【第49話】カルナの町:地下旧水路の調査依頼②
【第49話】カルナの町:地下旧水路の調査依頼②
「――む、これは……」
前を歩くナヴィが足を止める。
後ろから様子を覗くと、ナヴィは床の一部を指差す。
そこは微かに湿っており、石畳の一部がぬめったように変色していた。
「なんだこれ。水、じゃないよね?」
「うむ。魔物の種類にもよるが、こいつはわかりやすい。這った跡がこう、じわじわと傷んでおるであろう?これは毒素を持つ粘体生物…この感じならスライムあたりじゃろうな」
「なんだスライムか。じゃあそこまで危険な魔物じゃなさそうだね」
「ん?何を言うておる。スライムは魔物の中でも危険な魔物じゃぞ」
「え?」
「まず、粘体生物じゃが足が速い。核を中心とした軟体じゃから足場にとらわれずに動く。奴らはその足の速さで顔に覆い被さり、獲物の呼吸を止めてからゆっくりと捕食するのじゃ。顔に取りつかれたら最後…息ができぬままゆっくりと…」
「な、なるほど……想像していたより、ずっと危険そうだ…」
「特に今回のスライムは毒素系じゃからのう。取りつかれた顔もただでは済まん…が、コレはヒールのある主殿には関係のない話じゃな」
「それはそうだけど…窒息に関しては無力というか」
「ふふっ、安心せい。対処法は案外簡単じゃからの。柔軟な外皮がちと厄介じゃが、奴らの中には必ず核がある。玉のようなものじゃ。中からそれを引き抜けば粘体の体はすぐに無力化できる」
「う〜ん…聞くだけなら簡単そうだけど……」
そんなやりとりを交わしながらも、緊張感は少しずつ高まっていく。
ナヴィは通路の奥を見やって、わずかに鼻を鳴らした。
「このあたりの痕跡はやや古いのう。どうやら奴はさらに奥へ移動しておるらしい。」
ランタンの光を頼りに、俺たちはさらに奥へと進んだ。
進むにつれて、鼻につく異臭が強まっていく。
「……うっ、くっさ……これ、相当だぞ」
「ここまで臭気を撒き散らすとなると、かなり大きく育っておるかもしれぬな」
そんな会話をしながら、俺たちは目的地のポイントに到達した。
じっとりと通路全体が湿っているような場所で、湿度と臭いが酷い。
しかし――
「……いない?」
「いや、気配はある。おるはずじゃ。どこかに……!」
ナヴィの目が鋭くなる。何かを探るようにその視線が宙を泳ぐ。
俺も同じように周囲を見渡す――だが、見えない。しかし、まるで何かが近くに存在しているような感覚を覚える。
辺りを警戒していると、ナヴィがスッと歩きだした。
何か見つけたのだろうか?すると、ナヴィが歩く先の天井からぬるりと何かが蠢いた。
「……っ!? ナヴィ!上っ!」
とっさに叫んだその瞬間。
ずるり、と天井の影から巨大なスライムが姿を現す。
ナヴィの真上から、粘性のある黒紫色の物体が降ってきて――彼女の全身を飲み込んだ。




