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主殿、我だけを見よ~異世界で助けた奴隷少女は元・魔王軍幹部!?独占欲と戦闘力が規格外な娘と遺跡探索スローライフ~  作者: 猫村りんご


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【第41話】風呂上がりと秘密

【第41話】風呂上がりと秘密


遺跡の転移陣から地上に戻った頃には、もう陽が傾いていた。


最初はそのままギルドへ報告に向かうつもりだったが、街に着いた頃にはすっかり夜に。

仕方なく、明日の朝に改めて報告することにして、俺たちは宿へと戻ってきた。


遺跡探索の疲労はなかなかのものだったけど、食堂で温かいスープと焼きたての肉料理を胃に収めると、身体の芯からじんわりと力が戻ってくるような気がした。


「はああ……つ、疲れた……」


「今日はよう働いたからのう…我も流石に疲れたわ」


俺とナヴィは連れ立って部屋へと戻り、脱力気味の体をベッドに沈めた。


「ナヴィ、先にお風呂どうぞ。さっぱりしてきたらいいよ」


「うむ、では遠慮なく入らせてもらおうかの」


俺の提案に素直に頷くナヴィ。すたすたと風呂場へ向かうその背を見送りながら(よし、今日はセクハライベントは回避成功!)と俺は心の中で安堵する。

ここ最近は風呂絡みのトラブルが多すぎたからなぁ……。




ナヴィが入浴している間、俺は一枚の地図を取り出し、次の目的地を考えることにした。


寄り道せずに進めば“クレヴァの町”。

距離も近くて無難なルートだ。


ちょっと遠回りになるけど“ルーデンの街”も選択肢としてはアリだな。

大きめの街で物資の補充や情報集めには向いているだろう。


あとは…他の二つに比べ遠回りだが、カタハの町。ここは何やら観光地らしいが…


指先で次の町へのルートをなぞっていく。

どの町へ向かうかによって、今後の展開も変わってくるだろう。

…まあ、急ぎの旅でもないからもう少しゆっくりしても…などと考えていた。


そんな時だった。


「ふむ、次の目的地はそこか?」


「うわっ!?」


気配もなくすぐ隣に顔を覗かせてきたナヴィに、俺は思わずのけぞりそうになった。


ふわりと、風呂上がりのいい匂いが鼻をくすぐる――って、ちょっと待った!


「え、ちょ、ナヴィ!?その姿……!?」


驚いてナヴィを見やると、そこにはいつもの小柄な姿ではなく、大人びた本来の姿で――しかもバスタオル一枚を巻いただけの状態で立っていた。


「な、なんで大人の姿なんだ!?っていうか服!!服着て!!」


「この姿で着られる服など持ち合わせておらぬのでな。いちいち魔力を使って服を用意するのも面倒じゃ。…一先ず、主殿のシャツでも借りるとしようかの」


慌てふためく俺の鞄からシャツを取り出し、ナヴィはそれをバサッと羽織りボタンを止める。


「ふむ、主殿の服じゃとこの姿でも袖が余るか。ふふ、主殿は大きいのう?」


「その言い方はなんか色々、…というか…その…」


いわゆる彼シャツ状態の姿に、いけないと思っていても視線が吸い込まれてしまう。


「ん?下が気になるのか?ちゃんと着ておるぞ?」


そう言って、裾をつまんでチラリと見せてくるナヴィ。


「わ、わかった!わかったから!!」


俺は顔を真っ赤にして即座に目を逸らした。

それを見たナヴィは、くつくつと笑いながら、


「主殿は愛い反応をするのう。からかい甲斐があるわ」


などと嬉しそうに呟く。こんなおっさんをからかって何が楽しいのか…


「……ところで、なんでその…大人の姿に?」


「ふむ、部屋の中ならば見られる心配もなかろう?魔力も抑えておるから嗅ぎつけられる事もあるまい」


「……?嗅ぎつけられる…?」


不穏なワードを思わず繰り返す。


「うむ、そろそろ主殿にも話しておこうと思うてな。我が“何者”であるのかを――」


思わず息を飲む。

だがナヴィはそのまま話を続けるのではなく、悪戯っぽく笑って言った。


「……が、その前に、主殿も風呂に入ってくるがよい。疲れを癒して、気を整えてから聞くがよかろうて」


「え、このタイミングで!?」


「妾の残り湯を堪能するとよい。…飲んでもよいぞ?」


「いやいやいや、何言ってんの!?」


ツッコミを入れつつも、俺はナヴィに急かされて風呂場へと向かうことにした。



浴室の扉を閉めたあと、ふと気づく。


――ナヴィがこんなふうに自分から入浴を譲ってきたり、話す前に“整えてこい”なんて言ってくるのは、おそらく彼女自身にも覚悟が必要…ということなのだろうか。


そんなことを思いながら、俺は静かに湯船に浸かった。



――これから明かされる“彼女の素性”。

この夜を境に、俺とナヴィの旅は“少し違う形”で進みはじめるのかもしれない。


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