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主殿、我だけを見よ~異世界で助けた奴隷少女は元・魔王軍幹部!?独占欲と戦闘力が規格外な娘と遺跡探索スローライフ~  作者: 猫村りんご


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【第28話】黒い獣と笑う魔族

【第28話】黒い獣と笑う魔族


木々のざわめきが響く中、夜の森に獣の気配が広がる。


目の前に現れたのは、全身を漆黒に染めた狼が四匹。

そのうち一匹はたてがみの部分だけが青白く、他より一回り大きな体格をしていた。


「…狼、か……?」


パッと見はそう思えたが、何かがおかしい。

奴らの牙――それだけが、異様に鋭く、まるで鉄を削り出したような不自然な光を放っている。


「主殿、そこを動くでないぞ」


ナヴィが前に出た。すると、三匹の狼が一斉に散開し、彼女を包囲するように配置につく。

残る一匹。あの青いたてがみの個体は、奥の木陰からじっとこちらを見ている。


「い、いくらなんでも…流石にマズいんじゃ……」


口元が自然と引きつる。

だが次の瞬間――全身に、ゾッとするような悪寒が走った。


(…な、なんだ…これ…ッ!)


フードの奥から、異質な圧が滲み出していた。

それは紛れもなく、ナヴィからのものだった。


「くくっ……」


魔物を前に、彼女が笑っていた。

その笑みはどこか楽しげで、しかし背筋が凍るような雰囲気を纏っている。


ナヴィの放つ圧に、狼たちが一瞬ひるんだのが分かった。

三匹は警戒するように身を低くし、ジリジリと距離を取る。


(……これが、魔族の本気……なのか?)


緊迫した空気が張り詰める中、森の奥で気配が動いた。


青いたてがみの個体が、静かに地を蹴った。


(来るッ――!)


次の瞬間、ナヴィの首筋に、鋭い牙が食い込んだ。


「ナヴィ!!」


思わず叫び、走り出そうとした――その時。


「…獣臭いのう」


静かに、彼女が口を開き――


次の瞬間、拳が獣の腹に沈み込む。

鈍い破裂音と共に、獣の体が内側から爆ぜた。


肉片と血飛沫が辺りに飛び散る。



一連の過程を見ていた残りの三匹の狼は――群れのボスをやれられて戦意喪失したのか、

ナヴィへ背を向け一目散に走り出し、あっという間に森の奥へ姿を消していった。


「ぺっ……ぺっ……だいぶ加減したつもりじゃったが、ちと汚れてしまったのう」


血に濡れた顔を袖でぬぐいながら、ナヴィが戻ってくる。


「ナヴィ!肩は!?噛まれて――!」


慌てて駆け寄ると、彼女はぽかんとした顔で自分の肩を見下ろした。


「ふむ? ああ、これか。服に歯型は残ったが、肌までは届いておらぬよ」


「無傷……だったのか。よ、良かった……」


ナヴィの無傷を確認して、俺は心から安堵の息を吐いた。


その瞬間だった。


「主殿~~~~っ!!」


「うわぁ!?」


満面の笑みを浮かべたナヴィが、勢いよく飛びついてくる。


血まみれの身体のまま、勢いそのままに俺の胸にダイブ。

ぐえっと情けない声が出るほどの密着感に、思わずバランスを崩しかけた。


「な、ナヴィさん!? ちょ、ちょっと待っ――」


「我を心配してくれてたのか!うれしいのう!」


戦闘後で昂っているのか、上機嫌で抱きついたまま頬をすり寄せてくるナヴィ。

その体にはまだ新鮮な血がべっとりと付着していて、当然ながら――俺の服も無事では済まなかった。


「……うぇ、ちょっ……うわっ顔まで!? 血ッ……うわあああ!!」


「むふふ、これで我と一緒じゃな!べとべとじゃぞ!」


「あはは…はぁ。これ、洗って落ちるかなぁ……」





興奮状態のナヴィがようやく落ち着いたころ、俺はぐっしょりと血に染まった服を見下ろして大きくため息をついた。


「我のせいではないぞ。主殿が飛び込んできたからじゃ」


「逆だよね?」


「ふふん、まあまあ。これでは寝るにも不快であろう。近くに水場があったはずじゃ、水浴びにでも行くとしようかの」


「…そうだね。とりあえず汚れ落とさないと、こんな姿じゃ町にも入れないだろうし……」


ナヴィとともに、森の奥――かすかに水音の聞こえる方へ歩き出す。


しばらく進んだ先に、小さなせせらぎが流れる清流を見つけた。

星の光に照らされた水面が静かに揺れている。

澄んだ夜気に、ふうっと息を吐いた。


(さて、問題はどうやって水浴びするか、だが……)


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