第19話・PROOF!異世界の高級肉は裏切らない説
……三時間、何しよう。
火を掛けてるから、出掛ける訳にもいかない。
かといって、テレビがあるわけでもなし。
普通なら動画でも見てりゃ一瞬なんだけどな。
あれ、三時間って何すりゃいいんだ……?
まな板とかの片付けも終わっちまったし。
華蓮が早々に出掛けた理由に、今更ながら気が付いた。
マジで要領良すぎだろ……。
「うーん、何すっかなぁ……」
独り言を呟いたとて、何かが変わるわけでもない。
ステーキにビーフシチュー。
夕飯としてこれ以上何かを用意するのも……。
……って、主食ねーじゃん!
米かパン。
ビーフシチューにはパンが欲しい。
華蓮のやつ、買ってくるかなぁ。
「……作っちまうか?」
余裕で作れる時間あるし、やっちまうかー!
まずは小麦粉と塩と砂糖とイースト──
「……って待て待て。」
ドライイーストねーよ!
イーストなしで……いや、それはやったことねぇ。
華蓮のスキルがあればワンチャン作れるだろうけど、いつ帰ってくるか分かんねぇしな。
パンも売ってるけど、そういやハード系ばっかりでふわふわ系のってないんだよな。
そういうのもイーストとかと関係してるんかな。
ま、どっちみち今の俺には無理だな。
大人しく米だけ多めに炊いておくかー。
米がねーと、華蓮がうるさいし……。
米を研いで鍋に入れ、水を張る。
……うん、時間潰しにもなんねーな。
ステーキソース……は焼いた後の肉汁が必要だしなぁ。
うーん……。
「付け合せのフライドポテトでも作るかぁ」
といっても、じゃがいもをくし切りにして水にさらすだけ。
後は食べる直前に、粉をまぶして揚げる!
…………。
華蓮、早く戻ってこいよぉ……。
「ただいま……って兄さん、何してるの?」
「おう、おかえり……」
約二時間経った頃に華蓮が帰ってきた。
市場で買ったであろう食材を両手いっぱいに抱えて。
俺はというと、あの後トマトソースの量産を始めてた。
切って炒めて煮込んで混ぜて。
完成したものを、布で仰ぎまくって粗熱を取る。
その最中に華蓮が帰ってきたわけだ。
「いやほら、ルーグさんがトマトソース欲しいって言ってたじゃん? だからさ……」
「なら丁度良かった」
「うぇ?」
華蓮は荷物を降ろすと、おもむろにスキルを使う。
「《アイテムボックス》!」
するとテーブルの上に、陶器で出来たであろう容器がズラっと並ぶ。
「これにトマトソース詰めましょ?」
「おま……こんなに大量の容器、何するつもりだったんだよ」
「え? だからトマトソース用に」
「俺が作ってなかったらどうすんだよ」
「時間あるし作ると思ってたの。それに今日作らなくてもそのうち必要になると思って」
こいつエスパーか?
「あと一時間もすればルーグさん達も来るだろうし、兄さんは仕上げとかあるでしょ? こっちは私がやっておくから」
「お、おう……さんきゅ」
華蓮だけ成長してる気がして悔しい。
けど、俺のこと分かってくれてるのも嬉しいわけで。
見透かされてる気がして、兄としては複雑だけどな!
ビーフシチューを煮込み始めてから三時間が経とうとしていた。
すでに部屋中に広がる、濃厚ビーフシチューの香り。
……匂いだけで腹減ってくるなこれ。
「やっとここまで来た……!」
あくを取りつつ、たまにかき混ぜ。
そうして出来たビーフシチュー。
愛しの我が子のようだ。
さらに味見をして微調整して……。
「うまぁ!」
「ずるい。私にも」
「へいへい」
トマトソースを容器に移し、棚に並べていた華蓮が気付いてこっちに来る。
しょうがねーなーと、小皿によそい華蓮に差し出す。
匂いをかいで華蓮が一口。
「……!」
「今までで最高の出来じゃね?」
「おかわり!」
「味見におかわりなんてあるか! もうちょいしたらルーグさん来るし、それまで待ってろって」
不満げな華蓮を宥めて、いよいよ肉のチェック。
お玉で肉を一つすくい上げ、スプーンで肉を押す。
その瞬間、ほろほろと崩れる肉。
「そのお肉の味見も必要じゃないかしら?」
「……必要だな」
涎を垂らしながら言う華蓮に、俺も同意する。
「いただきます……」
口に入れた瞬間、ほろり……と、ほどける肉。
もぐ……。
「……!!」
俺たちは顔を見合わせ、こくこくと頷く。
美味すぎて言葉にならなかった。
「美味しい……!」
「なんだこれ……柔らかいだけじゃなくジューシーさがあるっつーか……」
「魔獣肉だからなのかしら。高級品っていうのも納得だわ……」
「それな! 三時間が報われたわ……!」
……早くルーグさん達来ねーかな。
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次回更新・3月17日




