第22話・ SWEET!異世界でも食後は別腹です
「もう食べられないよお~……」
フィンさんが椅子の背にもたれかかりながら、だらんと力を抜く。
全員、お腹がはち切れそうになるまで食べた。
それでもまだ、ビーフシチューは鍋の中に残っている。
さっきまで奪い合うように皿を伸ばしていたのが嘘みたいに静かになった。
いや、あれは奪い合いになるわ……。
「料理人てのは、すごいんだなぁ」
ぽつりと、ルーグさんが呟く。
みんな満足そうに、うんうん! と頷く。
「これ程の料理、この街では食べられませんしね……」
「どの街でも食べたことないよー?」
「そんなにっすか……?」
褒められ慣れていないせいか、むず痒い。
いや、じいちゃんも華蓮も褒めてはくれたけど……。
こんな手放しで、いつもの料理を褒められるのはなかなかない経験。
料理やってて、料理人になってマジで良かった……!
「なぁ、ソータ。俺達のパーティに入る気はないか?」
「ええ!?」
「それさんせーい!」
「いやあの、華蓮もいるし……」
いや……料理に関しては、俺だけの力じゃない。
華蓮が居てこその完成度なんだ。
俺だけパーティに誘われるのは、なんか違う。
「兄さん、私のことは気にしなくてもいいのよ?」
華蓮を見ると、ぐっと拳を握ってガッツポーズをしている。
魔獣肉の美味さに取り憑かれたんだろう。
マジで気にしてないどころか、むしろ「行ってこい」と言わんばかりの目をしている。
だから何でそんなにメンタルつえーんだよ……。
「もちろんカレンさんもご一緒に」
「……ポーションだって作れるんだろう?」
「え。」
俺と華蓮は思わず間抜けな声を出し、顔を見合わせた。
「そーいや……ポーションとか作ってなくね……?」
「そうね、《異材精製》しか使ってないかも……」
「おいおい……って聞いた事ないスキルだな」
錬金術師として本来メインであるはずの調合をガン無視して、俺たちはひたすら料理にばかり力を入れていた。
……そういや薬草も、本当は調合用に買ってきたやつだったな。
「いや、えーと……」
「いずれはしてみたいんですけど、今は食事の満足度を上げたいんです」
「ん? 錬金術は料理には関係ないだろ?」
俺達も錬金術がここまで料理に関係してるとは思ってもみなかったもんな。
ルーグさん達が混乱するのも無理もない。
華蓮のスキルに関しては、いわゆる異世界人特典なんだろうけど。
「見せた方が早いかも。兄さん、いいわよね?」
「そうだな……ミルクまだあったよな」
ミルクを深皿に入れて華蓮の前に差し出すと、視線が一斉に集まる。
「ただの……ミルク、だよな?」
華蓮はにこりと笑いかけるとミルクに手をかざし、そのままスキルを唱える。
「《異材精製》!」
ミルクがふわりと光に包まれ、ゆっくりと形を変えていく。
白い液体が次第にとろみを帯びていき……。
やがて光がすっと消えた。
「はぁ……これでヨーグルトの完成です」
今日で何度目かのスキルだからか、華蓮はわずかに息を上げている。
「どうぞ、舐めてみてください!」
俺がスプーンを配ると、ルーグさんが先陣を切ってヨーグルトに手を伸ばす。
「な、なんだこれ……? ドロドロとした物になってるぞ……」
「もしかして……さっきのステーキに付いていたものですか……?」
「そっす! ヨーグルトっていって、ミルクが発酵したものなんすけど……まぁ食ってみてください!」
全員、ビーフシチューの時よりも慎重に口へ運ぶ。
「……!?」
「すっぱあーい!?」
「酸っぱいですけど……私は好きです」
「……」
俺もプレーンヨーグルトはあんまし好きじゃない。
「このままだと好み分かれるんすよ。そんじゃ次は……」
用意しておいた蜂蜜をぐるぐると回しかける。
「さ、混ぜてからどーぞ!」
「……!?」
「あっまぁーい! ボクこれ好きー!」
「さっきよりもまろやかになって、こちらも美味しい……!」
「……」
反応は見事に分かれた。
やっぱり甘いヨーグルトの方が美味いよな!
「んじゃこれで最後っす!」
買っておいた果物をいくつか角切りにして、ヨーグルトに乗せる。
「これは朝食に食べたり、デザートで食べたりするんす!」
「……!?」
「おいしーいっ!」
「ヨーグルトに甘い果物が絡まってさっぱりしていて……いくらでも食べれそうです」
「……」
うんうん、果物にヨーグルトがけは更に美味いよなぁ。
……っていうか、すげぇ。
あっという間になくなった。
──もっと用意しておくべきだったか……
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