第15話・SERVE!異世界でぱっかーん
一晩立って落ち着いた俺たちは、改めて華蓮のスキル《異材精製》の凄さに気が付いた。
このスキルでいずれ和食の要、醤油や味噌に辿り着けるんじゃないか?と。
「なぁ。昨日は米にしただけで相当疲れてたみたいだけど、連続でスキル使えそうなのか?」
「どっと疲れが来た感じだったの。何度もは無理そう……」
「ふーむ、なるほどなぁ」
《異材精製》は、物凄く疲れるらしい。
レベルが1のままなせいもありそうだけど……。
華蓮の様子をみる限り、一日に2回辺りが限界そう。
そもそもスキルについて知らなさすぎるから、それも調べなきゃいけない。
レベルアップにしても、敵を倒さなきゃいけないのか、スキルを使えば経験値がもらえるのか、分からない事だらけ。
ステータス画面にはそれらしいものはなかったしなぁ。
華蓮と話し合い、当面はギルドで依頼を受けて金を稼ぎつつ、情報収集することになった。
しかーし!
そうはいっても、念願の米!
米が目の前にあるのに、それを放置する理由などない!
「今日は米食うけど、なにがいい?」
「醤油はないものね……」
「カレーもスパイスがまだよく分からんしなぁ」
「カレーとか言わないで……」
「す、すまん。あ、オムライスはどーだ?」
「!!」
「トマトがあれば何とかなるし」
「そうしましょう!」
めっちゃ元気になるじゃん……。
朝昼は軽めに済まし、いつもの薬草採取の依頼。
慣れた俺たちはさっさと依頼をこなし、公共風呂に行く。慣れたと言ってもそれなりに時間も掛かるし、汚れるしな。
これで後は、夕飯食って寝るだけ。
へへ、完璧だ。
そしてそのまま屋台へ買い出しに行く。
今日の目当てはオムライス用のトマト。
トマトソースにするから多めに買っとかなきゃな。
「うおっ、あの肉でっけー!」
「なんのお肉なのかしら?」
「醤油が手に入ったら、あれで角煮とかしてぇ!」
「醤油の代わりになるものって、なんなのかしらね……」
「今度、解析の食材になりそうなもの探すか」
「そうね……醤油以外にも欲しい調味料もたくさんあるもの」
屋台を見回しながら歩いていると、後ろから声が掛かる。
「ソータとカレンじゃないか。よく会うな!」
「ルーグさん!こないだはども!」
「凄い量のトマトだな。買い出しか?」
「そっす!メシでも作ろうかと思って。ルーグさんは一人すか?」
「ああ、今日はオフなんだ。防具を整備に出したから、その間に腹拵えしようかと思ってな」
「確かに今日は身軽そうな服ですね」
「防具がないと落ち着かないが、整備しない訳にもいかんからなぁ」
防具とかの手入れって大変そうだなぁ。
と、そうだ!
「ルーグさん、暇ならうちに来ません?メシご馳走しますよ!な、華蓮」
「ええ、お時間あればぜひ」
「お、いいのか?そういやソータは料理人だったっけな」
「まぁ今のとこ料理人としては何もしてないっすけどね……」
「ははっ!そんじゃお手並み拝見といこうか!」
「度肝抜いてやります!」
家に帰り、俺は早速キッチンへ。
華蓮はルーグさんをテーブルに促し、お茶を入れる。
「立派な家だな」
「工房用の家らしくて……」
「ああ、だからこんな広いのか。なにか商売でも始めるのか?」
「いえ、その辺はまだ何も……ただ調合するにはってことだったので」
「ほー、そんな決まりがあるのか」
華蓮とルーグさんが談笑を始める。
意外と話が弾んでいるみたいだ。
「さって、それじゃ作るとするかー!と、先に米炊かなきゃな」
「兄さん、出かける前に研いで浸水させといたわ」
「抜け目ねーな……」
「なあ、コメってなんだ?」
「ふふ、それは出来てからのお楽しみということで……」
不思議そうな顔をするルーグさんに、ニヤッと笑い返す俺と華蓮。
まずは米を炊く。
これは3合くらいか。
炊飯器はないから普通の鍋に生米を入れ、水を同量くらい入れて蓋をして強火に掛ける。
沸騰して蓋がカタカタしたら弱火にして、6分程経ったら火を止めて蒸らして終了。
家でもたまに土鍋ご飯してたなー。
おこげがまた美味いんだよなぁ。
米を炊いてるうちにトマトソース。
玉ねぎをみじん切りにして鍋で炒める。
この時ちょっと塩を振ると、甘みも出るし早く炒まるんだよなぁ。
その間にトマトをざく切り。
そのまま鍋に入れ、また塩を振って潰しながらじっくり炒める。
「……トマトを炒めるのか?」
「え?普通じゃないすか?」
「いや、俺は見たことがないな。生のままか、煮込んでスープ、潰して炒めるのは初めてみた」
「へええ……」
トマトソースって概念がないのかな。
確かに油を使うし時間も掛かるから、一般的じゃないのかもな。
「ね、お米炊けたみたい」
「おっけー、そのまま15分くらい蒸らしといて」
いつの間にか、米を炊いてる鍋の見張りをしていた華蓮。
タイマーないから正直助かる。
そしてそんな俺らを、物珍しそうにルーグさんが見ている。
さて、続きだ。
トマトから水分が出てきたら、あとは煮詰めるだけ。
味見。……ちょっと酸っぱいな。
まあ、こういう時は蜂蜜とバターをぶち込む!
もう一口。
よっし、角が取れてまろやかになった。
これでトマトソースの完成だ!
ソースの半分は取り分けて、後がけ用。
残りには一口大に切った鶏肉を放り込んで、さっと炒めておく。
そしてちょうど、米を炊き終えてからの蒸らしも終わった頃だった。
「ね、開けていい?」
「おう!」
華蓮がドキドキしながら、蓋に手を掛ける。
座っていたルーグさんも気になるのか、いつの間にかカウンター越しに立ち見している。
華蓮がそーっと蓋を開ける。
ぶわっと白い湯気があふれ出す。
一瞬遅れて、甘い匂いが広がる。
炊きたてご飯の匂いたまらん……!
「ツヤツヤ……お米がツヤツヤに炊けたわ!」
「はは、炊けたな……!」
華蓮は少しだけ泣きそうな顔。
……俺も少し泣きそう。
「……故郷の飯なんだな」
「はい!」
「はは……俺たちだけ盛り上がってすんません」
「気にすんなって」
気を取り直して。
炊きたての白米を鍋へいれて、米を潰さないように混ぜて……っと。
これでケチャップライスもどきの完成だ!
「華蓮、メシを皿に盛っておいて!」
「いい匂いだ。もう完成か?」
「いえ、最後の仕上げがあります」
「十分美味そうだけどな……」
「ふふ、もっと美味しくなりますよ」
ルーグさんの問いに、華蓮は少しニヤリとした表情で言う。
確かにこのまま食っても、間違いなく美味い。
だけど、やっぱり卵は外せない!
フライパンに多めの油を引いて、薄く煙が立つくらいまで温める。
卵を三つ、ボウルに割り入れてざっと混ぜる。
おし、温まったな。
ここからは手早くが大事だ!
一気に卵を流し込んで、フライパンを揺すりながら、ぐるぐるとかき混ぜる!
油断すると固まるぞ!
少し落ち着いたところで、取っ手をトントンしつつ、くるっと丸めて形を整える!
はぁはぁ……よし、綺麗なオムレツ。
……ちなみに前回は黄身に火が通ってなかったから腹を壊したけど、今回は大丈夫なはず。
皿に盛ったトマトライスにオムレツを乗せて──
ぱっかーんオムライスの完成!
……家だとこれを"ぱっかんオムライス"って言ってたんだってば。
手早く残りの分も作って、テーブルに並べる。
「な、なんだ?これは……」
「これは私たちの故郷のオムライスっていう料理なんです」
「……オムレツを雑穀の上に乗せてるが、一緒に食えということか?」
「ふっふっふっ、こうするんすよ!」
少し触れるだけで、ふるふると揺れるオムレツ。
スプーンでオムレツを割ると、とろっとした卵が米の形に沿って流れる。
そこにさっきのトマトソースを掛けて──
「これで本当に完成です。食いましょ!」
「あ、ああ……」
恐る恐るスプーンを口に運んだ瞬間。
「な、なんだ、これは……!?」
「お米美味しい……!」
「これは雑穀……?いやでも……」
「それは米っていう、故郷の主食なんすよ」
「それにこんなに柔らかい卵も、甘いトマトも初めてだ」
「俺たちの故郷では、卵は生でも食えるんす!」
「卵を生で……?」
ルーグさんは、訳が分からないって顔をしている。
馴染みがないからしゃーないか……。
──と思った瞬間、突然勢いよく食べ始めた。
「うん、美味いな!」
「でしょう?兄さん、料理だけは本当に上手なんです」
「おいおい、"だけ"は余計だろ!」
「ははっ!お前らが屋台で味付けを欲しがった理由が分かったわ」
「でも俺らの料理は、まだまだこんなもんじゃないっすからね!」
「これ以上にか?そりゃ楽しみだ」
満足した表情で頬張る華蓮。未知なる料理を、止まらない勢いで食べるルーグさん。
美味そうに食ってくれて何よりだし、料理やっててホントに良かったなぁ。
「兄さん、おかわりしたいわ。ルーグさんも足りないでしょう?」
「おっ、いいのか?」
「へいへい、お待ちを」
──その後、おかわりコールに応えて、計5食分のオムライスを作った。
……って、食いすぎだろ!
読んで頂きありがとうございます!
応援して頂けると励みになります。
次回更新・3月3日




