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俺たち双子は、世界を救わない。 ~料理人と錬金術師の異世界スローライフ~  作者: 京野きょう


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第21話・DELICIOUS!異世界の常識を食い破った結果

 カウンターに置いたヨーグルト漬けの魔獣肉を、みんなは不信そうに見る。


「なんだ、その白いのは……?」

「それ魔獣肉なのー?」

「ま、まるでカビているようですね……」


 カビって。

 いやまぁヨーグルト漬け知らないなら、この白い液体も謎だよな……。


「華蓮、布でヨーグルトを拭き取っておいてくれ!」

「ん、分かった」


 華蓮がヨーグルトを取り除く横で、俺は二つのフライパンに火をかける。

 温まったらオイルを入れ、みじん切りにしたニンニクとロマリー草を加えて香りを出す。


 ちなみにこのロマリー草は、解析した結果「ローズマリー」と判明した。


「兄さん、出来たけど……」

「さんきゅ! そんじゃ塩をパラパラ……っと」


 肉の弾力を確かめながら、塩を振る。

 おおっ、ヨーグルト漬けにする前よりも柔らかくなってる!

 これは絶対に美味くなるやつ。


「そーしーてー……ドーン!」


 パフォーマンスとして声を張り上げてみる。

 ……とはいえ、既にみんなカウンター外から覗き込んでいたけど。


 ジュワッと良い音!

 この匂いもやべぇ……!


「こ、この匂い……たまんねぇな……!」

「ステーキなのー!?」

「なんて香り……!」


 フライパン二つの様子を見つつ、片面を一分ほど焼いてひっくり返す。

 ここで役目を終えたロマリー草を取り出すと、無言で見ていたレインさんが口を挟んだ。


「……おい、それロマリー草じゃないのか?」

「あ、はい。そうっすよ」

「ロマリー草を料理に……?」


 怪訝な顔をするみんな。


「さっき食ったシチュー、あれにもリエローの葉を使ってますよ?」


 呆気にとられる表情っていうのは、こういうことを言うんだな。


「……何のために入れるんだ?」

「主に、臭み消しっすね!」

「……そういえば、シチューも魔獣臭さがありませんでしたね」

「うんうん! いい匂いしかしなかったよー!」

「俺たちの故郷だと、料理には香草というものを使うんすよ」


 俺は、ステーキを焼きながら答える。

 もう片面一分焼いたらフライパンから取り出し、同じ時間休ませる。

 ……タイマーないから体感だけど。


 でも六人分のステーキを二つのフライパンで順番に焼いていけば、丁度よさそうな気がする。


「そんなに短くていいのか?」

「いやこれはですね、焼いた時間と同じだけ休ませることによって、余熱で中まで火を通すんです!」

「ずっと焼き続けるわけではないんですね……」

「焼き続けると固くなっちゃうんすよねー」

「ステーキって固いものだよー!」

「まぁ、出来てからのお楽しみってことで!」


 二回同じ工程を繰り返し、最後は強火で三十秒、一気に焼き上げて休ませる。


「ただ焼くだけじゃないのか……」

「野営の時に外側が焦げるのは、そういうことだったんですね……」


 冒険者だと、「食えればいい」ってなるんかな。

 料理人が人気ないのも頷けるわ……。


「あとはソース作っておしまいなんで!」

「ソース?」


 肉汁が残ったフライパンをまた熱して、じゅわじゅわしてきたところに、ワインを投入。


 じゅああぁ……。


 焦げもこそぎ落として、ワインと馴染ませる。

 更にバターと、少しのハチミツを追加して、煮詰めてソースの完成!


「あとは一切れサイズにカットして……」


 最初に焼き始めたものから順番に切る。

 うはー! 中はほんのりピンクで見事な断面!


 新しい木皿にステーキを並べてソースを掛ける、付け合わせとしてフライドポテトも。


 うたた寝する直前に揚げたやつだから、少し冷めちゃってるけど、まぁ良し!


「出来ましたよー!」


 ステーキの表面はカリッと香ばしく、切った断面は綺麗なピンクに仕上がった。

 ところどころから肉汁がにじみ出てて、見てるだけでヨダレが出そうだ。


 は、早く食いてぇ!


「こんなステーキ見たことない……」

「もー! ルーグはさっきからそればっかー!」

「でも本当にルーグの言う通りです……」

「……早く食わせろ」


 ──パンッ!


 突然、大きな音が響き、俺を含めた一同がびくりとした。


「……いただきます」


 華蓮の手合わせの音かよ……デカすぎてビビったわ。てゆーか、マイペースすぎる。


 みんな顔を見合せ、こくりと頷く。


「いただきます!」


 ステーキを一切れ、ぱくり。

 もぐもぐも……。


「おいっしいー! お肉溶けたよー! ねっ!」


 叫ぶフィンさん。

 フィンさん以外は、みんな無言……いや、完全に固まってる。

 もちろん俺もその中の一人だ。


 項垂れ額を抑える人。

 目を見開き固まる人。

 フォークに刺した肉をじっと見つめる人。


 それぞれ様子は違うけど、満場一致の美味さを物語っていた。


「……何も言うことがない」

「同意ですね……」

「……俺もだ」


 体を震わしながら、やっと絞り出した感想らしい。

 でも俺も同意しかない。


「噛まなくても蕩けるような柔らかさ、噛むたびに肉汁が溢れて……重厚なのにしつこくなくて……」


 華蓮は一人黙々と食べ続け、淡々と感想を述べる。

 メンタル鬼なのか?


「さっきカレンが言った『美味しいものは美味しいで良い』……これに尽きるな!」

「そうだよー! 美味しく食べなきゃー!」

「本当に……食事で感動したのなんて初めてです」

「……ソースも美味い」


 放心状態だった俺たちは、息を吹き返したかのように口々に喋り始める。


「ソータ! もしまた魔獣肉が手に入ったら、ここに持ってきていいか?」


 にかっと笑いながら、ルーグさんが言う。


「もちろんっす!」


 俺は拳を握りしめ、親指をぐっと立てて答えた。

 魔獣肉は美味しい。

 それが前提だとしても、俺の腕ありきで「美味しい」と思ってくれている。


 嬉しいに決まってるだろ、そんなの!

 泣いちゃうぞ!

読んで頂きありがとうございます!

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次回更新・3月24日

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