第12話・CLEAN!異世界でも譲れません
俺達はついに家を手に入れた。
パパラパッパラー!
頭の中でファンファーレが鳴る。
職業に続き、住居まで決まった。
これはもう勝つる!という訳だ。
何に?とか野暮なツッコミはしないでくれ。
1人興奮状態の俺に、華蓮の現実的な意見が出る。
「家具とか揃えないとよね」
「お前、もっと喜べよ。つっても、作業テーブルしかなかったもんなぁ」
そう、家が決まった俺達が次にしなきゃいけないこと。
生活必需品を揃える。
「ギルドには報告したし、あとは明日の朝に鍵を貰うだけだよな?」
「そうね。今日は宿屋に泊まるとして……今のうちに必要なもの揃えるのがいいかしら」
「とりあえずアイテムボックスに入れときゃいいし、出来るだけ揃えとくか」
夕飯代わりに屋台飯を食べながら相談する。
慣れてきてはいるけど、やっぱり物足りない食事だ。
つーか、米食いてぇ……。
「大きい物でいうと、ベッドにテーブル、棚とかも欲しいよなー」
「あとは細々したものよね、ランプとか食器とか……」
「引っ越しなんてしたことねーもんなぁ」
実家が神社ってことで、引っ越しとは無縁の生活だった。
まぁ元の世界の引越事情とは違うから参考にはならなかったかもしんないけど。
「あ。」
「なんだよ?」
「お風呂!」
「欲しいけど、風呂場になるような場所あったか?」
「…………!」
華蓮が青ざめる。
普通の家ですら風呂無しなのに、ましてや工房向けの家だもんな……。
「でもヤードさんさ、風呂はあとで設置すればいいって言ってたよな」
「……どこに、とは言ってなかったわよね」
「まさか五右衛門風呂みたいに庭とか?」
「田舎ですら、そんなのしてる人見たことないわよ……」
野焼きは見るけど、ドラム缶風呂してるやつなんていなかったな……。
「しゃーねーから、ドラム缶でも探すか?」
「絶対イヤよ」
「ですよねー」
「増設前提だったのかしら……」
「んー、考えても分からんしヤードさんに聞きに行くか?」
「もう夕暮れだし早く行きましょ」
「ちょ、待てって!」
さっさと歩き始める華蓮の後を慌てて着いていく。
「──風呂、ですか?」
「はい、お風呂の設置はどうすればいいんですか?」
再びヤードさんを訪れ、息も整わないうちに華蓮が詰め寄る。
あんなに走るから……。
「風呂設置に関しては、まず床や壁の工事がいりますねぇ。」
「それって大変すか……?」
「工事とその費用はそれほどですが……。風呂桶がピンキリで金貨50~200枚ほどですね」
「50枚ならまだ出せるよな……」
「ドラム缶ってオチよ、きっと」
「さらに魔石込の風呂桶ですと、最低300枚はみた方がいいですね」
「た、たか……!」
そーいや、魔導コンロも魔石使ってるって話だったよな。
「熱魔石や水魔石をお持ちでしたら、通常の風呂桶だけで大丈夫ですけどねぇ」
「ちなみにそれはお高い……?」
「そうですねぇ……」
俺の問いに、ぎこちない笑みをするヤードさん。
高いよな、やっぱし……。
「諦めて公共風呂場にでも行こうぜ」
「魔石は作るものなんですか?」
ま、まだ諦めねーのか、こいつ……。
「魔石は高位のモンスターからのドロップ、あとは高ランクの魔術師と錬金術師なら作れると聞きました」
「!」
「華蓮! お前もしかして作れるようになるんじゃね!?」
「カレンさんは錬金術師でしたね。今すぐとはいきませんでしょうが、いずれ作れる様になりましたら、是非ともうちに卸して頂きたいですねぇ」
ヤードさんからは、あんまし期待はしてなさそうな、お愛想を感じる。
……そりゃそうだよな。
「俺達が借りる家って風呂の設置とか出来るんすか?」
「お二人が借りた家は作業場以外は2部屋ありますから、そのどちらかを風呂場にするのは可能ですよ」
「うーん、それじゃあダメなんよなぁ……」
「3部屋あるところを選ばないとってことですよね?」
「それぞれの部屋が欲しいなら、その通りですな」
「ううぅん……」
華蓮が唸るほど悩んでいる。
そんな華蓮を見かねてか、ヤードさんが口を開く。
「大家さんの許可が取れれば増設という手もありますが……。それなら4部屋の方を借りる方が手間がないかと思いますよ」
「兄さん」
「な、なんだよ」
「直ぐにお風呂の設置は諦める」
「お、おう。まぁそれしかないしな!」
「だから4部屋の方を借りて今後に備えましょう」
「おまっっ!」
「ヤードさん、お願い出来ますか?」
だめだ、華蓮の目から揺るがない意志を感じる。
「え、ええ、まだ大家さんの方へ連絡はまだしていないので大丈夫ですが……」
そう言って、心配そうに俺をちらりと見るヤードさん。
「ちなみに家賃は……?」
「えーと、4部屋の方は……金貨15枚になりますね」
「5枚アップ!?」
「未来への投資は大事よ?」
「風呂場への投資じゃねーか……」
さっきまで“長期になるとバカにならない”とか言ってたのはどこの誰だよ……。
「はぁ……。すんません、お願いします……」
俺はため息をつき、了承するしかなかった。
こうなったらテコでも動かねーもんな……。
こうして俺達の家は、静かにレベルアップした。
── なお、風呂はまだ存在しない。
まだ俺達自身のレベルすら上がってねーのになぁ……。
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次回更新・2月20日




