【第2話】やっと街に着いたのにまさかのストップ
【第2話】やっと街に着いたのにまさかのストップ
革靴で草原を歩くのは予想以上にきつかった。
少し前に買い替えた靴が馴染んでいない事もあり、靴擦れの痛さとふくらはぎのダルさがひどい。
スマホで時間を見ると一時間と経っていなかった。
「はぁ……やっと、着いた……」
ようやく視界の先に、街がはっきりと見えた。
石造りの壁に囲まれた中規模の城塞都市。
壁の上には見張りのような人物の影がちらほらと見える。
中世を舞台にしたアニメやゲームに出てくるような街並みだ。
また、草原を歩いていて気づいた事がある。
最初は“何もない草原だ”と思っていたその道にも、目を凝らしてみれば異変があった。
草が禿げたように焦げた黒い痕。
折れた矢の残骸、馬の蹄に似た痕跡、土にこびりついた赤黒い汚れ…これってやっぱり血の跡なのだろうか。
「……これ、戦争……?」
何かがあったのは間違いない。
恐らく、最近の出来事なんじゃないか…?
のどかな風景だと思っていたこの場所も、少しずつ“異世界の現実”がじわじわと迫ってくる。
街の入り口には、数人の屈強な男たちが立っていた。
甲冑に身を包み、槍を手にしている。
どう見ても警備兵――いや、軍人寄りの“憲兵”だろうか。
「……けっこう、物騒な世界なのかもしれないな……」
しかし、警備が厳重なことを除けば街に入るのは意外と簡単そうだった。
列に並ぶ人々は、農民風の男や旅人、商人らしき人物が中心。
中には馬車を引いた隊商もいたが、どの組も特に検査を受けるでもなく、軽く会釈を交わすだけで、スムーズに街の中へと消えていく。
(手荷物検査もないのに……憲兵って、何を見てるんだ?)
列の最後尾に加わりながら、俺はそんなことを考えていた。
――そして、自分の番がやってきた。
前の人も、何事もなく街の中へ入っていく。
手続きもなければ、何かを提示する様子もない。
これは拍子抜けするほど簡単だな、と思いつつ会釈をしながら街へ入ろうとしたその時だった。
「――待て、お前」
声をかけられたのは、俺だった。