第18話・TRY!異世界の高級肉は美味くなる説
「まずは味見がてら、焼いて食ってみるか」
「うん……!」
ルーグさん達が帰ったあと、魔獣肉はアイテムボックスに放り込み、そのまま俺達は寝た。
さすがにあの後から料理する気力はなかった。
華蓮は食いたそうにしてたけど。
アイテムボックスから魔獣肉を取り出し、その大きさに圧倒される。
こんな肉塊、触ったことねえからな……ちょっと緊張するわ。
まずは試食分の肉を少し切り取る。
確かに普通の牛肉よりも、刃が通りにくい感じがするな。
そしてそれに塩を軽く振って焼く。
これだけでどんな感じになるんだろう?
「よし、食うか!」
「いただきます……!」
もぐ。もぐもぐ、もぐ……?
「硬いし臭えな……」
「そうね……でもジビエほど臭くはないと思う」
「確かに。これくらいの臭みなら、どうとでもなりそうだけど……」
近所の山田さんにもらったジビエはこれよりクセあったもんなぁ……。
「硬さは?」
「うーん、簡単なのはヨーグルトに漬ける。でも売ってねぇよな」
「ヨーグルトなら……多分作れると思う」
「え?」
「《胃材精製》!」
華蓮は朝食用に買っておいたミルクにスキルを発動させる。
次の瞬間── それはヨーグルトになっていた。
「ええ……いつの間にそんなん出来るようになったんだよ」
「念じながら使うと、ある程度思い通りになるみたい」
「マジかよ、チートじゃん」
俺が知らない間に、スキルを使いこなしてるとは……。
「んじゃ、やってくかー!」
ステーキサイズにカットして、包丁の背で両面叩く。これだけでだいぶ柔らかくなるはず。
その後はバットに移して、ヨーグルトを満遍なく塗りたくって放置する。
ラップとかビニール袋欲しい……。
「よし、これでステーキの下処理終わり!」
「もう?」
「あとは塩とか振って焼くだけ」
「それだけでいいの?」
華蓮が不思議そうにステーキ肉を見つめる。
まぁあれだけ硬かったしな。
「俺が思うに、下処理っていう概念が浸透してないんじゃね? 貴族ならお抱え料理人がいるだろうし」
「……なるほど。下処理しないから美味しくない。だから一般人は手を出さない、ってことね」
「ぶっちゃけさ。屋台飯とか含めて、鶏肉とかも硬いじゃんか」
「……あんまり食に興味がない世界観なのかしら」
もったいないと思うのは、俺達が日本人だからなのかもしれない。
「ステーキは後で焼くとして……もう一品、試してみるか」
「何作るの?」
「さすがに、この量を薄切りするのは大変だしなぁ」
「ビーフシチューは?」
「おっ、いいな! ステーキとは違う柔らかさも出せる!」
肉の残りを全て、一口大より少し大き目にカットする。贅沢だけど、ゴロゴロ感欲しいし。
軽く塩をして、熱したフライパンに入れるとジュワっといい音。
全面に焦げ目が付くまで焼いたら寸胴鍋に移し、水を入れて煮込み始める。
「焼くのそんなに短くていいの?」
「ん? 火を通すのはこれからだから大丈夫。あ、人参と玉ねぎ切っといて!」
「分かった。いつも通り、一口大でいい?」
「おう、よろしく! 切ったら寸胴に入れてくれ」
人参は華蓮に任せて、俺は別の玉ねぎを薄切りに。
肉を焼いたフライパンに油を追加して、玉ねぎを飴色になるまで炒める。
焦げ付いてきたら少し水を入れて、焦げをこそぎ落とす。
これが旨みの元になるんだ。確か。
それを数回繰り返したら、小麦粉とバターを追加。ダマにならないようかき混ぜ、まとまってきたら葡萄酒を入れて伸ばす。
これで、簡易ルウの完成だ。
デミグラスソースがあれば楽なんだけどなぁ……。
「あとはルウと自家製トマトソースをたっぷり入れて……」
「終わり?」
「いんや。これを使う!」
リエローの葉。
解析したらローリエだったから、密かに乾燥させておいた俺を褒めて欲しい。
それを二枚ほど鍋に入れる。これで臭みも大丈夫なはず。
「生で使えるのか分かんなかったから、乾燥させといたんだぜ!」
「さすが兄さん」
「おい、褒めるなら鍋じゃなく俺を見て言え!」
「すごいわ、兄さん」
華蓮がこっちを向き、言い直す。
目が「うるさい」と訴えていた。
「ま、まぁ!これで後は煮込むだけだ!」
「何時間くらい?」
「最低で三時間くらいは」
「……結構掛かるわね。それなら私はギルドで薬草依頼してこようかしら」
「大丈夫かよ?」
「ええ、ついでに市場も見てくる」
「気を付けろよ? こっちは俺に任せとけ!」
「よろしくね。それじゃ行ってきます」
華蓮が市場へ向かうのを見送りつつ、俺は鍋を確認する。
「よし、火加減はこれで大丈夫か……」
あとはコトコト煮込み続けるだけ。
たまにかき混ぜるのを忘れるなよ?
その間に片付けをしたり、食器を出したり。
あと三時間。
うたた寝するわけにもいかねぇし……暇だ。
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次回更新・3月12日




