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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

選択

掲載日:2026/03/01

短編です

 子供の頃は、選択肢が少なくて、ほとんどの物事が二択だった。

 チョコケーキを選ぶか、イチゴのショートケーキを選ぶか。シンプルなドーナツを選ぶか、しょっぱい食事系を選ぶか。

 選ぶ基準はほとんどが好きか嫌いかで良くて、あまり悩まなかった記憶がある。

 私はチョコが好きだから、チョコケーキだし、ドーナツはしょっぱい味の方が好きだ。だから迷わない。そんな簡単な選択で、済んでいた。

 成長するにつれて、選択肢がどんどん増えて行って、困ったことに、選んだ先の未来が不透明なことが多くて、ビビりな私は尻込みしてしまう。

 今の選択が間違っているのか、はたまた選ばないことが間違いなのか。そればかりは選んだ先にしか答えがない。ケーキやドーナツを選ぶのとはわけが違う。

 さて、どうしたものか。

 家に帰ってきてすぐ違和感に気が付いた。彼の靴と見なれない女ものの靴が、乱雑に置かれていた。玄関を入ってすぐに台所が有って、その奥はドアで仕切られている。小さなワンルームの私の部屋。そのドアの向こうから、女の甘い声が聞こえる。

 今日は仕事が早くに片付いてしまって、上司から直帰しても良いと言われていたから、早く帰って映画の続きでも見ようかと思っていたのだけれど、まさかこんな事態になっているとは、計算外。

 家に入って行って、ことのあらましを聞く。友人に連絡をして手伝ってもらう。一旦家を出る。警察を呼んで大事にする。

 今思いつくのはこれくらいかな。どれを選んでも地獄が待っている気がする。

 想えば彼は、適当な男だった。出会った時もナンパだったし、私がデートの行き先を決めたり、誘ったりすることの方が多い。よく考えたらお金もほとんど私が出している。

 最初の頃はそれでも良かったのだけど、そう言えば最近付き合いが悪くなっていた気がする。そうかと思うと急に家に来たりして完全に彼のペースだった。

 思い出してくると、ふつふつと怒りのような感情が湧いてきた。最初の頃は好きだなんだと言っていたくせに、最近はソレもない。家に来ればただただ体を求められるだけのただれた関係。そう言えば最近金をせびってくるようになった。働いているとは言いつつも、彼はほとんどバイトで生計を立てているような状態だ。そうかそうか、そういうことか。

 台所には包丁がある。この怒り、晴らさずにはいられない。

 足音を消して、そっとドアを開けた。盛り上がっていて私には気が付かない様子だ。暫く様子を撮影していると、彼の下で女が私に気が付いた。

「えっちょっとやだ!」

「え、えっなっ」

 明らかに慌てた様子だ。あぁ、この反応、映画やドラマでよく見シーンだ!

 うっすら笑いがこみあげてくる。

「良いご身分だね、今日はバイトお休み?」

 彼の顔から笑顔が消えていく。

「いやっこれはっそのっ・・・」

 言い訳が思いつかないようで、キョロキョロと目を泳がせるだけの彼に私の怒りは最高潮に達した。

 包丁の柄をしっかりと握って、彼の腹をめがけてダッシュ。一気に深く突き刺した。

 あふれ出る血、変な声を上げて血を流しながら死んだ目の前の男。恐れおののく見知らぬ女。


 ここまで想像して、私は大きく息を吸いこんで吐き出した。

「速やかにこの部屋から出ていけ。そして二度と、私の前に現れるな」

 包丁の刃がキラリと光ると、目の前の二人は慌てふためいた様子で、服もテキトーに部屋を出ていった。



——これでよかった——

選んだ先にしか、答えは無い。

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