【第47話】ルームウェアと願いごと
【第47話】ルームウェアと願いごと
宿に戻って荷物を整理したあと、俺たちは部屋でくつろいでいた。
遺物の売却や新たな依頼の話もあったため、少し高めの晩飯を食ってなんとなく気が緩んでいる。
ナヴィはというと、宿に戻ると本来の姿に戻っていた。
その身に纏っているのは――先ほど買ったナイトドレス…ではなくルームウェアだ。
柔らかくゆったりとしたシルエットは俺の目にも優しいと思っていた――けれど、実際に着たナヴィを目にした瞬間、すべてが裏目に出たと知ることになる。
「……ん?どうかしたか?」
「いや……なんでもないです」
柔らすぎる布地が、かえって彼女の体の曲線を際立たせていて、胸の部分が暴力的な主張を――思わず目を逸らしてしまった。
そんな俺の様子を見て、ナヴィはふふんと得意げに鼻を鳴らす。
「まったく、主殿はすけべじゃのう」
「……いったいなんのことでしょう」
「惚けても無駄じゃ。顔が赤くなっておるぞ?」
「ぐぬぬ…それよりほら、依頼の話!」
茶々を入れられつつも、俺は机の上に依頼書を広げた。
『カルナの町 地下旧水路(南第五水路経路)の調査依頼』
依頼内容は南部の旧地下水路で確認された微弱な魔力反応の調査。
今は使われていない旧地下水路とのことなので、他人と接触する心配もなさそうだ。
魔力反応がある時点でほぼ魔物が住み着いたと思われるため、調査とはしているが実際には魔物討伐のようだ。
「内容としては……まあ、普通に調査依頼だね。戦闘になる可能性は高いそうだけど、この間の遺跡みたいな事はなさそうだ」
俺はそう言って、視線を向ける。
「どう思う? ナヴィ」
「ふむ。急ぎの旅でもないしの、収入を得るに越したことはないじゃろう。妾は受けても構わぬ」
「ありがとう。それじゃあこの依頼を引き受けようか」
少しだけ気が引き締まる。明日からまた、新たな探索が始まる。
「そういえばさ」
俺はふと思い出して、口を開いた。
「これまでの収入は形式上俺が管理してるけど、戦ってくれるのはナヴィだし、旅の費用以外は全部ナヴィが受け取ったほうが――」
「我はいらぬぞ?」
ナヴィは、あっさりとした口調でそう言った。
「うーん…それだと俺が申し訳ないっていうか……何もしてない身としてはさすがに気が引けるっていうか」
「主殿は、妙なところで気を使うのう……」
するとナヴィは何か思いついたように口元に笑みを浮かべる。
「ふむ、では代わりに――一つ、願いごとを聞いてもらおうかのう」
「願いごと?……ちなみにどんな内容?」
「一緒に風呂に入ろうではないか」
「絶対言うと思った……それ以外で!」
ナヴィはくくっと笑って、いたずらっぽく俺の顔を覗き込む。
ナヴィがすっと顔を寄せた瞬間、ふわりと甘い匂いが鼻先をくすぐった。
「ふふ、では妾の願いは――そのうち、ちゃんと伝えるとしようかの」
とびきりの笑みとともに、彼女は俺の胸元を指でつついた。
「お、お手柔らかにお願いします……」
こうして、俺たちはまたひとつ、次なる依頼への準備を整えることになった。




