撮影してやろう。この東南アジア系の風貌の男、こいつの写真を持って警察に行けば、さすがの警察も動かないわけにはいかないだろう。
窓の前に影が映らないように手だけを伸ばし、カーテンの間から携帯電話だけを出してパシャリ。
ありゃ、写ってない。もう一度。今度は手が震えてピントが合わない……
ピーーーーー!
やべっ、気付かれた!
長いホイッスルと共に、窃盗団と思しき一団は去って行ったようなのです。
翌朝、首謀者の東南アジア系の男がいた所には数本の煙草の吸殻が。そして勝手口に防犯で設置した鍬の刃にはどちらも鮮血が。地面にも点々と血の跡が。
そして昨日には無かった自転車が乗り捨ててありました。その自転車にはシールが貼られていまして、そのシールは近所の高校の校章が描かれていました。
恐らくは昨日の窃盗団の自転車だ!
そう思った私は、その自転車の車輪のスポークと金属のどぶ板をビニールタイで固定してやったんです。昨晩の恐怖の代償を少しは味合わせてやれと思ったんですよね。
残念ながら力任せにスポークを外して自転車は持って行かれてしまいましたが。
その恐怖の一夜から、数日後、再度何者かが複数人でやって来ましたが、勝手口の鍬の数を三本に増やした事で、その三本に血痕を付けただけで去っていったようです。そこから今日まで窃盗団は来ていません。
ですが、未だに頻繁にやってくる奴がいるんです。
「こちらは廃品回収回収車です。古くなったパソコン、コンポ、どんな物でも構いません。動かなくても構いません。気軽にお声かけください」
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