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主殿、我だけを見よ~異世界で助けた奴隷少女は元・魔王軍幹部!?独占欲と戦闘力が規格外な娘と遺跡探索スローライフ~  作者: 猫村りんご


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【第70話】報いの夜

【第70話】報いの夜


空気が、一瞬で張り詰めた。

受付で遺物の件を尋ねていた俺たちの背後から、乱暴に扉を開ける音と共に現れた三人組。

先頭に立つのは粗野な顔つきの男


「……お、おまえ……なんで……ここに……」


レックスの視線がノイラに突き刺さる。

ノイラは怯えきった顔で小さく縮こまり、まるで肉食獣を前にした小動物のように震える。


ノイラの反応から恐らくレックスと呼ばれたこの男が例の――追放パーティのリーダーなのだろう。

しまった…まさか鉢合わせになるとは。とにかく、この場に止まるのは得策ではない。


「すみません、こちらの用件は済みましたので」


俺は努めて冷静に答え、受付から一歩下がる。が、レックスは一歩踏み込んでくる。


「チッ……おい、ちょっと話がある」


レックスの言葉にナヴィがピクリと反応した。

フードで顔は見えないが、たぶんレックスのことをガンつけてそうだ。

今にも飛びかかりそうな気配を感じたため、俺はそっとナヴィを腕で制し、視線を正面に戻した。


「すみません、こちらは急いでますので」


「はぁ?何だお前」


こちら睨む相手を無視し、ノイラの手を引いて半ば強引にその場を立ち去る。

後ろから俺たちを呼ぶ声がするが、今はとりあえず無視しても問題ないだろう。


ここはギルドの中、遅い時間とはいえ周囲には受付嬢や他の冒険者たちもいる。

向こうの状況的にも、迂闊に手は出せないはずだ。


俺はその場を軽く頭を下げてやり過ごし、ノイラの手を引きながらギルドを後にした。



ノイラの手を引いて、俺は足早にギルドを後にした。

角を曲がり、距離をとってからようやく速度を緩める。


「……さっきの三人が、以前の仲間ってことで間違いないかな?」


「は、はい……そうです……」


ノイラが怯えたように小さく頷く。


「ごめんなさい……私のせいで…お二人を巻き込んでしまって…」


「何を言うか。小娘は悪くないじゃろ」


ナヴィが横から割って入り、威勢よく拳を突き出す。


「あの程度の奴ら、我なら秒で塵にできるぞ」


「あー、そういう物騒なのは一旦置いといて……とりあえず、今夜は宿を探そう。何かあったらいけないから、三人で一部屋を借りて、明日の朝一番でこの町を出ようか」


「はい…ありがとうございます」


「うむ」


二人の了承も得て、俺たちはギルドから少し離れた宿を借りることにした。

流石にトリプルルームのような宿は見つからなかったが、それなりに広い部屋を借りることができた。

ベッドは二つ、端にソファ、個室にシャワー付き。


二人にベッドを譲って俺はソファで眠ることに決め、カルナまでの馬車での移動や、手持ちの食料などについて話し合った後、各々明日に向けてゆっくりすることにした。




三人とも順にシャワーを終えた頃、トントンと部屋の扉が叩かれた。

開けると宿屋で受付をしてくれた女性が立っており、小声で告げてきた。


「外で、お連れ様を呼んでいる方々が……」


――まさか宿がバレてるとは。

後をつけられた感じもなかったし、一体どうやって……。


「あー…ちょっと下でソファで寝るように毛布をもらってくるから、二人はゆっくりしてて」


ノイラとナヴィを残し、俺は一人で階段を降りる。

宿の外で待っているのとの事だったので、思考の指輪を指にはめ、外へ出た。


宿の外に出ると、そこに立っていたのは――やはり、レックスたちだった。




「単刀直入に言う。ノイラを渡せ」


切り出したレックスの言葉は短い。

だが、こちらを睨みつける視線と、滲む苛立ちから敵意を隠すつもりもないらしい。


「あー…申し訳ないけど、それはできない。俺たちは個人の依頼で彼女の保護を任されている身でね」


「依頼?おいおい、冗談はよせよ。あいつなんかにそんな依頼がくるわけねえだろ」


「依頼主は彼女の友人…カルナの町のギルド長、クレイさんだ。俺たちは本人から直接依頼を受けている」


あえて依頼人の名前を挙げる。

大きな支部のギルド長との公的な関係者である事をアピールすれば、向こうも迂闊な行動はできないだろう。

次いで、思考の指輪をつけた左手を掲げてみせた。


「これは状況を逐一記録する遺物だ。証拠としてギルドに提出することになってる。迂闊な真似をすれば、全部残るぞ」


もちろんハッタリだが、こいつらがこの遺物の本当の効果を知るはずもない。

ここまで状況を説明すれば、流石に向こうも一旦引いてくれるだろう……と思っていたところ、

説明を受けたレックスの顔はみるみる歪み、怒りの表情と共に俺の胸ぐらを掴んだ。


「ふざけんな!てめぇ、良いからはやくノイラを連れてこい!!」


ドン!と宿の壁に押し付けられる。

遅い時間とはいえ周囲にはまだ人がまばらにいる状況なのにマジかコイツ。


周囲の通行人が足を止め、視線を集め始めていた。

レックスの仲間の女冒険者が慌てて止めに入る。


「げほっ…とにかく、正式な依頼だから彼女は渡せない。話はそれで終わりだ」


俺は淡々と告げ、レックスの手を振り払った。


話の進まない状況と周りの視線に晒されたレックスは舌打ちを残して背を向けるその場を立ち去る。

通行人たちの視線がその背中を刺していた。



――その後は受付から毛布を借りて部屋に戻り、何もなかったかのように振る舞った。

とりあえず、今夜はこれで大丈夫だろう。あとは明日の朝イチでカルナへ向かうとしよう。






夜も更け、町が静まる頃。

裏路地に潜んでいたレックスたちは、なおも悪あがき企んでいた。


「……カルナに先回りして悪評を流すってのはどうだ?」


「それだと、噂が広まるまでに時間がかかっちゃうんじゃない?」


「…チッ、じゃあ道中で襲えばいい。馬車で移動できない崖があったろ。あそこで突き落としちまえば下は激流の川だ、証拠なんて残りゃしねえ」


「……ねぇ、本当にそこまでやるの?」


「やらねえと俺たちがまずいんだよ!冒険者の資格が剥奪される程度じゃすまねえぞ!」


人気のない路地裏で三人の男女が話し合う。



――その背後に、影が落ちた。


「……本来なら目障りな羽虫など、踏み潰せば済む話なのじゃがな」


妖艶な声があたりに響く。


声を耳にした刹那、三人の男女は全身が押し潰されるような感覚に陥った。

何かの魔術を使われたのではない。もっと単純な、あまりに暴力的な魔力に体がすくんでいるのだ。

振り向くことすらできない。全身が凍りつき、震える膝が勝手に折れる。

そうして無様に地に伏せる男女を、赤紫の瞳がジッと見下す。


「妾にとって、貴様らを殺す理由はあれど、生かす理由など一つもない」


圧倒的な魔力が、路地全体を支配する。

レックスの顔は青ざめ、息すらできない。


「愚かな羽虫じゃ。呼吸ひとつ許されむほど下等な存在が、よくも我が主を煩わせたものよ」


女冒険者はあまりの圧に抗えず、涙を流して蹲る。


「――しかし、妾の主殿は優しいからのう。羽虫程度の貴様らであっても、無用な殺しは好まぬじゃろう」


「今宵のうちにこの町から消えよ。次はないぞ」


凍りつくような冷たい声を最後に、足音が夜の闇に吸い込まれていく。


しばらくの間地に伏せて放心状態だった三人は、

その後、荷物をまとめて逃げるようにガレンの町から姿を消した。





翌朝。


――なんか、狭い。やけに重い。柔らかい。


目を覚ますと、ソファに寝ていた俺の胸元に、いつのまにかナヴィがぴったり収まって眠っていた。


「……相変わらずこの子は甘えん坊だなぁ」


苦笑してその頭を撫でると、ナヴィは幸せそうに身じろぎをした。

俺は小さく息をつき、窓の外の朝日を見やった。


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