第11話・HOUSING!異世界の物件あれこれ
──仲介屋を探し始めて数十分。
まだこの土地に慣れていない俺達は、しらみ潰しするしかない。
聞けばすぐ分かることだけど、華蓮と話し合い決めたことがある。
すぐ人に頼らない。
異世界人ということで、俺達は普通よりも親切にしてもらっている。
ただこの世界で生きていくと決めたからには、そこに甘えっぱなしではダメだと。
もちろん甘えさせてもらうことは未だに多いけど。
「にしても、見つかんねぇなー」
「全てにおいて定番みたいな見た目じゃないもの、仕方ないわ」
日本の不動産屋なら、ガラス窓に物件情報がベタばりにされてるから分かりやすいけど。
小腹が減り、屋台飯を買ってベンチに座って休憩。
食いもん与えてないと華蓮が凶暴化するしな……。
食いながら、ふと視線を上げると、通りの角に『仲介屋』と書かれた古びた看板が揺れていた。
「あった!あれだ、華蓮!」
「……ん、ホントね」
目線も動かさず同意してくる。
「早く食えよ……」
「研究しながら食べてるの」
食べ終わった俺達は早速、仲介屋のドアを叩く。
「こんちゃー…」
「はい、いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょう?」
今の俺達はこの世界の衣装に身を包んでる。
それでも子供二人の来客は珍しいのか、少し不審そうな視線を感じた。
「俺達、異世界から来たんすけど……」
「おおっ、貴方達が噂の!」
ゆ、有名なのか……。
「……多分そうです。私達、家を探してるんですが、相談に乗って頂けませんか?」
「なるほどなるほど、承知しました。どのような家をお求めですか?」
「えーと、まずは2部屋欲しいっす!」
「後はトイレとお風呂、厨房と……」
「お、お待ちください。トイレと厨房は問題ありませんが、風呂付きとなると……」
「ないんすか?」
「あるにはあります。ただ借家でも購入でも高額になりますぞ」
「ちなみにおいくらくらいなんですか?」
──目玉が飛び出るかと思った。
「……さすがにきちぃな」
「ちょっと厳しいわね……」
「まずは風呂なしの家から始め、後々風呂を設置する……方がよろしいかと」
全財産はたいても、風呂付きの家を買うには桁が足りないし、借家ですら心許なくなってしまう。
「風呂に関しては、手に入るまで定期的に施設に行く方がおすすめですな」
「確かにそうするしかなさそうっすね……」
ふと華蓮を見ると難しい顔をしている。
俺達、日本人は毎日風呂に入る習慣があるから無理もないけど。
「……風呂釜壊れて銭湯に通う、と思うしかないわね」
華蓮の中で折り合いがついたらしい。
「ちなみにご予算は決まっておりますかな?」
「一般的な賃料とか、全く知らないんすけど……」
「ピンキリですけど、金貨3~10枚は見ていただく感じですな」
それでも結構するなぁ……。
「お二人のご職業をお伺いしても?」
「料理人と錬金術師っす……」
「なるほどなるほど……。でしたら工房向けの家一択ですな」
「なにか違うんですか?」
「料理は良いとしても、調合に関しては匂いや音が出ますからね。一般的な家ですと、良しとしない大家さんが多いのですよ」
「なるほどなぁ。失敗して変な匂いとかしてきたら嫌っすもんね」
コクリと深く頷く店主。
「工房向けの物件ならいくつかございます。家賃は張りますが……その分、大家の理解もあります。見に行かれますか?」
「いいんすか!?」
「ぜひ、よろしくお願いします」
「申し遅れましたが、わたくし店主のヤードと申します。どうぞよろしくお願い致します」
俺達も挨拶をし終え、早速現地に向かう。
道中、日本の住宅事情を話したりして、ヤードさんとの距離は自然と縮まった。
正確には、ぐいぐいと根掘り葉掘り聞かれて、勝手に縮まった、が正しいけど。
「以上が工房向けの借家でございます」
あれから三件程の借家を見て回った。
1つ目は、1階に工房と厨房、2階に1部屋。
2つ目は、1階に工房と厨房、2階に2部屋。
3つ目は、1階に工房と厨房、2階に4部屋。
どこも内装は似たり寄ったりではあった。
ただ2部屋確保できるのは2つ目のみ。
3つ目は、住むには持て余しそうな広さだけど、広くて困ることもないしなぁ。
ヤードさん曰く、工房と住居は別にして、部屋は倉庫や事務所代わりにする人が多いそうだ。
「うーん、どうする?」
「ちなみに家賃はどこも金貨10枚前後ですな」
「2つ目か3つ目、どちらかよね。ヤードさん、ここって商売とか出来るんですか?」
「食堂か調合品の販売ということですか?それでしたら工房向けの物件でしたら、どれも可能でございます」
「マジすか!ならもう家賃で決めるか?」
「適当過ぎ。今は所持金あるとはいえ、長期になるとバカにならないのよ?」
まぁそうだけど……。
「てか華蓮決めていいよ。俺は別にこだわりもないしさ」
「では2つ目の物件をお願いします」
「俺にあんなこと言っておいて即決かよ!?」
「4部屋は多すぎるし、1部屋じゃダメ。他に選択肢あるの?」
「ないっす」
「でしょう?ヤードさん、よろしくお願いします」
「はは、かしこまりました。では手続きをしに、店へ戻りましょう」
こうして俺達の異世界での拠点は、思った以上にあっさりと決まったのだった。
読んで頂きありがとうございます!
応援して頂けると励みになります。
次回更新・2月17日




