第17話・DECIDE!異世界の高級肉は不味い説
「美味しかったあ……!」
あの後、せっかく来てくれたからとオムライスをご馳走した。
もちろんぱっかーんのやつ。
「私、こんなに美味しい食事は初めてでした……」
「ボクもー!卵がふわふわでびっくりしたー!」
「な、俺の言った通りだったろう?」
それぞれ満足そうに感想を漏らす。
そしてなぜかドヤり気味のルーグさん。
「ねー!ソータは料理人なんだよねー?」
「そっすね、一応」
「食堂とかやらないのー?」
「私も思っていました。トマトソースだけではもったいない腕前です」
「いや~、どうなんすかね……」
店レベルと言われるのは正直嬉しい。
けど、そこまでの自信もない。
トマトソースですら、売って大丈夫か?ってなってるし……。
「まぁその辺は、トマトソースの売れ行き次第で考えていけばいいだろう」
「絶対売れるよー!」
「俺もそう思うが……。ただソータにしてみれば、いきなり店を持つのも怖いだろう?」
「そっすね、ハードル高いっす……」
メンバーの反応を見ながら、俺やみんなの気持ちをさりげなくフォローしているルーグさん。
こういう人だからリーダーなんだろうな。
「……おい。用件はそれだけじゃないだろう」
今まで沈黙していたレインさんが口を開く。
オムライスを食べた瞬間、目を見開いたかと思うと、そのまま箸を止めずに食べ続けていた。
華蓮以上の無愛想だけど、悪い人じゃないのかもしれない。
「おっと、そうだった!これだこれ!」
「なにか用事だったんですか?」
食器の片付けをしながら華蓮が言う。
「こいつを貰ってもらおうかと思ってな!」
ルーグさんは大きな袋をテーブルにドンと置き、中身を見せる。
目の前にあるのは、紛うことなき牛肉だった。
「ぎゅう……!?」
「うし!?」
華蓮は手を止め目をキラキラさせる。
俺も思わず固まってしまう。
「な、なんだ……?」
「焼肉……!」
「牛丼……!」
今にもヨダレが出そうな俺たちを、不気味そうに見るルーグさん一行。
「ソータ……?」
「カ、カレンさん……?」
「あ、すんません!久しぶりに牛肉見たもんで……」
「ギュウ……ニク?」
「牛の肉ですよね?」
「牛はミルクを絞るもんだろ?」
「じゃあ、この肉はいったい……?」
どう見ても立派な牛肉だけど、牛はミルク専用?
牛肉が市場に出回らないのはそのせいなのか。
「こいつは魔獣の肉だ」
「魔獣……?」
「ああ。こいつは本来は高級品なんだ」
「い、いいんすか? そんな高級なもん……」
この世界でもモンスターを食べるという食文化はあったらしい。俺も実際に見るのは初めてだ。
華蓮は魔獣と聞いて、少しがっかりしてるようだ。
「だが……正直に言うと美味くない。というと語弊があるかもしれんが、俺達は焼くしか出来ねぇんだ」
「……そもそも魔獣は硬いし臭いんだ」
「そうですね……。噛みちぎるのも大変で……」
「ボクは噛みちぎれるよー!でもねーはっきり言って美味しくないんだー!」
「今回、討伐のついでに手に入れたんだが……いつもならギルドに買い取ってもらう流れなんだ」
硬くて臭くて美味しくないのかよ!
だったら何で持ってきたんだ?
「兄さんなら美味しく調理出来るかも、という事ですね?」
立ち直ったらしい華蓮が、ルーグさんを見ながら言う。
ルーグさんはそれに答えるかのように、ニヤリと笑い。
「ソータ、やってみないか?」
「ええ!? ……でも高級品なんすよね?」
「ああ。でもトマトをあれだけ美味しく出来るソータなら、俺は出来るんじゃないかと思ってな」
「ボクも思うよー!」
「私もそう思います」
「……どうせ買い叩かれるしな。やってみろ」
「レインは素直じゃないなー!」
「うるさい」
……やってみたいけど高級品って思うと尻込みする。
みんなの期待の目が少し怖い。
「兄さん、ダメで元々!」
こいつ、軽く言いやがって……。
牛肉もどきを食いたくてうずうずしてるじゃんか。
……でも、そうだよな。
「分かりました、俺が美味しくしてみせます!」
意を決していうと、小さな歓声が上がる。
「それでこそ料理人だな!」
「失敗はお気になさらずにやってくださいね」
「楽しみだよー! ね、レインー!」
「……ああ」
美味しくなるかもまだ分かんないのに、めちゃくちゃ喜んでくれてる。
だからこそ、応えたいと思ってしまう。
「兄さんなら大丈夫。私も手伝うから頑張りましょ」
いつになくキラキラした目で俺を見てくる華蓮。
本音半分、食い気半分みたいだな。
よっし、やるか!
「さすがに今から無理なんで、明日また夕方に来てもらっていいっすか?」
「おお、もちろんだ! 期待してるぞ」
「うっす! ……失敗しても怒らないでくださいね」
高級食材だからって、逃げるわけにはいかない。
この世界で料理人としてやっていくと、決めたんだから。
さーて、仕込みで忙しくなるぞ!
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次回更新・3月10日




