第12話 忘れた頃にやってくる
お読みいただきありがとうございます!
今回は盗賊の檻から助け出した子ライオン「レオ」がついに動き出す回です。
ただの可愛いマスコット……と思いきや、中身はまさかの「おじさん」!?
カエデだけに聞こえる会話、そして女神との約束の伏線も少しずつ繋がっていきます。
第12話 忘れた頃にやってくる
「……あのライオンの子はまだ寝ているかしら」
夕暮れ前のこと。
カエデは二階の自室から奥の小部屋をそっと覗き込んだ。そこには、ふわふわの毛並みを丸めたまま眠る小さなライオン――レオの姿があった。
呼吸は穏やかで、怪我の様子もひどくはない。カエデは胸を撫で下ろした。
「ふふ、よかった……」
そう呟いた瞬間。
「いやぁ~、寝心地が硬くて腰にくるねぇ。若い体でも朝はツラいわ」
「――――えっ!?」
カエデは飛び上がった。
声の主は、間違いなくレオ。だが、その声音は子どもらしい愛らしさとは正反対、妙に年季の入った「おじさんボイス」だった。
「しゃ、喋った……!? どうして……」
「驚くな驚くな。お嬢ちゃんにしか聞こえてないから安心しな。俺、見た目は子ライオンだが、中身はちょっと訳ありでね」
レオはぐーっと背伸びをして、あくびを一つ。
「俺はこの世界に詳しい案内役さ。歴史とかスキルとか、そういうのなら任せろ。経営のことは……まあ、お嬢ちゃんの得意分野だろ?」
カエデは瞬きを繰り返す。
(え……これって、あの時の女神さまの言葉と繋がってる……?)
心臓がどきどきして、思わず問いかける。
「じゃあ……あなたは、本当に女神さまが言っていた案内人……?」
レオはにやりと笑った。
「ご名答。忘れた頃にやってくるって、あれだよ。俺が一つ目」
その時だった。
コンコン、と扉が小さく叩かれる。
「カエデ、レオ……大丈夫?」
メイとリンが顔を覗かせてきた。心配そうに。
カエデは微笑み、首を振った。
「ちょっと〜、見に来てくれたの?」
「いやぁ~、俺のかわいさに酔いしれてるんだな〜」
レオがくつろぎながら小首をかしげる。
「かわいさ……?」カエデが小声で呟く。
するとメイとリンが顔を見合わせ、にこりと笑った。
「本当、本当、レオの可愛さったら宇宙一だね!」
「うん、絶対に!」リンも頷く。
そのやり取りにレオはご満悦で、ふんぞり返った。
さらに、扉の影からアッシュがひょっこり顔を出した。
「なんだ、二人ともレオの様子を見に来たんか」
「そうよ、ちょっと心配で……」カエデは頷き、三人に軽く頭を下げる。
レオは得意げに大きなあくびをした。
「わかった、わかった。俺の魅力が心配の種になるとはな」
「……おじさんね」カエデが小さく笑う。
その場にいた全員が一瞬きょとんとする。が、レオは何食わぬ顔で毛づくろいを始めた。
カエデは胸の奥で思う。(やっぱり……私にしか聞こえてないんだ)
――夕焼け色に染まる窓辺で、レオの存在が確かに特別であることを、カエデは再認識していた。
夜。村の広場では子どもたちの笑い声が響き、店「ひだまり」の看板がほのかに灯っていた。
カエデは窓から空を見上げる。
高い稜線の上に、一瞬だけ、大きな翼の影がよぎった気がした。
「……気のせい……?」
レオが尻尾を振りながら小さく呟いた。
「いやぁ、お嬢ちゃん。『忘れた頃にやってくる』ってのは、一つだけじゃないのさ」
カエデの胸に、ひそかな不安が広がっていった。
◆カエデの日記
今日はレオが突然しゃべりだして、本当にびっくりした。
それも……中身はどう見ても「おじさん」。だけど、女神さまの言葉を思い出す。
案内人を付けてくれるって、あれは本当だったんだ。
仲間たちもレオのことを心配してくれて、なんだか少し安心した。
私はまだまだ冒険者として未熟だけど、これで少しは心強いかも。
だけど――夕焼けの空に見えた影。
あれは……ただの見間違い、なのかな。
◆TIPS
案内人レオ
女神に遣わされた存在。見た目は子ライオンだが、中身は人生経験豊富なおじさん。カエデにしか声が聞こえない。
経営学は不得手だが、世界の歴史やスキルの知識に長けている。
ゴールドの伏線
カエデは転生時に女神から30万ゴールドを授かっていた。
うち5万ゴールドで店兼ギルド拠点「ひだまり」を購入。残り25万ゴールドは運営資金と緊急用として保管している。
忘れた頃にやってくる
レオが語る「一つ目の案内人」。だが、この言葉は次の波乱を示す伏線でもある。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
今回はレオの正体が明らかになる回でした。
見た目は可愛い子ライオン、中身はおじさん――そのギャップで《ひだまり》に新しい風が吹き込みます。
そして、最後に空をよぎった影……次回から大きな展開が始まります。
「忘れた頃にやってくる」はまだ一つ目にすぎません。
ぜひ次回もお楽しみに!
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