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間男の策略で冤罪を着せられた俺、集めた証拠で元カノと加害者全員を地獄に突き落とす  作者: ledled


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友として、最後まで信じ抜く(早乙女凪 視点)

俺、早乙女凪が栢森透と友達になったのは、大学一年の時だった。同じ教養科目の講義で隣の席になって、何となく話すようになった。栢森は地味で目立たない奴だったけど、話してみると頭が良くて、真面目で、誠実な奴だった。


俺は社交的な方で、友達も多い。だけど、栢森みたいに本音で話せる友達は少なかった。表面的な付き合いじゃなく、お互いのことを理解し合える関係。そういう友達が、栢森だった。


栢森には彼女がいた。柊美桜。文学部の可愛い子で、二人はとても仲が良かった。俺も何度か一緒に遊んだことがあるけど、理想的なカップルだと思った。栢森は美桜のことを大切にしていたし、美桜も栢森のことを愛していた。


だから、あの噂を聞いた時、俺は信じなかった。


十一月の初め、大学の友人が俺に言った。


「なあ、栢森って奴、お前の友達だろ?」

「ああ、そうだけど」

「あいつ、彼女裏切ったらしいぞ」

「は?何言ってんだ」

「浮気してたんだって。サークルで問題になってる」


俺は、鼻で笑った。


「ありえねえよ。栢森がそんなことするわけない」

「でも、証拠があるらしいぞ。メッセージとか、彼女の物を盗んでたとか」

「どうせ、噂だろ。あいつ、そんな奴じゃない」


だけど、噂はどんどん広がっていった。廊下を歩けば、栢森の話が聞こえる。食堂でも、図書館でも。みんなが、栢森のことを悪く言っていた。


「栢森、浮気してたんだって」

「最低だよね」

「彼女、可哀想」


俺は、イライラした。誰も、栢森の話を聞いていない。みんな、噂だけで判断している。


ある日、学食で栢森に会った。栢森は、明らかに様子がおかしかった。痩せて、目の下にクマができている。


「栢森、お前、本当に大丈夫か?」

「ああ、なんとか」

「噂、聞いてるぜ。お前が浮気したとか、美桜ちゃんを裏切ったとか。でも俺、信じてないから」

「ありがとう」


栢森は、力なく笑った。


「凪だけだよ、俺を信じてくれるの」

「当たり前だろ。お前がそんなことするわけないじゃん」


栢森は、俯いた。


「美桜は、俺を信じてくれなかった。証拠があるからって」

「証拠?」

「神楽って先輩が、俺を陥れたんだ。メッセージを偽造して、美桜のネックレスを俺のロッカーに入れて」

「マジかよ。それ、完全に罠じゃん」

「ああ。でも、誰も信じてくれない」


栢森の声は、震えていた。


「サークルでも、ゼミでも、俺は完全に孤立してる。誰も口を利いてくれない。存在しないみたいに扱われる」

「ひでえな」

「でも、凪。俺、諦めないよ」


栢森は、顔を上げた。その目には、強い意志が宿っていた。


「神楽の罠を暴いて、真実を証明する。そのために、今、証拠を集めてる」

「証拠?」

「デジタルフォレンジック、防犯カメラ映像の解析、証言の矛盾点の洗い出し。時間はかかるけど、必ずやり遂げる」


俺は、栢森を見て、改めて思った。こいつは、強い。逆境に負けない、本当に強い奴だ。


「栢森、お前、すげえな」

「凪のおかげだよ。お前がいなかったら、俺は潰れてた」

「何言ってんだよ。お前が強いからだろ」


俺は、栢森の肩を叩いた。


「で、俺に何かできることある?」

「いや、これは俺一人でやらなきゃいけないことだ。でも、凪。お前が俺を信じてくれる。それだけで、十分だ」


それから数ヶ月、俺は栢森をサポートし続けた。食堂で一緒に飯を食い、時々話を聞き、励まし続けた。栢森は、孤独な戦いを続けていた。誰にも理解されず、誰からも信じられず。だけど、俺だけは、最後まで栢森を信じた。


ある日、栢森が嬉しそうに言った。


「凪、防犯カメラの映像、手に入れたんだ」

「マジで?」

「ああ。神楽が、俺のロッカーにネックレスを入れてる瞬間が、ばっちり映ってる」

「やったじゃん!」


俺は、思わず声を上げた。


「これで、神楽の罠を証明できるじゃないか」

「ああ。他にも、偽造メッセージのメタデータ解析、図書館端末の利用記録、証言の矛盾点。全部揃った」

「栢森、お前、本当にすごいよ」

「まだだ。これから、大学と警察に告発する」


栢森の目は、決意に満ちていた。


二月、栢森が大学のハラスメント委員会と警察に告発した。大学中が、その話題で持ちきりになった。


「栢森、神楽を告発したんだって」

「証拠を集めてたらしいぞ」

「マジで?じゃあ、栢森は無実だったの?」


人々の反応が、徐々に変わっていった。最初は栢森を非難していた奴らが、今度は神楽を非難し始めた。手のひら返しも甚だしい。


俺は、そんな連中を見て、腹が立った。栢森が一番辛い時、誰も彼を信じなかった。それなのに、今更何を言ってるんだ。


ある日、サークルの連中とすれ違った。四宮杏奈が、俺に声をかけてきた。


「早乙女くん、栢森くんと友達だよね」

「ああ、そうだけど」

「あの、私、栢森くんに謝りたいんだけど、連絡先教えてもらえない?」

「無理」


俺は、冷たく言った。


「お前ら、栢森が一番辛い時、何してた?彼を孤立させて、笑ってただろ」

「それは、でも、私たちも騙されてて」

「騙されてた?証拠も確認せずに、栢森を断罪したのはお前らだろ」


四宮は、黙り込んだ。


「今更、謝罪なんて虫が良すぎる。栢森に近づくな」


俺は、そう言って立ち去った。


神楽が逮捕されたというニュースが流れた日、俺は栢森に連絡した。


「栢森、やったな」

「ああ、ようやくだ」

「お前、本当に頑張ったな」

「凪のおかげだよ。お前が信じてくれたから、俺は諦めずに戦えた」


栢森の声は、どこか穏やかだった。


「これから、どうすんだ?」

「普通に、大学生活を送る。就活も頑張る。それだけだ」

「彼女は?」

「しばらくは、いいや。もう、人を信じるのが怖い」


栢森の言葉に、俺の胸が痛んだ。あの事件は、栢森に深い傷を残した。それは、簡単には癒えない。


「まあ、無理もないよな。でも、いつか、いい人が見つかるさ。お前なら、絶対に」

「ありがとう、凪」


三月、栢森は無事に進級した。成績も回復し、新しいゼミでは歓迎された。俺も、同じように進級して、二人で学食で飯を食った。


「凪、お前には本当に感謝してる」


栢森が、改まって言った。


「お前がいなかったら、俺は本当に潰れてた。一人で戦い続けるのは、想像以上に辛かった」

「何言ってんだよ。友達なんだから、当たり前だろ」

「でも、みんなが俺を非難してる中、お前だけは最後まで信じてくれた。それが、どれだけ嬉しかったか」


栢森の目が、少し潤んでいた。


「お前は、俺の命の恩人だよ」

「大げさだって」


俺は笑ったけど、心の中では誇らしかった。友達として、最後まで栢森を信じ抜いた。それは、俺の人生で、一番正しい選択だったと思う。


四月、新学期が始まった。栢森は、新しい環境で頑張っている。サークルの連中やゼミのメンバーたちは、それぞれに代償を払った。就職失敗、留年、自主退学。みんな、自分のやったことの報いを受けた。


俺は、それを見て思った。人は、簡単に他人を断罪してはいけない。証拠を確認し、話を聞き、自分の頭で考える。それをしなかった連中は、今、苦しんでいる。


ある日、俺は友人たちに言った。


「なあ、お前ら。もし、誰かが困ってたり、孤立してたりしたら、ちゃんと話を聞いてやれよ」

「急にどうした?」

「栢森のことを見てて思ったんだ。噂だけで判断するのは、簡単だ。でも、それで誰かが傷つく。真実を確かめることが、どれだけ大切か」


友人たちは、真剣な顔で頷いた。


「お前の言う通りだな。俺たちも、気をつけるよ」


五月、栢森が就職活動を始めた。俺も一緒に説明会に行ったり、面接の練習をしたりした。栢森は、あの事件を乗り越えて、さらに強くなっていた。


「凪、お前はどこ受けるんだ?」

「俺は、IT系を考えてる。お前は?」

「同じく。データ分析を活かせる仕事がいいかな」


二人で、未来の話をした。辛い過去は、もう終わった。これから、新しい未来が始まる。


ある日、栢森が笑顔で言った。


「凪、お前と友達で良かった」

「俺もだよ」


俺たちは、拳を合わせた。友情の証として。


その後、栢森は大手企業から内定をもらった。俺も、別の企業から内定をもらった。二人とも、順調に進んでいる。


卒業式の日、俺と栢森は並んで写真を撮った。


「凪、四年間、ありがとう」

「こちらこそ。お前と友達で、俺も色々学べたよ」

「これからも、友達でいてくれよ」

「当たり前だろ」


俺たちは、笑い合った。あの辛い時期を乗り越えて、今、ここにいる。それは、二人の友情の証だ。


社会人になっても、俺と栢森は定期的に会った。仕事の話、恋愛の話、将来の話。お互いに支え合いながら、人生を歩んでいる。


ある日、栢森が言った。


「凪、俺、最近いい人に出会ったんだ」

「マジで?それは良かったじゃん」

「ああ。今度、紹介するよ」

「楽しみにしてる」


栢森の顔は、幸せそうだった。あの暗い表情は、もうない。


俺は、心の底から思った。栢森を信じて、本当に良かった。友達として、最後まで支え続けて良かった。


人生には、色々な選択がある。だけど、友達を信じる。それは、決して間違った選択じゃない。栢森が証明してくれた。


俺は、これからも、栢森の友達でいる。そして、困っている人がいたら、手を差し伸べる。それが、俺が学んだことだ。


夜、一人で考える時、俺は思う。もし、あの時、俺も栢森を疑っていたら。もし、俺も周りに流されて、栢森を見捨てていたら。栢森は、どうなっていただろう。


きっと、もっと深い絶望に沈んでいたかもしれない。もしかしたら、大学を辞めていたかもしれない。


だけど、俺は栢森を信じた。それは、友達として当然のことだった。


俺は、ベッドに横になり、天井を見つめた。栢森との思い出が、走馬灯のように浮かぶ。辛い時期、笑い合った時間、そして今。


友情は、人生を支える。俺は、それを栢森から学んだ。


そして、これからも、俺は友達を大切にする。誰が何と言おうと、信じるべき人を信じる。それが、早乙女凪の生き方だ。


窓の外では、星が輝いている。明日も、きっといい日になる。栢森と、これからも友達でいられる。それだけで、俺は幸せだ。

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